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戦後処理官(英雄の後始末をしていただけの男)をリストラした王国、なぜか勝利の代償を払う  作者: 鷹宮ロイド


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第18話 正しく真似られた国

 その国は、評判がよかった。


 戦争を終えたばかりだというのに、

 結界事故は起きていない。

 魔獣被害も増えていない。


「うまくやっているらしい」


 フォルン辺境領に届いた報告書には、

 そんな一文が添えられていた。


「フォルン方式、ですか」


 リシェルが書類を読みながら言う。


「そう呼ばれているようですね」


 アレインは、少しだけ眉を動かした。


「正式なものではありません」


「でも、真似している」


 南東の小国家、エルディナ。

 戦後処理を専門とする部署を新設し、

 判断理由を必ず記録する制度を導入。


 表向きは、理想的だった。


「視察要請が来ています」


 リシェルが続ける。


「助言ではなく、

 “確認”だけでいいと」


 アレインは少し考え、うなずいた。


「行きましょう」


 助けに行くのではない。

 壊れているかを見に行く。


 エルディナの首都は、整っていた。


 道は清潔で、結界塔も新しい。

 役人たちは忙しそうだが、混乱はない。


「問題は起きていません」


 案内役の官僚は、誇らしげに言った。


「すべて、判断理由を残していますから」


 彼は、厚い記録束を示す。


 アレインは、その中身を読んだ。


判断理由:

観測値は基準内だが、

将来的な不安定化の可能性を考慮し、

処理を実施


 どの記録も、丁寧だ。

 言葉も整っている。


「……処理は、誰が行いましたか」


「専門部署です」


「継続担当は?」


「当番制です」


 その答えに、

 アレインは何も言わなかった。


 視察の帰り道。


「悪くない、ですよね」


 リシェルが言う。


「記録もあるし、判断も早い」


「はい」


 アレインは認める。


「正しく真似ています」


 それが、一番の問題だった。


 数日後。


 エルディナで、異変が起きた。


 結界の出力が、

 わずかに落ちた。


 被害はない。

 警報も鳴らない。


 だが、現場は迷った。


「判断理由は?」


「前回と同じでいい」


「でも、今回は人の流れが違う」


「記録を優先しろ」


 処理は、一拍遅れた。


 結果として、事故は起きなかった。


 だが、街の一角で

 地盤が微妙に歪んだ。


 住民は気づかない。

 数値も基準内。


 だから、記録にはこう残る。


異常なし


 フォルン辺境領。


 報告を読んだアレインは、

 静かにペンを置いた。


「始まりましたね」


 リシェルが息をのむ。


「失敗、ですか」


「いいえ」


 アレインは首を振る。


「劣化です」


 壊れてはいない。

 だが、戻らない。


 正しさを真似ただけでは、

 続かない。


 その夜。


 エルディナの街は、

 いつも通り灯りに包まれていた。


 誰も気づかない。


 正しく真似た結果、

 ほんの少しだけ、世界が鈍くなったことに。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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