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最弱ステータスでヘビに転生した俺は、スキル補食と進化をしながら迷宮を攻略する  作者: 迫力くん


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第100話「迷宮の王」

 記憶は終わった。


 前脚の下で、コアはまだ脈を打っている。


 さっきまで見えていた黒い大地も、玉座に座る大きな影も、黒い杭も消えた。代わりに、今の迷宮が薄く浮かび上がる。


 上層の細い通路。


 毒沼の広がる層。


 岩の層、熱の層、白い層。


 氷棺の間、空の玉座、防衛帯、そしてこの小部屋。


 俺が通ってきた場所が、一本の体みたいに繋がって分かる。俺の体じゃないのに、腹の中を見ているみたいだ。


 使える。


 かなり使える。


 ただ、慣れたらまずいやつだ。自分の体と迷宮の境目が、少し薄くなる。


   ◇ ◇ ◇


『ダンジョンコアとの接続を確認しました』


『継承候補の認証を完了しました』


『管理権限:初期 を付与します』


『迷宮領域の一部掌握に成功しました』


 通知が頭の中で鳴った。


 一部掌握。


 完全じゃない。そこは妙に正直だ。


 コア越しに分かる範囲も、はっきりしている場所と、ぼやける場所がある。俺が通った通路は分かる。守護像や隔壁も位置なら分かる。上の方にある外へ続く出口も、細い線として見える。


 逆に、氷棺は輪郭だけだ。


 あの氷の中身までは触れない。封印の内側へ爪を入れるような感覚はない。


 遠くには、別のコアへ続いていたらしい白金色の線もある。


 でも、その線は途中で黒く切れていた。今の俺からは、暗くなった先が見えない。繋がっていたはずなのに、切られている。


 この迷宮だけじゃ終わらない。


 それだけは分かった。


   ◇ ◇ ◇


 コアへ意識を少し寄せる。


 第1層に残っている小型魔物の気配が触れた。小さい。弱い。俺が最初に食われかけていた頃の魔物より、さらに軽い。


 こっちを向け。


 そう思っただけで、そいつらの頭がぴくりと揃った。


 うわ。


 できるのか。


 群れを走らせるほど強くはない。細かく命令できる感じでもない。それでも、向きくらいなら変えられそうだった。


 守護像の核にも触れられる。


 防衛帯で俺を叩き潰そうとした像が、今は遠くで眠っている。起こすか、止めるか、たぶん少しなら選べる。


 便利だ。


 餌を集めることもできる。敵が来た時に守護像をぶつけることもできる。出口までの道を開けることもできる。


 便利なのは、はっきり分かる。


 その瞬間、黒い杭の記憶が重なった。


 ねじ曲げられた光の先で、魔物が一斉に同じ向きへ首を向けた景色だ。


 俺が強く握れば、あれに近いことができる。


 これは、そういう力だ。


   ◇ ◇ ◇


 俺は、食われる側から始まった。


 大蛇に見られただけで腹が動かなくなったこともある。沼で逃げ道を塞がれたこともある。白層で寒さに動きを奪われたこともある。


 勝手に止められるのは、ろくでもない。


 勝手に向きを変えられるのも、たぶん同じだ。


 だから、今は握りすぎない。


 見る。


 道を開ける。


 必要な時だけ、守護像や隔壁を使う。


 魔物の動きまで全部俺の思い通りにするのは、後で考えればいい。少なくとも、今すぐやることじゃない。


 聖人になったつもりはない。


 腹が減れば食うし、邪魔なら倒す。


 それでも、黒い杭と同じやり方でこの迷宮を握るのは嫌だ。あれを見たあとで同じことをやったら、たぶん俺の中で何かがずれる。


 俺の巣なら、食って寝る場所で終わる。


 でも、ここはもう巣だけじゃない。


 通路がある。守護像がある。氷棺がある。コアがある。外へ続く出口もある。


 なら、これは俺のダンジョンだ。


 支配して潰す場所じゃない。


 見て、必要なら使って、切れた線を確かめる場所だ。


   ◇ ◇ ◇


 コアがもう一度、ゆっくり脈を打った。


 今度は、迷宮の上の方が見える。


 第1層の端に、外の空気が入っている裂け目があった。今まではただの遠い出口だった。コア越しに見ると、そこまでの道筋が細い光で繋がる。


 途中には、俺が前に通った狭い穴もある。


 今の体では通れない場所もある。


 けど、別の通路が開いていた。前は壁にしか見えなかった黒玻璃の裏に、上へ戻るための通路がある。コアが分かるようになったから、初めて道として見えた。


 外へ出られる。


 そして、外へ出ないと分からない。


 遠くで切れている白金色の線。


 他にもあるはずのコア。


 それを切ったやつ。


 この迷宮の中で待っていても、そこまでは見えない。


 氷棺は残す。


 あの龍は、今の俺ではまだ取れない。封印の内側も読めない。場所は分かっているから、戻る時にまた来ればいい。


   ◇ ◇ ◇


『出口経路を開放しました』


 黒玻璃の小部屋の奥で、白金色の線が壁を走った。


 壁だと思っていた場所が、音もなく少しずれる。奥に細い通路が見えた。冷気ではなく、上の層へ戻る乾いた空気が流れ込んでくる。


 コアから前脚を離す。


 まだ肩の内側は熱い。けど、引きはしない。今度は、迷宮の方から俺を押さえ込む感じもない。


 俺はこの迷宮を取った。


 全部じゃない。初期権限だけだ。氷棺も、他のコアも、まだ届かないものだらけだ。


 足りない分は、外で拾う。


 まずは見に行く。


 繋ぐかどうかは、その後で決める。


 外へ出る。


第1部の迷宮編は終わりです!沢山の評価とブクマをありがとうございます!

日間、週間、月間ランキングにもランクイン出来ていたみたいでとても嬉しいです!

作者の励みになるのでお手数でなければ評価とブクマをポチッとお願いします。

2部からいよいよ全く喋ってなかった主人公が外の世界へ出ます笑

2026.4.18から1日1話17時更新となりますが必ず完結まで執筆するのでよろしくお願いします。

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