ヴォリーダ学校
春になり、花や木がきらきらと輝くとき
僕は国一番の学校
ヴォリーダ学校に入学した。
カタレフとロスカは幼棟部へ
僕は中棟部へ
「「いやだ!!!」」
2人から駄々を毎朝こねられる日々だが、
「お家から帰ったら必ず遊ぶから」
という約束のもと別館へ向かう。
最初こそ、周りからヒソヒソと遠巻きにされていたが、
音楽の授業でバイオリンを演奏したら、
なぜかあっという間に囲まれた。
「すごいわ!素敵な音色だった」
「とても上手だな」
「あ、ありがとうございます」
恥ずかしくて、もじもじしてしまった。
そこからクラスの人達とは馴染めていった。
この学校はよっぽどのことがない限り、クラス替えはなく
3歳から16歳まで同じクラスで成長していく。
きっとその中で、自分達の将来の人脈や信頼関係のある従者を築いていくのだろ。
平民も貴族も学力とマナーが高ければ入学できる、唯一の学校。
その中でも貴族は信頼できる従者を、平民は自分の仕えたい主人を探すという
きっと目論見があるのだろう。
月日は穏やかに流れ
ー12歳になった、僕は
昼休み、中庭の大きな樹木の下にハンカチを敷いて
キートが持たせてくれるサンドイッチを食べながら
大きな校内の隙間から見える青空を眺めていた。
「ラズ!こんなとこにいた」
僕の名前を呼んで駆け寄ってくれる2人の友人
大きく逞しい熊族のソフォス家長男のアルク伯爵
それに3歳から一緒にいる従者のピス。
ピスは人間だ。
この学校の中では2人は気の置けない友人だ。
「何かお困りごとでもありますか?」
アルクにハンカチを敷いて座らせ、自分の分を敷きながら
気にかけてくれるピス。
「いや、僕は将来どうしようかなって」
心が揺れている。
ぼや~として先が見えない。
「なんだ、てっきりカタレフ様かロスカ様の従者になるのかと思っていたが」
アレクはピスに出されたお弁当を食べながら、
当然のように言ってきた。
「ああ。そうしたいと思っているんだが…」
「何かやりたいことでもございますか?」
実は名前を貰った日
マブロとアスプから提案してくれた。
養子として歓迎すると。
ただ、そんなの2人が優しいから通る話で、
浮かれていた僕にキートは苦しそうに釘を刺した。
「ラズ、イエネオス家は純潔の狼の家系。国王がそれを許しはしないでしょう
また、きっとお二人は優しく、決意を固めての提案。
国王と関係がこじれてしまう可能性も考え、
それでも戦う意思を固めていらっしゃるんだと思います。
ラズ…この意味、わかりますね?」
部屋に戻ってキートが話してくれたことは、
僕がこの1年間で教わったこの国の話だった。
そうだ、また、家族ができたと思っていた。
でも違う。
僕の家族は…もういない。
次の日、僕は2人にお断りの話をした。
2人は動揺し、私達は我が息子のように本当に思っていること
純潔など、そこまで気にしていないことを話してくれた
けど、
この年になれば分かる。
あの選択は正しかった。
どんなに平和なこの街も、人間は獣人には、敵わない。
勝ることを許されていない。
偏見ではない。そのように自然の摂理のようにできているのだ。
目の前にいるピスも人間で、親しそうにアルクと話しているけど
敬語をはずしている姿はみたことない。
前にピスが教えてくれた
「6歳くらいのとき、アルク様が自分にだけ敬語をつかっていることに
ヘソを曲げてしまったことがありました。
その日から、私は全員に敬語をつかうようになりました。
今でも、その選択をとった私を悲しげに見た
アルク様の顔は忘れられません」
話したピスの悲しげな顔が、きっとアルクも同じ顔をしたのだろうと想像がついた。
この2人はきっと想い合っていると
それは叶わない世界。
僕が幼棟部で2人の世話をしないのは
マブロとアスプが僕を1人の人として見ているからだ。
従者の選択だけではない。
好きなことを見つけたら羽ばたいてほしい。
その気持ちがあって、僕は僕のために学校に通えている。
こんなに恵まれているのに、苦しい。
ざわざわ
風が僕の髪を弄ぶ。




