アルク様との出逢い
これは、私がラズにソフォス家から出ていくと話して
半年ほど経った頃。
「ピス兄ちゃん!」
「カイア、学校帰りですか?」
「うん、僕も手伝う!」
「先に宿題をしてきてください」
「はーい」
私の実家は山奥で、
エグという鉱石がとれ、採掘、加工し
貴族の洋服や装飾品に使われている。
私の家は、その鉱石の採掘を主に行い
加工は別に頼み、できたものを街の洋服屋に出荷している。
今日も山奥へ父親と一緒に採掘に行って
今は父の分も合わせて加工屋へ向かっている途中、
学校帰りの弟カイアに鉢合わせしたところだ
ここは田舎の中でも、特に田舎で
長閑だ。
風は優しく、空は青く広い。
平凡な私の家族と穏やかな日々を送っている。
「こちらお願いいたします」
「お!ピス!!今日も精が出るな」
加工屋のハルクさんは茶色い毛並みの熊族だ。
長年鍛えられた腕の筋肉は太く
父と代わらない年齢なのに感じさせない。
「そろそろ夏が来るので、もう少し量は増えてくると思います」
「おお!やりがいあるってもんよ」
鉱石を見せて仕分けしてもらい、見積もりを出してもらう。
見積書を作成してもらい印をする
「そういや、俺はてっきり冬休みかなんかかと思ったが
ピス、もう隣国には戻らないのか?」
何も気にした様子のハルクは、純粋に聞いてくる。
「はい。ここで家業を継いでいこかと思います」
「そうかそうか!親父さん喜ぶな!ガハハハ」
豪快に笑うハルクに、僕は笑みをかえした。
突然帰省した私に両親は何も聞かなかった。
「…戻るつもりはありません」
母と夕食の支度をしていた時に、ぽつりと呟くと
母小さく頷いて
「貴方の人生よ、貴方が決めたことに私達は何も言わないわ」
そうかえってきた。
恵まれている。
子供の頃から、知識に触れるのが好きだった。
色んな絵本を読んでは、文字を理解するのが楽しく
算数も好きだった。
両親は、そんな私に驚き、視野が広がるのでは、と
ヴォリーダ学校の試験を私に受けさせた。
ーそこが1つの大きな分かれ道でしたかね
受かった私は、ヴォリーダ学校の近くのアパートへ母と引っ越した。
そこで出会った。
アルク様と。
「ーおい、お前文字がもう読めるのか?」
きゅるとした瞳は、僕を興味深く見つめてきた。
「…うん」
なんだか、ハルク兄さんみたいな毛並みだけど少し赤い。
「この本読んでくれ」
そう言って持ってきた絵本を僕の前に突き出した。
「わぁ、綺麗な本…見たことない」
ーそれは僕の家では見たことがない
ページを開くと絵が飛び出すように折られている絵本だった。
面白くて、僕は嬉しくなって
「うん!」
その日がアルク様と初めての出逢い。
文字が読める私は、珍しい絵本を持ってくるアルク様に
毎回わくわくしながら読み聞かせをした。




