はちみつレモン
「…ピス」
「はい、アルク様」
「…それ、やめろ」
9歳になり中棟部に上がった年。
私は学校の他に本格的にソフォス家の従者のマナーや歴史を学びだした。
数ヶ月経った頃、アルク様は不機嫌な顔で私を見る。
「はい?どちらでしょう?」
「!それだ!!その他人行儀の話し方だ!!」
「ちょ!ここは図書室です、お静かに!」
私は立ち上がったアルク様の肩に手を置き座らせ
人差し指を口元へつけ注意した
「…同じクラスの奴らには、そんな話し方しないだろ」
拗ねるように小声で言うアルク様に
私は困った顔しかできなくて
「それは、仕方ありません。私はアルク様の従者ですから」
「…俺は許可してないがな…」
「またそんなこと言って…」
私はポケットの中から飴をだし、アルク様に渡した
「これ、母から貰った飴です。…内緒ですよ?」
アルク様は私の好きな、
はちみつレモンの飴を渡すと喜び機嫌も直る。
でもそうか…疎外感を感じてしまったのだろうか
なら、
「おーい!ピス!」
クラスメイトが声を掛けてきた
「はい、いかがしました?」
その返答に、クラスメイトもアルク様も驚いていた。
「なんだよ、びっくりした」
クラスメイトが驚くと私は誇らしげに
「私はソフォス家に使える従者だという自覚をつけただけです」
その時のアルク様の顔は、とても悲しげで
少し呆れた表情をしていた気がする。
そこから月日が流れ
12歳になった頃
ソフォス家での夕食時
私はアルク様の後ろで、食事を取り分けていた。
「おい、アルク、こないだの写真はみたか?」
「…」
ガウス様の返答に聞かぬふりをするアルク様
大きなため息が聞こえ
「いいか、とても聡明な熊族のご令嬢だ、
今度の王宮パーティーでもお会いする
手紙をちゃんと出しておきなさい」
力強く言うガウス様にアルク様は、じとと視線を送る
「なんだ」
「いえ…お断りする方向で考えています」
「は?!またか!!お前、何人目だ!!」
「いくら紹介されても、受ける気はありません」
冷静に、でも少し怒っているような強い声
「ーはぁ」
大きなため息だけが部屋に響く。
アルク様が食事を終え、席を立つと
ガウス様から私は呼び止められた。
「ピスからも言ってくれないか」
「…婚約者様探しですよね」
「あぁ、もう12だ、本来なら10から決まっているものだ
本当にあいつは、常識を考えない。ピスの言うことなら聞くと思うんだ」
「…承知しました」
私は一礼するとアルク様の部屋へ
食後の紅茶を運びに行く
コンコン
「入れ」
「失礼いたします」
紅茶をセットしていると
大きなため息が聞こえた
「アルク様、ガウス様も気に留めていますよ」
「父上が気に留めているのは、常識から外れていることだろう」
呆れたように笑うアルク様にレモンティーを入れて
テーブルに置く。
「…しかし、その歴史があるから、今のアルク様がいらっしゃるんですよ」
私の言葉に、ムッとした顔をする
なんて分かりやすい。
「正論をぶつけるな」
「ふふ、失礼しました」
「はぁ…」
静かにレモンティーを口にするアルク様に
私はそっとポケットから飴を取り出し
「レモンティーのお供に」
「ありがとう」
嬉しそうなアルク様をみて
私はほっとする。




