短命の少女は創作の神に挑む
神に挑む少女の話。
「こんちには、寒いね。調子はどうかな」
僕は微笑んで聞いてみる。
反応はない。
個室。
今日も少女は創作の神に挑んでいる。
尊敬する、本当に。
僕は静かに椅子に座る。
よし、ミカンをむこう。
「ミカンあるからね」
「うん」
返事は、返ってくる。
手は止まらないけど。
ふう、1個むけた。これは、なかなか上手いんじゃないのか? 見てくれよ、この皮。切れてるのがない。綺麗だ。
そして、2個目に僕は取りかかる。
今日持ってきたミカンは、5個。
全部綺麗にむいちゃうぞー。
「ふう」
「あ、休憩する?」
「いたんだ、君」
「うん、いました。ミカン5個、綺麗にむけました、見てくださいっ」
じゃじゃーん、と。
「皮も見て、皮」
「いや、こんなに食べれないし」
1個、食べてくれる。
「美味しい」
笑顔で褒める少女。
「よかった」
僕も笑顔で返す。
そして、休憩は終わる。
再び、執筆がはじまる。
残りは、僕が食べよう。
「うん、美味しい」
僕も、この人も、中学3年生。
けど、医者によると、高校進学は難しいかもしれないらしい。
短命。
小さい頃から、この少女は言っていた。
「なんとなくだけど、私はすぐに死ぬかもしれない」
そして、今年の春、入院すると、執筆をはじめた。
創作の神への挑戦。
最高の作品を遺し、死ぬ。
自分は死んでも、名前は残る。
僕は、この人にとっては、どうでもいい奴かもしれない。
けど、それでいい。
本気で神に挑むこの人を応援できれば、それでいいんだ。
恋は、叶わないんだろうなあ。
読んで頂き、ありがとうございました。




