37 悩んでます
「係長、いい呑みっぷりですね。お酒好きなんですか?」
「好きだねー。普段は身体のことを考えて少なめだけど、呑むって決めた日はかなり呑むよ。」
「今日がその日だったんですね。プライベートの時間にすいません。」
「大丈夫よ。呑みに行くなら店の方がよかったのにごめんね。どうしても今日は家でビールの気分だったの。今度は店で奢るわ。」
呑み食いしながら軽く雑談したあと、相談内容を話しはじめる。たしか、探索者関係って言ってたな。
「今日、係長が退職を考えているって聞いたんですけど、本当ですか?」
「本当よ。引き継ぎとかやる事やったら退職する予定になってるわ。」
「マジッスかぁ。よく決心しましたね。」
「私の場合、両立は出来るけど身体がしんどいから、楽な方を選んだのよ。やっぱり、平日のダンジョンを知っちゃうとね、土日はちょっと…。」
「ですよねー。俺達もどうしようか悩んでて、それを相談したかったんです。」
私はそのうち社内規定の変更があることを伝えた。まだ案を出しているだけだし、それがいつ確定されるかはわからない。すぐに決まることはないだろう。会議の内容で話しても大丈夫なことだけ教えた。
そもそも、会議は今日始まったばかりだ。いろいろ調整したり何なりすれば時間がかかる。決まるまでの間のことも考えないとな。
「いつになるのかわからないのが不安ですねー。あと何ヶ月って区切ってくれれば我慢出来ますけど。」
「だよな。決まらない間は有給を使うか土日に行くかしかないからな。」
「贅沢しなきゃ専業探索者でもやっていけると思うけど…。」
いろいろ心配が尽きないようだ。特に、働けなくなった時のことが不安らしい。ああー、わかるわー。私もその辺めっちゃ調べたもの。
「皆は将来どうしたいかって決めてある? 例えば、何歳くらいで結婚したいとか、子供は何人欲しいとか、家を建てたい、車が欲しい、旅行に行きたいとか。」
「かなり漠然とですけど、一応。」
「俺はないかも。」
「その全てにだいたいでいいから金額をつけるんだよね。結婚式をあげるならいくら、子供の妊娠から出産、育てるためにかかる費用がいくらって。
ザックリと人生設計をたてて、それに対してかかるお金を調べるの。自分が死ぬまでの間分。」
「めっちゃ金かかりそうです。」
「既に憂鬱。」
「それで、その分の金額を稼げるか計算するの。私の場合は怪我をしない、肉体的にしんどくない範囲で稼げる分って条件をつけてね。」
「毎月、普通に生活する分は稼げそうです。」
「そうだね。生活する分は十分稼げると思うよ。ただ、会社と違ってボーナスはないし退職金もない。老後に必要な費用を前もって稼いでおかなくちゃいけないわ。」
「しっかり貯金すればいけなくはない?」
「その辺は個人の人生設計によるけど、不可能ってわけじゃないと思うよ。」
「頑張れば大丈夫そうな気がする。」
「ただ、10年20年後はどうなっているのかわからないの。もしかしたらダンジョンが消えるかも。」
「突然出来たから、突然なくなる可能性もあるのか?」
「まあ、それはわからないけど、探索者の制度が変わるかもしれないし、買取が出来なくなるかもしれないし。」
「なくはない話ですね。今も探索者の制度を調整しているところみたいですし。」
「そう。だからトータルで考えて仕事を続けるか専業になるか決めればいいと思うよ。最悪、失敗してもまだ若いんだからやり直せるしね。」
いろいろ話したけど、要はやりたいようにやればいいんじゃないかな。自分の人生なんだし、楽しい方を選べばいいよ。私は楽しくてラクな方を選んだからね。
「そうですね。僕はもう少し調べてみます。まあ、気持ち的には退職する方に向いてますけど。」
「いいんじゃない。ダメだったらやり直せばいいし。死なない限り何とかなるよ。それだけは注意してね。」
まだ決めたわけじゃないけど、とりあえずは大丈夫そうかな。
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