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黄金に輝く瞳  作者: 茜雫桂香


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12/34

黄金に輝く強い眼差


僕が13歳になった秋


紅葉が綺麗で、街も豊作で豊かな時期



アスプが病気にかかった。


最初は流行り風邪かと思われていたが、薬を飲んでも治らず

医師は心臓病だと口にした。


僕は前世の記憶を頼りにアスプに体を診せてほしいと頼み。

診せてもらったが拡張型心筋症かもしれないと汗がとまらなかった。


この世界に回復魔法はない。

かといって前世より最新技術があるわけではない。

どちらかというと遅れていると思う。


薬草を煎じて飲ませるか、

体を切って腫瘍を取り除く手術くらいしか、治療法はない。


心臓病だと、それはもう残りわずかな命という余命宣告と同意だ。



「アスプ…」


泣いているマブロをドア越しに感じながら、

僕はただ立ち尽くすことしか、できなかった。


また、僕は家族を失うのか…




日に日に弱っていくアスプを見ているのが辛かった。


「ラズ、こっちへおいで」


おかゆをつくってドアの前でノックをためらっていると

中から声をかけられた。


ゆっくり開けると微笑むアスプがいた。


「もう、せっかくラズが用意してくれた料理が冷めちゃうでしょ」


そう手招きするアスプに僕は近づき、スプーンでよそって口元へ運んだ。

美味しい、美味しいと笑うアスプに涙を堪えるのがやっとで。


「よかったです。美味しくできて」


そう言うと、アスプは僕の手に自分の手を重ねた。


「ラズ…ラズはきっと家族の別れが初めてではないのよね?」


「え?」


アスプは、薄々あの僕が大事にしている、白い箱の中身を知っているようだった。


「誰にも触らせない。

私達ももちろん。

前にロスカが興味本位で手を伸ばした時の

怒ったラズの顔を初めてみたわ」


「ーあの箱は…」


僕はアスプにだけ、前世の記憶と、ここにいる経緯を話した。


「それは辛かったわね、ラズ、こっちへおいで」


僕を拾った日から、

ずっと僕の出生を調べたが何も出てこなかったこと

マブロと不思議に思っていたが


「きっと神様が私達に与えてくれた幸せだと受け止めたの」


とアスプが教えてくれた。

ベッドに座り上半身をアスプに包み込まれる。


「僕はアスプ様達に拾われて、今日まで幸せな日々を送られました」


頬伝う涙を、優しい毛並みが吸い取って弾いてくれる。


「ラズ、貴方は大切な家族よ。いつまでも」


そうずっとアスプは頭を撫でてくれた。






「母様…」


不安な顔をするカタレフを抱きしめた。

すると近くにいたロスカも僕の足元に歩みよってきた。

僕は2人を抱きしめ。


「たくさん思い出をつくろう」


その言葉に2人は大きく頷き、たくさんアスプの寝室を訪ねた。



マブロは毎日毎日、資料を漁っていた。

使いをよこして、国一番の医者にも診せたり

何か治す方法はないか、探しているのだと思う。


コンコン


「ラズでございます」


ー返答がない


僕はゆっくりマブロの部屋を開けた。


そこには初対面のときの、

あの迫力のある強い大きな狼はいない。


少し痩せたか、最近は眠れていないのか毛並みも整っていない。


何か分厚い本を読んでいた。


「あの…」


「すまん、後にしてくれないか」


その言葉は僕をラズだと認識していない声だと思った。

僕は手に力を込めた。


「あの!!!」


大きな声を出して驚いたマブロが顔を上げた。


「…ラズ」


「分かります。今アスプ様の治療法を探していること…わかっています。

しかし!!!今は!!!」


話していて涙が頬を伝う。


「アスプ様のお傍にいることが、なにより大切かと思います。」


「…ラズ、心配してくれてありがたいが、今はちりょー」


「また!!会いたいと思ったり、抱きしめたいたいと思う。

その気持ちを少しでも 


今満たさなければ


後から後悔で溢れてしまう


それでは、遅いのです。」


ぎゅと掴んだ服の裾が破れそうだ。



ージロウ、ジロウが教えてくれたね。

僕みたいな後悔をマブロにはさせたくない。


マブロは立ち上がり僕に膝をついて

頬に手を置いた

僕の瞳を捕らえると


「…穏やかな海、晴れた空のような青色……綺麗な瞳だな、ラズ」


真っ黒な毛並みの狼

黄金に輝く強い眼差しは


穏やかな海、晴れた空のような青色の瞳に吸い込まれ

一粒の涙を流した。



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