幸せに暮らせること
研究所に戻る予定だった足が自然と自宅に向く。
ガチャ
「あれ、珍しいですね。こんな時間にお戻りですか?」
キートが出迎えてくれた。
洗濯物を畳んでいる途中だったみたいだ。
僕はキートの向かいに座り
一緒に洗濯物を畳んだ。
「…何かありましたか?」
僕の様子で、キートは直ぐに言いたいことがあるんだと察知する
「…頼みがあるんだ」
ーコンコン
「こんばんは!」
大きな尻尾をぶんぶん振ったカタレフの姿が玄関に見えた。
「今日もお早いですね、宿題はやっていかれますか?」
キートはため息交じりに言うと
「いや、今日は宿題終わってから来たんだ
ラズは?!いる?」
「…この時間に帰ってくることは奇跡に近いのですよ」
「そっか…また帰ってないの、体が心配だよ」
耳を垂れるカタレフをキートはじっと見つめた。
「なに?」
「…お弁当でしたら、本日は届け終わっております。」
「え?!どうして!!僕が行くのに!!」
「…カタレフ様、よくお聞きください」
キートはカタレフの前に膝をついて話し出した
「ラズより、もうお弁当を届けることをカタレフ様に頼まないでほしいとお願いされました。
そして、そのことを直接ではなく、私が伝えるようにとお願いされました。
この意味がお分かりになりますか?」
「え、…僕に会いたくないってこと?」
驚くカタレフにキートは大きく頷いた。
「はい。私も理由を深くは聞いておりません。
聞いても話してはくれない様子でした。」
ガタッ
衝動的に立ち上がったカタレフは
グッと手に力を込めて、また座った。
続けてキートは
「カタレフ様は、この街を守る立場の人だから
その邪魔はしたくない。ともおっしゃっていました。」
口に力を入れているカタレフ
「カタレフ様、どうか、ラズの気持ちを汲んでください。」
「キート…」
寂しげに名前を呼ぶカタレフに
はあと大きなため息をついたキート
「と、まあ言ったところで
カタレフ様のラズへの想いは、
どれほどまで強く重いかを私は存じております。」
「キート!!」
耳と尻尾をピンと立たせるカタレフ
「いいですか!カタレフ様
今は耐え時です。
まずはラズの望むこと、不安な事を考え解消してからが本番です」
「うん!!」
意を決して立ち上がったカタレフはキートに礼を言った
「ありがとう。ラズの傍にいてくれて」
「これも私の仕事です」
胸に手を当て一礼すると、カタレフも同じように礼をして
「優秀な従者に最大の感謝を」
そう告げ、家を後にした。
ーそう、初めてラズに絵本を読んだあの日から
私はイエネオス家の幸せを願うのはもちろんですが、
月日が流れ優先順位は変わってしまいましたね。
ラズが幸せに暮らせること。
それが、私の1番の幸せでございます。




