表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦後処理官(英雄の後始末をしていただけの男)をリストラした王国、なぜか勝利の代償を払う  作者: 鷹宮ロイド


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/102

第41話 成功とは呼ばれない成功

 中央からの視察団は、簡素だった。


 装飾のない馬車が一台。

 随行員は二名。

 記録官が一人。


 歓迎の旗も、楽団もない。


 自治領は、もう祝われる規模ではない。


---


「安定していますね」


 視察団の代表が、淡々と言った。


 結界塔の内部を見て、記録を確認し、

 魔力消費の推移を眺める。


「はい」


 ミラは答える。


「防衛範囲縮小後、重大事故はゼロです」


「経済は?」


「縮小傾向です」


「人口は?」


「横ばい」


 質疑は、乾いている。


---


 代表は、資料に印をつけた。


「維持可能水準。支援継続」


 それだけ言って、書類を閉じる。


「……以上です」


 以上。


 称賛もない。

 労いもない。


 だが、打ち切りもない。


---


 視察団が去った後、補佐官が呟いた。


「もう少し、何か言ってくれても」


「何を?」


 ミラは首を傾げる。


「頑張った、とか」


 少しの沈黙。


「言われたい?」


 補佐官は、困ったように笑う。


「……少しは」


---


 エマは、そのやり取りを見ていた。


 フォルンでは、成果は静かに積み重なる。

 だがここでは、静かすぎる。


 成功は、騒がれない。


 失敗だけが、広がる。


---


 その日の夕方、商店街で小さな祭りが開かれた。


 規模は小さい。

 露店も少ない。


 だが、子どもたちは走り回っている。


「今年は、ちゃんと開けたね」


 店主が言う。


「去年は、結界の揺れで中止だったから」


 ミラは、少し離れた場所でそれを見ていた。


「……成功、なんでしょうね」


 エマが隣で言う。


「誰も“成功”って言ってませんけど」


「言わなくていいのよ」


 ミラは微笑む。


「続いてる。それだけで」


---


 夜、記録板に新しい項目が追加された。


> 年間重大事故件数:0

> 緊急介入回数:前年比-60%

> 住民避難回数:0


 数字は、地味だ。


 だが、確実に変わっている。


---


 ミラは、最後に小さく書き加えた。


> 備考:

> 生活音、安定


 誰に提出するわけでもない。

 ただの個人メモ。


 だが、彼女にとっては一番重要な記録だった。


---


 成功とは、何か。


 拡張することか。

 豊かになることか。

 称賛されることか。


 この自治領では、違う。


 壊れないこと。

 減らないこと。

 今日と同じ明日が来ること。


---


 その日、自治領では何も起きなかった。


 それは、ニュースにならない。


 報告書の端に、小さく残るだけだ。


 だが、

 呼ばれない成功が、

 確かにそこにあった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ