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ヘビに転生した俺は、最弱ステータスからスキル補食と進化しながら迷宮を攻略する  作者: 迫力くん
捕食継承

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第022話「飽食進化」


 今日は進化まで持っていく。


 昨日の時点で76%。新顔の流れも見えている。押し切れる見込みはある。


 問題は、見込みがある日に限って死にかけるのがこの洞窟の癖だということだ。


 だから今日やることは単純だった。食って、増やして、進化する。


   ◇ ◇ ◇


 崩れ道を抜けた先、昨日見つけた熱はまだいた。


 壁だ。正確には、壁に貼りついていた。


 灰色の体。四本脚。短い尾。背中は細かい岩みたいな鱗で覆われていて、ほとんど背景と区別がつかない。熱感知がなければ見落としていた。


 鎧ヤモリ。


 こいつは逃げ方が厄介だった。気づいた瞬間、壁を横へ走る。床を使わない。蛇相手にそれをやるのは、だいぶ性質が悪い。噛みにくいからだ。


 正面からは行かなかった。壁に頭を近づけ、逃げる方向を先読みする。右。次に上。そのさらに先で、鎧ヤモリは小さな窪みに足をかけた。


 そこだ。


 体を持ち上げ壁へ半分もたれかかる形で首だけ伸ばす。牙は腹側の後ろ脚の付け根へ入った。背中は硬い。だが腹側はそうでもない。


 ヤモリが暴れる。壁を走る。引きずられる。落ちる。


 床に落ちた瞬間勝負は終わった。巻きを一回だけ足し、体勢を返させずに毒を流す。数十秒で動かなくなった。


 食う。崩れ道の先は新顔の流通がいい。向こうで何かが詰まって、その分だけこっちへ流れてきている感じがした。


 飲み込んだ直後、通知が来た。


『壁走り Lv1 を習得しました』


 試してみる。壁に体の前半を押しつける。鱗に力を入れる。少し上がる。もう少し———落ちた。走るというより短時間だけ壁に粘れる、くらいが正確だった。噛む角度を作る時には使える。


   ◇ ◇ ◇


 次に来たのは下からだった。


 湿った窪みのそばを通った瞬間、床の苔が跳ねた。


 反射で首を引く。細い針が鼻先をかすめた。


 針苔蛙。


 体長二十五センチほど。丸い。背中の苔に紛れて細い棘が何本も立っている。跳ぶ時にそれごと突っ込んでくるらしい。鬱陶しい相手だ。


 ただ分かりやすくもあった。一度跳んだ後は着地で少し止まる。


 二度目の跳躍を横へ避け、着地際に噛みつく。棘が頬に当たる。浅い。無視できる。蛙はそのままもう一度跳ぼうとしたが、毒が先に回った。短く終わる。


 直後、体の内側が軽くなる感覚が走った。


『Lv12になりました』


 体が全快した。蛙の棘で痺れていた頬まで戻っている。今日は先が長い。


 蛙を食う。待ったが通知は来なかった。確率で継承するのか。毎回何か取れるなら話がうますぎる。


   ◇ ◇ ◇


 進化率はそこで92%まで進んだ。


 あと一押し。そう思ったところで奥から硬い音が来た。乾いた足音。速い。多い。


 次の瞬間、黒い影が岩陰から飛び出した。


 鎌脚蠍だった。


 でかい。体長は七十センチ近い。甲殻は黒褐色。前脚の鋏が妙に長く、その後ろで尾が高く反っている。刺されたくない形をしていた。


 見た瞬間に分かる。こいつが今日の最後だ。


 向こうもすぐ来た。鋏が床を叩き一直線に詰めてくる。横へ避ける。鋏が壁を削る。遅くはない。だが直線的だ。問題は尾だった。刺突が速い。


 一度目は避けた。二度目は鱗で受けた。浅く痺れる。距離を取る。蠍は追う。床だけでは逃げ幅が足りない。


 壁走りを使う。半歩だけ体を浮かせてそこから滑らせるように落とし、刺突の軌道を外す。綺麗ではないが避けるには足りた。


 蠍の横へ落ちる。腹側を狙って噛む。硬い。浅い。毒が入り切らない。もっと細く、もっと深く押し込む必要がある。


 そう思った瞬間、牙の奥が熱を持った。毒が一点へ集まる感覚がある。散らない。細くなる。


『毒液圧縮 Lv1 を習得しました』


 毒を細く絞って入れる感触が残っている。硬い殻の継ぎ目、細い隙間でも通せる。


 もう一度だけ前へ出る。蠍の鋏が閉じる寸前、関節の隙間へ牙を差し込んだ。


 ——入った。


 今度は深い。すぐ離れる。尾が頭上を抜ける。壁に毒針が刺さり、石が黒く変色した。


 危ない。


 だが勝負は傾いていた。蠍の脚が乱れる。鋏の軌道がぶれる。尾の上がり方が鈍る。そこへ巻きを足した。締め切るには硬い。なら固定だけでいい。頭と尾の向きが揃わなければもう刺突は怖くない。


 蠍はしばらく暴れた。やがて止まった。


   ◇ ◇ ◇


 食うのに少し時間がかかった。硬い。量はある。嫌いではない。だが食事というより解体作業に近い。


 その途中で通知がまとめて来た。


『前脚打撃 Lv1 を習得しました』


『Lv13になりました』


『進化の準備が整いました』


 前脚打撃。今の体では使えない。寝かせるしかない。今は進化の方が先だ。


『安全な場所で休眠状態に入ってください。変化が完了するまでの間、体は無防備になります』


 池に戻る。そこだけは迷わなかった。


   ◇ ◇ ◇


 池の岩陰へ体を収めた時には、もう全身が重かった。


 前回の進化と同じだ。密度が上がる感じ。内側が詰まり、古い体が狭くなる感じ。


 振動感知を最後に一度流す。近くに大きな気配はない。目を閉じた。


   ◇ ◇ ◇


 目が覚めた時、まず牙の感覚が違った。


 ……長い。


 口を少し開くだけで分かる。毒牙が深くなっている。根元の奥が熱い。毒を溜める袋そのものが一段増えた感じがあった。


 体も太い。前より重いのに、動きは鈍くない。


 通知が来る。


『種族が若蛇から毒牙蛇に変わりました』


『レベルが1になりました』


 やはり戻る。仕様だ。前回と同じなら、ここからまた積み直すだけだ。


 確認する。


――――――――――――――――――――

【ステータス】

種族:毒牙蛇

レベル:1

HP:38/38 MP:20/20

攻撃力:22 防御力:20 素早さ:26 知力:18

魔力適性:なし


【スキル】

熱感知 Lv1、毒牙 Lv3、振動感知 Lv2、締め付け Lv3、鱗硬化 Lv1

酸耐性 Lv1、捕食継承 Lv1、掘削 Lv1、壁走り Lv1

毒液圧縮 Lv1、前脚打撃 Lv1


認識範囲:2m

次の進化まで:0%

――――――――――――――――――――


 毒牙蛇、Lv1。


 進化は0%。レベルも1。数字だけ見れば出直しだ。


 だが体の中身は昨日の俺とは別物だった。


 次に試す相手は決まっている。


 北西の大型百足だ。


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