知ってほしかった
「ねぇカータ…知っておいてほしいことがあるんだ」
結婚式を終え、教会にて婚姻証書も提出できた。
別宅に繋がっている研究室は
ちょっと引けるくらい設備がよくて
よくケイトが入り浸っている。
そんな花が咲き誇り穏やかな温かさの季節から
街は白銀に染められた季節
僕は、ずっと大切にしていた白い箱の話をした。
伝えたかった。
僕は前世から転生して、別の世界からきたこと
前世の自分の過ち、家族の話、
なぜか、転生時この箱は一緒にきたこと。
「この世界の童話でー」
話を聞き終わったカータは、僕を膝にのせて話し出した。
「白い犬族の話がある…その犬は大切な主人に幸せになってほしくて
長くない残りの命を、主人の幸せに変える話だったよ」
「そうなんだ…」
「都合が良いかもしれないけど、
僕ならきっとそうするなぁ」
「え?」
「大切な人の悲しんだり、苦しんだりしてる姿をみてたら
余計思うかもしれないね」
「ぼ、僕は苦しくなんてなかったよ…」
頬に涙が伝う。
「残り少ない命なら尚更ずっと一緒にいたかった」
ーそうだよジロウ
ずっと一緒にいたかったんだ。
カータの胸に顔を埋め
僕は子供のように、わんわん泣いた。
カータはずっと優しく抱きしめて
時折、おでこに優しい口づけを落とした。
ー今日は特に冷えるな
僕は1人で、薬屋に向かった。
長いローブにフードを被って
マフラーで口元を隠しながら
冬で良かった。
ちょっとやっぱり…買うの恥ずかしい…
カータに内緒で僕は薬屋にいき
この世界には必要な
新しい生命を宿す為の薬を購入した。
こそこそ買う人が多いのか
薬屋の亭主は、僕の様子をみて
「最初でしたら、こちらの量が宜しいかと思います」
と何も言わず出してくれた。
「あ、ありがとうございます」
購入した紙袋を大切に持って、少し日用品も購入して家に帰った。
ーき、緊張した
ほっとしたのもつかぬ間
帰宅して直ぐに、キートに声をかけられた。
「ラズ、ちょっと手伝ってほしいのですが」
キートは少し目が悪くなって、小さな文字が見えづらいと
最近よく言っている。
「うん、何か読むの?」
僕は購入した袋を部屋のテーブルに一旦おいて
キートの元へ向かった。
「今度の休みに眼鏡屋さんに行こうよ」
「うーん、そうですね、さすがに見えづらすぎかもしれません」
元々細い目が更に細くなって。それは見えていないのでは?
なんて思いながらキートと別れて
そのまま僕は研究室へ向かった。
「よし、今日はここまでにしよう」
僕が声をかけると、ちょうど切りが良かったのか
ケイトも顔を上げた
「俺もそうしようかな…あ、そういえば今日朝はどこ行ってたんだ?」
「あぁ、薬屋にちょとー」
ーしまった!!!
部屋のテーブルに薬が入った袋を置きっぱなしだ!
体温がいっきに上がり体が赤くなる
「け、ケイト!僕先に帰る!!」
慌てて別邸へ走る
まだ、この時間なら帰ってきてないかな
ーいや、別に隠すつもりはないんだけど…
ゆくゆくは…て思って…その…
心の中で言い訳を並べながら僕は部屋のドアを勢いで開けた。
バンッ
ーあぁ
ベストタイミングというか、なんというか
「あ、あ、おか、えり」
テーブルに置いた袋を開けた状態で手に持っていたカータ
僕の顔は真っ赤に染まる
つられてカータも純白の毛並みの頬が少し赤く見える。
「ごめん、薬の袋だったから…体調崩したのかと思って」
僕より先にカータが言い訳を話す。
僕は近づいて、カータの手に自分の手を添えた。
「いや、僕も相談なしにごめん、置いといたのも僕だし…」
こつん
カータは僕のおでこに自分のおでこをくっつける
「…嬉しい」
カータのその言葉に、また体温が上がる。
「うん…」
僕は少し足に力を入れて背伸びして
ようやく届くカータに口づけした。




