答え合わせ
「ケイト!この資料まとめたの確認して、
あとさっきの調合量なんだけど」
研究に没頭して時間と課題に追われる日々は
月日が流れていることを忘れさせる。
向き合いたくないことにも
向き合う時間すら与えない。
「わわ!資料多いな、てかラズ!もう8時だ!
双子の卒業式!!参加するんだろ」
1ヶ月前に届いたカタレフからの手紙
ー親愛なるラズへ
来月僕達はヴォリーダ学校を卒業します。
卒業式には家族みんなで参加するだろ?
待ってるよ。
ーカタレフより
キートに頼んでから4年間。
僕は1度も家に帰っていない。
心配したアスプとマブロが一度研究所に訪ねて来たことがあった。
僕の顔を見るなり、目の下のクマがひどくて慌てふためいていたけど
他の職員も目の下にクマをつくっており、
ここは本当に大丈夫か?!と
マブロが研究長と話し合おうとしたくらいだ。
しかも夏に来たから余計
仕事の環境とは思えん!!とマブロが怒り
最新の冷却器がイエネオス家の寄付で
研究所全ての部屋に入った。
なんてありがたいんだ。
夏になると、僕はよく研究員に拝まれるしまつだ。
でもそれくらいだ、カタレフとロスカには会っていない。
4年だ。
僕の時の16歳とは、また違うだろう。
獣人は16歳で体が完全に出来上がるという。
逞しかった2人はさらに迫力が増しているに違いない。
「昔も大きくて広いと思ってたけど、変わらないね」
一度帰宅して、キートに手伝ってもらい身支度を整えて
6年ぶりに訪れたヴォリーダ学校は大きく綺麗だ。
この門をくぐれば…皆に会える。
「いきましょう」
キートは僕の背中をそっと押す。
「う、ん」
僕は緊張して小さな一歩で門をくぐった。
ー本当に大きくなって
「久しぶりに皆集まって、本当に嬉しいわ」
卒業式は考え深く、自分の時と重ねながら、
大きく逞しくなった2人をみて、マブロと一緒に泣いた
イエネオス家に帰って
一緒に夕食を食べる
夕食を皆で食べるのも6年ぶりだ。
アスプが嬉しそうに話している。
「確かに、家族全員がそろって美味しいな」
マブロの顔もほころんでいる。
「はい」
僕も返事をしながら、くすぐったい
懐かしい空間にほっとする。
食事が終わり、アスプに
「そうだ!ラズの部屋そのままだから今日くらい泊まっていって」
その言葉に甘えて久しぶりに自分の部屋に入った。
ー本当に変わってない
懐かしく、テーブルや棚にほこり1つない
毎日手入れしてくれてたんだ。
本当に僕がいつでも帰ってこれるように
整えられていたんだと嬉しくなった。
コンコン
「はい」
僕の返事を待って入ってきたのは、カタレフだった。
「久しぶりだね」
そう微笑むカタレフに、僕の胸は騒ぎ出す。
「うん」
ソファに腰かけるカタレフの向かいに座る。
「学校は楽しかった?」
「うん、充実してたよ。」
「そっか、なら良かった」
少しぎこちない空気が流れる。
「伝えたいことがあるんだ」
カタレフは、意を決して話す。
「う、うん」
「僕、婚約しようと思うんだ」
ードクン
胸が痛い。
苦しい。
覚悟してたはずなのに…
「へぇ、そうか、もうそんな年だもんね」
ー僕は上手く笑えてるだろうか
「遅いくらいだよ、獣人の常識にとってはね」
「そっか」
僕は上手く笑えないきがして、自分の手に視線を移した。
あれから4年だ、手放したのは僕じゃないか
「獣人の常識とか…嫌になるよね」
カタレフの声は呆れていた
その声に思わず顔を上げる
「そんな常識、守らずとも、大切な街や人々を守っていけたら別にいいと思わない?」
黄金に輝く強い瞳に捕らえられた僕は
視線を逸らすことができない。
ー綺麗な瞳だ
「ねぇ、ラズ…ラズは僕が大切?」
じっと見つめられる
体が痺れて動けない
「うん、大切だよ」
にこっと微笑んで
「僕も大切」
「こ、婚約者…よりも?」
ー僕は何をきいてるんだ
少し驚いた様子のカタレフは
また、じっとみつめて
「どうだろう…分からないなぁ」
ー痛い
胸が、痛いよ
苦しいよ
「ねぇ、ラズ」
「ん?」
「…なんで、泣いてるの?」
ーえ?
僕は気付かぬまに、頬に涙を伝わせていた。
慌てて手で拭う
「ご、ごめん、なんでもないんだ、本当になんー」
大きな影が僕を包み込む
あの日と同じだ。
お姫様のように僕を膝にのせる
顔がよく見える
ぺろ
頬に伝う涙をカタレフは舐めとる。
「ごめん、少し意地悪しすぎたかな」
謝るカタレフに僕は驚く
ーどういう意味?
ぎゅ
柔らかく優しい香りに温かい体温。
カタレフの胸に顔を埋める。
強く抱きしめられる。
「ねぇあの日の答え教えてラズ…」




