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ヘビに転生した俺は、最弱ステータスからスキル補食と進化しながら迷宮を攻略する  作者: 迫力くん
目覚め

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第024話「横槍盛り」


 今日は回収に徹する。


 大型百足を追うのではない。昨日毒を入れた通路で、何が崩れて何が流れてきたかを拾う。一噛み通っただけで終わりなら、あの命懸けは割に合わない。せめてその余波くらいは、きっちり食って帰る。


   ◇ ◇ ◇


 北西通路の空気は昨日より少し荒れていた。


 薄い血の匂い。削れた殻の粉。壁に残ったこすれ跡。大型百足が怒ったまま暴れたのか、奥へ引く途中で何かを蹴散らしたのか。どちらにしても雑に荒らされている。


 こういう日は、横から拾えるものが多い。


 早速、床際で小さな熱が散った。晶甲蟻だった。


 透明に近い外殻を持った蟻で、欠けた殻片に頭を突っ込んでいた。体長は二十センチほど。近づいた瞬間、一匹が殻片を抱えたままこちらへ向く。逃げるでもなく、威嚇するでもなく、ただ顎を開く。


 正面から噛むのはやめた。横へ回り脚の付け根へ牙を入れる。外殻の内側にようやく届く。甲蟻は短く暴れたが、毒が回る前にもう一度噛み込み、力の逃げる向きへ殻を割る。


 他の個体はその瞬間に散った。追わない。先が本命だ。


 倒した一匹をその場で食った。そこで通知が来た。


『外殻粉砕 Lv1 を習得しました』


 外殻への力の通し方が手に入った。これは使う。


   ◇ ◇ ◇


 そのまま通路の奥へ進む。


 大型百足の振動はない。


 ——いない。


 それだけで少し嫌だった。あれだけ大きいやつがいない時は、いないこと自体が情報になる。


 その代わり、上から別の熱が落ちてきた。


 細長い体で白い前腕だけが妙に目立つ。骨拾い蟷螂だった。


 前脚が骨みたいに白く、節の薄い部分だけが赤い。大型百足が散らした殻片を拾いに来ていたのか、足元には細い欠片がいくつも転がっていた。


 蟷螂は無駄がなかった。着地と同時に白い鎌を真っ直ぐ首へ振ってくる。横へずれる。二撃目は低い。壁走りで半身だけ浮かせ、鎌の軌道を外してから胴へ巻きついた。


 軽い相手だが軽い相手ほど刃が速い。締め切る前に鎌が鱗を削った。浅いが鋭い。


 そこで外殻粉砕を試した。


 白い鎌そのものではなく、付け根の薄い節へ牙を押し込む。さっきの晶甲蟻で掴んだ感触をそのまま別の殻へ移す。牙が節の隙間に沈み込んだ瞬間、細い抵抗が一つ抜けた。白い鎌の根元にひびが走り、片方の刃が明らかにぶれた。


 そこで勝負が決まった。残った前脚が空を切る間に首の下へ噛みつき、そのまま締めて動きを止める。骨拾い蟷螂は思ったよりあっさり止まった。


 食った。待っても通知は来ない。そういう日もある。欲しいスキルが一発で出る時もあれば、何匹食っても空振る時もある。捕食継承は便利だが、気前まではよくないらしい。


 その代わり、別の通知が来た。


『Lv3になりました』


 全快は助かる。助かるが、これで気が大きくなるのが一番危ない。


   ◇ ◇ ◇


 そこから先で、ようやく本題が見えた。


 通路の壁がところどころ大きく削れている。脚跡も殻片も血も、全部奥へ向かっていた。


 大型百足は縄張りを守っていない。


 守れないのか守る気がないのか。その違いは大きいが、今分かるのは一つだけだった。大型百足は明らかに逃げていた。


 俺が昨日噛んだからではない。あの一噛みで巡回を崩せたのは事実だろう。だがそれだけで縄張りごと捨てるほど軽い相手ではない。もっと奥に、あいつを押し出す何かがいる。


 そこで振動が来た。一度だけの重い一撃だった。


 大型百足より、さらに重い。芯がある。下の岩盤を一度だけ叩いたみたいに、短く深く響いた。


 嫌な予感がする時は、だいたい本当に嫌なものがいる。


 それ以上の確認はしなかった。


   ◇ ◇ ◇


 池へ戻ってから進化だけ確認した。


 進化は46%まで進んでいた。


 外殻粉砕も取れた。大型百足にはまだ足りないが、通路の横槍を食いながら少しずつ火力を積む形は見えてきた。


 大型百足は深部へ引いている。


 その先には、さらに上の主がいる。


 なら、次にやることも決まる。


 深部手前の中型を片づけて、主の巣の前まで通る。


 今はまだ、その順番を間違えない方が強い。


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