強い光
その日からずっと痛みと戦っているラズの横にいた。
でも、うなされる度に名前を呼ぶのは
「ま、ぶろ、さ、ま」
僕の名前は呼んでくれないの?
ラズの中で僕の存在は大きくないの?
今、傍にいるのは僕だよ、カタレフだよ。
目を覚ましたラズが優しく撫でてくれて
ほっとした。その青い瞳は僕を捕らえていたから。
でも、僕はラズに頭を撫でられる。
ラズは父様に頭を撫でられる。
僕が手を伸ばして頭を撫でても、同じように笑わない。
「どうしたの?カータ」
しゃがんで首を傾げるラズに僕は泣きたくなったんだ。
朝着替えをしているラズの部屋に入った時
見えた背中の大きな傷。
「2人を守れた勇敢な証だ」
エヘンと自慢げに言ってくれた背中は大きくて広い。
それじゃだめだ。
父様のように強い狼にならなくちゃ。
先生も言っていた。
獣人は人間よりも強い身体能力を持っている。
だからこそ、守ってあげる存在だと。
大切な人を守れる力がない僕は
ラズの瞳に映らない。
早く、強い狼になるんだ。
嫌いな剣術も人一倍練習した。
「ロスカ、相手して」
「え~ま~た~疲れるから嫌だ」
「しょうがないだろ、もう僕の相手できるの、ロスカしかいないんだから」
「カータ、そんなに強くなってどうすんだ?」
「…大切な人を守るため」
その言葉に、ロスカもきっとラズの背中の傷が浮かんだに違いない。
その日から文句言わず、練習に付き合ってくれた。
懸命に追いつこうとしても、母様の件で
ラズはお部屋に籠って勉強する時間が増えた。
また離されていく気がして
「ラズ、一緒に本屋に行かない?」
「うん、ちょうどほしい本があったんだ、行くよ」
口実をつくって一緒の時間をつくった。
「出掛けるのか?」
「おかえりなさいませ、マブロ様」
「おかえりなさいませ、…父様」
「2人で本屋にいってきます」
「そうか、暗くならなうちに帰ってきなさい」
「はい」
父様とラズが話しているのを見るのは嫌いだ。
揺れる青い瞳が、嫌いだ。
「僕の瞳の色ってさ…」
本屋でぽつりと言った言葉をラズは拾い上げた。
「お月様のような真ん丸で優しい金色だよね」
「え?」
「ん?」
不思議そうに僕を見るその青い瞳は僕を捕らえて離さない
でも僕の瞳は?ラズを捕らえてる?
「父様と同じでしょ?」
僕が見つめると、ラズは、ふふと笑って
「そうだね、でもカータの方が優しい光みたいだよ」
ああ、どうして僕の心はずっとラズに向いているのに
一緒だよって言わない。
僕は僕だと言ってくれるラズがどうしても愛おしい。
「…もっと強くならないと」
いつか、父様より強い光を放って、ラズを捕らえるんだ。




