誰よりもかっこいい
「この方はいかがですか?」
「…」
「この間、楽しそうにお話されていましたよ」
「…」
「話は合うと思うのですが…」
「…」
「なんですか?そんなに見られても、何かおっしゃりたいならどうぞ」
「ピス以上に話が合う者などいないだろ」
「ーっ、それは…幼少期から一緒にいるからです」
「…」
「…ふぅ」
あの日から、私の気持ちに鍵をかけた。
早くソフォス家の為、そして私の為に
婚約者を探さなければ…
そう躍起になってアルク様にご令嬢を紹介するも
すればするほど、機嫌も悪くなるし、口も利かなくなる
その垣間見えるアルク様の感情も私は気づかぬふりをして
無神経に、ずかずかと婚約者を紹介する。
「悪いが今日も父上の仕事の手伝いに行く
そのご令嬢とやらの相手をしてる暇はない」
休日は最近いつもそうだ。
ガウス様は喜ばれているが、私には婚約者をかわすために利用しているとしか見えない。
「…そうですか、私は…」
「一緒に来い」
そして私も一緒にその仕事を後ろで付き添ってみている。
今日もダメだったか。
明日ラズに愚痴を聞いてもらおう。
そう考えながら休日を過ごした。
ある日の大剣の授業中。
ラズがぜーぜー言いながら疲れ果てたように
隣に座ってきたので、冷えた水を渡した。
「あ、ありがと~」
「お疲れ様です」
笑うと、じとーとラズにみられ
「なんで、同じ内容なのにピスは疲れてないの?」
「え、いえいえ疲れていますよ、
ただ、もしかしたら小さい頃から
アルク様の稽古の相手をしていたからかもしれませんね」
「え?!あのアルクの?!」
クラスのなかでも上位に入る力の持ち主だ。
今も大剣を軽々と操り相手を倒している姿を見て
ラズはげっそりしていた。
「いえいえ、幼少期ですし…
アルク様が私に本気でかかってきたことなど
1度もありません」
そう、いつも全力でぶつかる私をあしらいつつ
私の動きを注意深く指導してくれて
ー「これでは…はぁはぁ…アルク様の稽古になりません…はぁはぁ」
ー「いや、ピスは基本の動きが早いからな
油断すれば切られかねない。力より素早さで相手を倒せる」
ー「もし、身に危険があった時、僕のように相手が獣人だったら
今のような素早い動きで、アキレス腱を狙え」
ー「はい」
ー「よし、今日はここまでにしよう」
その背中は大きく、逞しく、誰よりもかっこいい
「はぁ」
「ピス?大丈夫?」
「…最近少し辛いですね」
「…そっか」
ラズは深く聞いてこない
きっと気付いているのに、優しい心の持ち主だ。
大きく大剣を振るう姿に太陽の光が反射して
眩しくて…見えない




