第15話 選ばれた場所、選ばれなかった場所
同じ週に、二つの報せが届いた。
一つは、南方交易都市リュネアから。
もう一つは、北方同盟都市国家の辺境区画から。
どちらも、戦争を終えて半年以内の地域だった。
選ばれなかった場所
北方同盟都市国家では、復旧作業が続いていた。
結界暴走の影響で、街区の半分が閉鎖。
住民は仮設区域へ移動し、商業活動は停止。
「原因は特定中だ」
役人は、そう繰り返す。
数値は揃っている。
記録もある。
だが、なぜそうなったかは誰も説明できない。
「また専門家を呼べ」
「前にも来た」
「なら、別の専門家だ」
責任は、次々に移されていく。
問題は、処理されていない。
ただ、覆われているだけだ。
選ばれた場所
一方、南方交易都市リュネア。
数か月前、ここは一度だけフォルン領に使者を送っていた。
要求は一つだけだった。
「教えてほしい。
何を見落としているのかを」
地位も、即効性も求めなかった。
リュネアでは、結界は稼働している。
魔獣被害も、特別少ないわけではない。
だが。
「異常兆候、あり」
見張りの声が上がる。
「小さいな」
「だから、止める」
判断は早かった。
出力を落とし、区域を限定し、
住民を先に動かす。
結果、被害は出なかった。
「失敗記録、残せ」
「はい」
それだけだ。
誰も称賛しない。
誰も責めない。
続けるための動きだけが、淡々と行われていた。
フォルン辺境領。
アレインは、二つの報告を並べて机に置いた。
「……同じ条件でも、結果は違う」
リシェルが言う。
「違ったのは、
“何を優先したか”ですね」
「ええ」
急いだ場所と、
続けることを選んだ場所。
差は、判断の積み重ねだった。
数日後。
世界地図の上で、傾向がはっきりしてくる。
安定している地域
ぎりぎりで踏みとどまっている地域
繰り返し崩れる地域
それらは、国境では分かれていない。
考え方で分かれている。
ある国の会議記録が、密かに流れてきた。
「あの連中は遅すぎる」
「だが、壊れていない」
「……それが問題だ」
壊れていないことが、
理解できない世界もある。
夕方。
名もなき建物で、若者の一人が聞いた。
「正解は、どっちなんですか」
アレインは、少し考えて答える。
「正解はありません」
そして、続ける。
「ただ、
続けられたかどうかは残ります」
その夜。
遠方で、また一つの街が揺れた。
フォルン領では、何も起きない。
リュネアでも、何も起きない。
選ばれた場所では、
問題が起きないための行動が、
もう当たり前になっていた。
世界は、完全には救われない。
だが、
壊れ方は選べる。
それを知った世界は、
もう元には戻らない。
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