21 トラブル
同じ課の皆には事情を説明して仕事を振り分け、上司に引き継ぐ。怪我しないでねと心配されつつ、何とか木曜日の業務を終えた。
探索者4人組に明日頑張ってくださいねぇ、と声をかけられた。
「ごめんね、先に有給使っちゃって。皆が有給の時はフォローするから言ってね。」
「大丈夫です。任せてください。」
「平日のダンジョン楽しんできてください。」
月曜日に相談されて以降、4人との会話が増えた。今までの会話は仕事関係の話しばかりだったが、相談後はプライベートな事も話すようになり、息子がいたらこんな感じかななんて考えていた。
そのせいか、木本さんがやたら突っかかってくる。自分がチヤホヤされないのが許せないんだろう。私は母親目線なのよ。貴方の女目線とは違うの、とは思うが、彼女にとっては関係ないのだろう。
今もすごい顔で睨まれている。あ、中原君に突撃した。
「うわぁ~、職場であの顔はやめて欲しいわ。」
「ふふっ、思いっきり見ちゃいました。」
伊東君とコソコソ喋る。バッチリ見ちゃったらしい。木本さんの本命は中原君なんだろう。男性が相手だと大概媚びてるが、中原君相手だと5割増しになる。
「男から見ても、ああいった感じの子はムリだなって思うんですよ。少なくとも俺はムリです、信用出来ない。」
「女から見てもないよ。女が嫌いな女の典型じゃない?」
「中原さん、モテるけど可哀想です。」
「んふふっ、そうだね。」
巻き込まれないようにこっそりと離れ、可哀想な中原君を2人で見ていた。すまんね。私が近づくとさらに鬱陶しくなるからさ。離れて見守っているよ。
さて、このまま帰ろうかと思い荷物を取りに席まで戻る。やる事はやったし大丈夫だろう。お疲れ様でした~と声をかけようとしたら、微妙な顔した中原君が木本さんをくっつけたままコチラにやって来た。おいっ、自分で何とかしろっ!
「お疲れ様です、少しいいですか?」
「…もう帰るところなんだけど…。」
「少しでいいんで。」
「……いいよ。会議室に行こうか。」
「ありがとうございます。木本さん、宇佐見係長と引き継ぎしたい事があるので今日はすいません。」
「えぇ〜。なんでですかぁ~。ご飯行きましょう〜。」
「木本さん、時間もないし今日は諦めてくれる? 私も忙しいから早く会議室に行きたいの。」
「係長が忙しいのは知りませんよぉ~。明日も休むなんて迷惑ですぅ。」
「他の社員には迷惑かけるけど、貴方にはかけてないわ。貴方の仕事、増えてないでしょ。」
「でも〜、」
「これ以上話す事はないわ。忙しいって言いましたよね。中原君、行きましょう。」
「あっ、ちょっとぉ~。」
早歩きで会議室に到着。中に入ってこようとする木本さんをなんとか阻止し鍵をかける。
「…係長、すいません。」
「大丈夫。聞き耳立ててそうだから、少し奥に行こう。」
伊東君とコソコソ見守っていた罰が当たったのか、ガッツリ巻き込まれてしまった。いや、困ってる部下をフォローするのは上司の仕事だが、出来ることと出来ないことがあるわけで…。
「マジで助かりました。木本さん、話しが通じなくて。帰るところだったのにすいません。」
「いいよ。中原君のこと見捨てて帰ろうとしてたから。」
「伊東とクスクス笑ってましたよね。」
「見てた? 木本さんの顔がすごくて笑っちゃったのよ。伊東君もバッチリ見ちゃって。」
「どんな顔してましたか?」
「この泥棒猫っって叫ぶ寸前の顔。」
「うわぁ~。」
会議室の外にいる伊東君に連絡を取り、木本さんの状態を確認してもらう。中原君には木本さんが離れた瞬間にダッシュで逃げてもらうことにした。
扉の前で出待ちをする木本さん。そう簡単には動かなそうなので直接退かすことに。
「私が木本さんを連れて離れるから、その隙に帰りなさい。ダッシュで。多分、そんなに時間稼げないから。」
「わかりました。お願いします。」
部下のためにもう少し頑張りますか。
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