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戦後処理官(英雄の後始末をしていただけの男)をリストラした王国、なぜか勝利の代償を払う  作者: 鷹宮ロイド


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第3話 勝利のあとに残るもの

 英雄団長カイ・レオンハルトは、剣の手入れを終えてからようやく眉をひそめた。


「……妙だな」


 王都近郊の演習場。

 先ほどまで、いつも通りの模擬戦をしていたはずだった。


 剣は振れる。

 動きも悪くない。

 魔力も流れている。


 ――だが、何かが違う。


「団長? どうかしましたか」


 部下の一人が声をかける。


「いや……」


 カイは首を振った。


「ただ、少し重い」


「重い?」


「体じゃない。剣でもない。

 ……言葉にしづらいな」


 部下は困ったように笑った。


「疲れじゃないですか?

 戦争も終わったばかりですし」


「そう、だな」


 その説明で十分なはずだった。

 事実、戦争は終わり、王国は平和を取り戻している。


 だから、この違和感は無視されるべきものだった。


 数日後。


 討伐依頼が一件、舞い込んだ。

 王都南部の小規模な魔獣発生。


「問題ない規模だ」


 カイはそう判断した。

 部下も同意し、出動は最低限の人数で行われた。


 ――結果は勝利。


 だが。


「団長、後処理は……?」


 部下の問いに、カイは一瞬、言葉に詰まった。


「……通常通りだ」


 以前なら、即座に「戦後調整官へ回せ」と言っていた。

 魔力残滓の処理、地脈の安定化、周辺環境の確認。


 だが今は――


「報告書を提出して終わりでいい」


「はい!」


 部下は疑問を持たなかった。


 問題は起きていない。

 なら、何もする必要はない。


 それが、今の王国の方針だった。


 その夜。


 カイは、討伐地付近で眠りについた。


 夢を見た。


 戦場の夢だ。

 何度も見てきたはずの、血と炎の記憶。


 だが今回は違った。


 敵を倒しても、地面が静まらない。

 空気がざらつき、足元がわずかに軋む。


 ――まるで、戦いが終わっていないような。


 目を覚ますと、額に汗が滲んでいた。


「……気のせい、か」


 そう呟いて立ち上がろうとした瞬間。


 膝が、ほんの一瞬だけ遅れた。


 致命的ではない。

 戦えないほどでもない。


 だが、英雄としては――

 あってはならないズレだった。


 王都に戻ったカイは、医療部門で簡単な診察を受けた。


「異常ありません」


 治癒士は即答した。


「魔力循環も正常。

 後遺症は見当たりません」


「そうか」


 カイはそれ以上、何も言わなかった。


 言えなかった、という方が正しい。


 数値も、理屈も、説明も――

 すべてが「正常」なのだ。


 なら、この違和感は存在しない。


 その帰り道。


 城の回廊を歩くカイの脳裏に、

 ふと一人の男の顔が浮かんだ。


 無表情で、淡々と報告を上げる後ろ姿。

 戦場に立たず、剣も振るわない。


 だが、戦いが終わったあと、

 必ずそこにいた男。


「……」


 カイは立ち止まりかけて、首を振った。


 もういない人間だ。


 平和な時代に、影の仕事は必要ない。

 それが、王国の出した結論なのだから。


 彼は歩き出す。


 気づかぬまま、

 取り返しのつかない段階へ

 踏み込んでいることを知らずに。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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