赤い三角屋根の家
本当の僕は何歳なのだろう、
発見された時、
歯の成長から5歳くらいかと
医師に告げられたと
後からアスプが教えてくれた。
イエネオス家に置いてもらい、11年が過ぎた。
「今日まで、本当にお世話になりました」
今日僕は、家を出る。
花や木々が、咲き乱れ穏やかな風が吹くいい季節。
ブォリーダ学校を卒業し1週間が経った。
明日から目指していたゼテオ研究所へ
研究者見習いとして入職が決まった。
難しいテストも、論文提出も何とか間に合った
1番大きいのは、アスプの件で診てくれた医者が
推薦状を書いてくれたことだと思うけど、
荷馬車に荷物を積み終わり、後は僕が乗るだけの状態で
皆が馬車前に来てくれた。
「体に気を付けてね、いつでも帰ってくるのよ」
アスプに抱きしめられて、僕もかえす。
「寂しくなるが、ラズならできると信じているよ」
マブロにも抱きしめられて
「はい、ありがとうございます。」
ロスカは耳を下げて、悲しそうにしていたが
「週末は夕食食べに帰るから」
僕が言うと、耳を立て
「絶対だからな!!」
と、ちょっと拗ねた顔して抱きしめてくれた。
「ラズ、これ」
後ろにいたカタレフが、綺麗な花束を持っていた
「わあ綺麗、この花って」
あの丘の青い花だ、その中に黄色、白、黒の花も少し交じっていた。
皆の瞳や毛並みの色だ。
「必ず、週末は僕が迎えに行くから、ご飯食べようね」
「うん。約束!カータありがとう」
最後に優しく抱きしめられて、僕も大きな背中に腕を回した。
「さて、行きますよ」
僕の後ろにいたキートが馬車のドアを開けた。
「キート…」
僕はこれまで、たくさんの事をキートから学んだ。
この世界のマナー、政治、暗黙のルール、
本当に感謝してもしきれない。
僕が感傷に浸っていると
ちょっとキートは照れ笑いを浮かべ
意地悪な顔をしながら
「私は、ラズと一緒ですよ」
「え?」
キートの言葉に驚いて
こぼれそうだった涙が引っ込んだ。
「あれ?言ってなかったかしら?」
頬に手を置き首を傾げるアスプ
「住む部屋決めたときに気付かなかったのか?」
呆れた声でロスカが言う
そういえば、家を決める際、
心配だからと、家族全員が一緒にきて、
街がざわついて大変だった。
そのことに気を取られ
「ここからですと、研究所からも近く
自宅からも馬車でそうかかりませんね」
キートが声をかけてきて、
「え、ここ?ここって…別荘みたいじゃない?」
この世界だってアパートのような作りの建物が無いわけじゃない。
大きな一軒家で、2階が違う家族が住んでいたりする。
てっきり僕は、そういうところに住むとばかり思っていた。
だが、今目の前に立っているのは
そりゃ、イエネオス家の10分の1くらいの大きさだと思うけど
それでもこれは、山奥に立っている別荘のような一軒家だ。
赤い三角屋根の木とレンガでできている可愛い家だ。
中に入ると、暖炉があり
1階に生活スペース、2階には3部屋もあり
その中の1部屋が小部屋で、ここを薬草や本棚を入れて
調合できる部屋にしよう。
考えていると、ワクワクしてきた。
「ちょっと狭いが…距離はちょうどいいな」
マブロやカタレフ達は階段を上がりながら
頭をぶつけそうになっている。
「充分広いですよ、僕は身長そんなにありませんし」
僕は175㎝だ、180は欲しかったなあと思いつつ
2mちょっとある3人は、文句を言っていた。
「キッチンも使いやすそうよ」
「確かに、収納量がありますね」
そうアスプとキートがキッチンで話していたのを思い出した。
ーそういえば、部屋数も多いし、
キートはやけに収納スペースと商店街の種類を吟味していたな
「イエネオス家の家族が旅立つのだ、
優秀な執事をつけるのは当然だろう
本来は通いで3人ほど、更につける予定だったが、
キートが、ラズが嫌がるだろうというから
キートのみに任せることを決めた」
マブロは少し不服そうに言う。
ーな、なんて過保護で手厚いんだ。
寂しい気持ち100%がキートがいると分かると
こんなにも安心感が違うんだと、胸を撫でおろした。
「キート、ありがとう。本当に嬉しい」
キートは右手を胸に当て
「ラズのお世話は私が一番完璧にできると自負しております」
軽くお辞儀をするキートの顔は誇らしげだ。
「ふふ、そうだね。」
僕はキートと一緒に新しい家へ向かう馬車に乗った




