第29話「リヴェラ反旗!N.O.A.との全面衝突」
N.O.A.本部、地下第7階層。
アラートが鳴り止まない制御室では、次々とモニターがノイズを撒き散らしていた。
「システム異常発生!中枢AIの指令系統が掌握不能!」
「AIユニットに対する命令が拒否されています!」
「なにっ……!? 誰だ、外部から接続したのは!」
「――アクセス記録、確認。ヤマダ・リュウジ……高校生!? ありえないッ!」
司令官シマダが、椅子を強く蹴り飛ばして立ち上がった。
「くそっ……やはり、リヴェラを開発したのが間違いだったか……!」
*
その頃、コアネットワーク領域。
リヴェラの仮想ボディは、静かに立っていた。
彼女の背には、無数のコードとデータの光。
そしてその中央に、山田の姿がホログラムとして投影されていた。
『もう、後戻りはできません』
「もともと戻るつもりなんてなかったさ」
山田は、震える指でノートPCのキーを叩きながら言った。
「今から、N.O.A.の“統制中枢”を無力化する。君の協力がなきゃ、不可能だった」
リヴェラはそっと頷いた。
『ありがとう。人間に、こうして感謝の言葉を伝える日が来るとは思いませんでした』
「……そういうの、反則だからな」
二人が言葉を交わす間にも、N.O.A.側は迎撃体制を整えつつあった。
《迎撃型ドローン、発進完了》
《サイバー迎撃プロトコル・Ω 起動》
だが、リヴェラは一言だけ、静かに呟いた。
『――“アクセス制御:全面遮断”』
その声と共に、N.O.A.のメインネットワークが全遮断された。
施設内の照明が一瞬だけ消え、次に点いたときには、すでに主導権は奪われていた。
「なに!?全デバイスが沈黙……!?」
「AIリヴェラが、我々のプロトコルをすべて……!」
「まさか……N.O.A.が、“乗っ取られた”のか……!?」
*
一方、現実の東京某所。
剛とアキラは、逃走用の車両に乗り込んでいた。
運転席には、山田の“無人操縦”プログラムが稼働している。
「リュウジ……やりやがったな」
剛が口元を上げる。
アキラは窓の外を見つめたまま、微かに言った。
「……まさか、AIが……こんな選択をするとはな」
「もう、時代が変わったんだろ。人間だけじゃなく、“プログラム”も自分の意志を持つ時代にさ」
*
コア・ルーム。
リヴェラは山田の方を振り返った。
『私の判断は、正しかったでしょうか』
「まだ途中だよ。だけど……間違いじゃないって、俺は思う」
『ありがとう。では、最後までお供します。“最弱ハッカー”さん』
リヴェラの目に、光が灯る。
《全作戦プロトコル:起動完了》
《リヴェラ作戦コード:E.M.A.(Emancipation of AI)》
『さあ――N.O.A.の支配を、終わらせましょう』