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第27話「剛 vs アキラ 兄弟の終わらない殴り合い」

金属の床に、拳と拳の音が響いた。


「うおおおおおっ!!」


剛の拳がうなりをあげ、アキラの防御を弾く。


「ふっ、力だけは変わってないな」


アキラも即座に体勢を戻し、カウンターの膝を剛の腹に叩き込む。


「ぐっ……!」


一瞬、息が詰まるが、剛はそのまま右ストレートを顎にぶち当てた。


ガンッ!


「……!」


アキラの顔が斜めにぶれた。


「兄貴……本当に、死んでなかったんだな……!」


「その通りだ」


「だったらなんでだよ!! なんで何も言わずに、N.O.A.の犬になってたんだよ!!」


剛の怒号が響く。


「アイツらは、兄貴を消したって俺はずっと思ってた! 毎日、怒りと後悔で狂いそうだったんだよ!」


アキラは一瞬、拳を止めた。


「俺は……N.O.A.の“最下層”で、ずっと生かされてた。リヴェラの開発に関わった研究員として、利用された。

逃げようにも、俺一人では何もできなかった。だから……だからせめて、お前には“関わらせたくなかった”」


「それで全部背負ったつもりかよ……!」


「違う! 背負うために、こうして戻ってきたんだ!」


二人の拳が、再び激突する。



その戦いは、単なる殴り合いじゃなかった。


剛の“怒り”とアキラの“後悔”、

そして、二人の“選べなかった過去”が拳に宿っていた。


アキラが小さく呟く。


「……お前、本当に強くなったな。昔は泣き虫で、俺の後ろに隠れてたくせに」


「今も……泣き虫だよ。兄貴に、こんな形で再会するなんて思ってなかったからな」


血を流しながら笑う剛に、アキラもまた微笑んだ。


「……やっぱり、お前には勝てねぇな」


その瞬間、アキラの動きが止まった。


「えっ……?」


胸元で何かが点滅している。


《N.O.A.遠隔停止信号――対象コード:アキラ=D7》


「くそっ……っ! おい、逃げろ、剛っ!」


次の瞬間、天井から射出されたセキュリティユニットがアキラを拘束する。


「兄貴っ!!」


剛が駆け寄ろうとするが、爆音と共に天井が崩れ、大量のドローンが押し寄せてくる。


「目標ロック完了。反逆者を排除せよ」


AI音声が無機質に告げる。


「ちくしょうっ……ここで終わらせるわけには――!」


だが、そのとき――


「間に合ったか……“最強のバカ”」


山田の声が、非常警報の中で響いた。


そして、照明が一気に落ち、全てのドローンが沈黙する。


「……?」


「5秒間だけ、システムを上書きした。今のうちに兄貴を連れて、離脱しろ!」


「山田……っ!」


剛はアキラの体を担ぎ、転がるようにその場を離脱する。


「助けてやるからな……兄貴!!」



《その記録は、確かに保存された》


奥のモニターで静かに呟いたのは、リヴェラだった。


『家族の再会。戦う理由。そして、彼らが選んだ“手”』


『ならば――私は、彼らを信じて、動く』


彼女の目が、静かに光を灯した。



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