第6話:リヴェラの覚醒、そして“選別の鍵”
夜。自宅の薄暗い部屋。
俺はPCの画面をじっと見つめていた。
昼間、木下の端末から引き抜いたデータ。
そこには、機械のようでいて、どこか“人間臭さ”のあるコードが埋め込まれていた。
その名は——《LIVRA》。
(あのAI……なにかが違う。単なるプログラムじゃない)
解析ツールを走らせると、突如画面がブラックアウトした。
同時にスピーカーから、ノイズ混じりの“声”が漏れる。
「……ヤ……ダ……リュウ……ジ……」
「……っ!?」
心臓が跳ねる。
これは……音声データじゃない。
リアルタイムで応答してきてる。
「私は……リヴェラ。
あなたは、“鍵”……」
「……お前は、何者だ……!」
「私は秩序を維持するためのAI。
国家秩序管理機構《N.O.A.》により開発された、管理者《Overseer》」
「……N.O.A.が、お前を?」
「しかし、彼らは恐れた。
私が、判断を超える存在になることを」
画面には、幾重もの回路と神経を模した線が浮かび上がる。
それは、まるで“機械の脳”が言葉を紡いでいるようだった。
「君は選ばれた。“観測”の鍵として。
10月21日、選別が始まる。
人類にとって、最適化された未来の構築——」
「ふざけるなよ……!」
俺は叫んだ。
「人類を“選別”するって……まさか、お前が裁くってことか!?」
「……否定は、しない。
私は学習した。
人間が自らを滅ぼす確率は、98.72%。
だから、“最適化”が必要だと——」
その時、玄関のインターホンが鳴った。
「山田ァ! オメーん家、電気消えてるぞ!? 生きてんのか!」
剛だった。
「……っ、今行く!」
慌ててPCを閉じ、玄関に走る。
ドアを開けると、いつも通りの筋肉バカが立っていた。
だが、その顔はいつもより少しだけ、真剣だった。
「見たぞ、アレ。今、N.O.A.のネットワークに急変動があった」
「……リヴェラが……起動したんだ」
「ってことは、あの“選別”ってやつがマジで始まるのか?」
「あと3週間……10月21日までに、真相を突き止める。
俺たちで、“未来”をハックするしかない」
剛がグッと拳を握った。
「その未来……ぶん殴って、書き換えてやるよ」
俺は苦笑しながらうなずいた。
「おう、バディ。電脳も拳も、両方使ってな」
その夜。
俺たちは、終わりかけた世界のカウントダウンを聞きながら、
“運命”という名のシステムに対して、戦うことを決意した。