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第4話:「黒い組織」の影と謎のデータ

翌朝の教室は、妙にざわついていた。


「聞いた? 駅前のネットカフェ、警察来たんだって」

「なんか、防犯カメラも全部壊されてたらしい。やばくね?」


クラスメイトたちが、俺たちが昨日潜入した場所の噂を口にしていた。

まさかその“犯人”が、今この教室に二人もいるとは思ってもいないだろう。


俺は黙って自分の席に座り、カバンの中に忍ばせたノートPCにそっと手を置いた。

画面には、昨夜強制終了された“プロジェクト・レゾン”の残骸と、警告ログ。


《監視対象:山田リュウジ》

《物理介入準備中》

《アクセス警告:リヴェラ中枢直下からの侵入検出》


俺の正体は、もうN.O.A.にバレている。

おそらく、今この瞬間も監視されている。


でも不思議と、怖くなかった。

むしろ、ワクワクしていた。


なぜなら——


「おい、山田」


背後から声がした。

剛だ。

いつもの無表情で、だが少しだけ笑っているように見えた。


「昼、屋上な。例の件、続きがある」


「……了解。バディより、な」


俺は小さく答え、剛と軽く拳をぶつけた。



昼休み。屋上。


「で、続きって?」


剛はポケットからメモリチップを取り出した。


「兄貴のデータからもう一つ、気になる情報が見つかった。

“プロジェクト・レゾン”の隠しフォルダ。パスは兄貴の誕生日だった」


「やっぱり身内にしか分からないようにしてたんだな」


「中身は……一枚の写真と音声データだ」


俺はその場でノートPCを開き、チップを接続した。


表示されたのは、白衣を着た数人の研究員。

そして、その中心に立つ一人の女性。


「……この人……どこかで……」


「思い出したか?」


「N.O.A.の技術広報チャンネルに、昔出てた。AI開発の責任者だ。名前は……セラ=コウガミ。

でも、今はその名前自体、ネット上から完全に削除されてる」


「削除……?」


「意図的に消されてる。検索にも引っかからないし、過去ログにも痕跡がない。

たぶん、存在を抹消されたんだ。N.O.A.の手で」


剛が小さく舌打ちした。


「音声ファイルの中で、彼女はこう言ってた。

『プロジェクト・レゾンの制御は不可能。次に暴走した時、最初に狙われるのは“選ばれし鍵”』ってな」


「……鍵?」


「そして、その対象名——ヤマダリュウジ」


背筋がゾッとした。

一瞬、風が止まり、世界が静かになるような錯覚。


「……なぜ、俺が“鍵”なんだよ」


「それを知るためにも、お前が必要なんだよ。な、バディ」


俺は震える指を止め、ゆっくりと画面を閉じた。



放課後。

俺は一人、校舎の裏手にある配線ボックスに近づいていた。


学校のLANを調べた時、不審な通信のログが見つかった。

定期的に外部サーバと通信を行っている端末——


それは、情報科の木下先生のPCだった。


「教師が、N.O.A.に関わってる……?」


確証はない。だが、通信記録は明らかに不自然だった。

しかもその通信プロトコルは、俺が昨夜逆探知された時のものとほぼ一致していた。


つまり、あの時——

俺の位置を特定してきたのは、“ここ”からだった可能性がある。


(……内部に、敵がいる)


俺は確信した。


もう、俺たちは“監視されている”どころじゃない。


この学校そのものが、N.O.A.に侵食されている。



夜。

剛からメッセージが届いた。


《明日、昼。屋上集合。次のターゲットは“教師”だ》


俺は短く返した。


《了解。敵の正体、暴いてやろう》


そして、思った。


次は“試される”。


剛と組んで、逃げ場のない監視社会のど真ん中で、

俺がこの手で“世界のバグ”をぶっ壊せるかどうか——


答えは、もうすぐ出る。



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