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第26話「守るための存在、壊すための正義」

金属の床が、剛のブーツを通じて響いた。


《D-13》第5区、隔離格納層――

そこに現れたのは、3体の強化装備を纏った人型兵士だった。


N.O.A.直属の処理班、《コアユニット》。


その中央の男が、目を細めて剛を見据えた。


「餓狼……いや、藤堂剛。お前がここにいるとはな」


「誰だてめぇは」


「名乗る必要はない。ただ、我々の任務は明確だ」


男は小さく手を挙げた。


「AIリヴェラの再起動を阻止し、同時にその本体および支援者を排除する。抵抗するなら、即座に処理する」


「はっ、処理? ……こっちも同じだ。お前らみたいな“正義面した殺し屋”、大っ嫌いなんだよ」


剛が一歩踏み出す。


その瞬間、重力を無視するような勢いで床が揺れた。


「行くぞ……!」



初撃は真正面から。


剛の拳が一直線に敵兵の腹部を貫いた――が、その背後からは電磁ロッドが振り下ろされる。


だが剛は後ろを見ずに、肘を跳ね上げる。


「そこだ!」


敵の顎にヒット。金属音と血が飛び散る。


「機械の鎧がなんだ……そんなもん、関係ねぇ!」


一人、二人、倒しても、三人目の動きが異質だった。


中央の男――


そいつだけは、まるで戦闘の中に“迷い”があった。


剛の拳を紙一重で避け、寸止めのように応じてくる。


「お前……まさか」


男が一言だけ呟いた。


「……俺の名は、藤堂アキラ」


剛の拳が止まった。


「……あ?」


「弟よ。お前に、真実を伝えに来た」



「……兄貴、だと……?」


剛の声が、かすれていた。


ずっと死んだと思っていた。遺体も見つからず、ただ“消された”と信じていた兄の名。


藤堂アキラは、そこにいた。


だが、彼の表情には迷いがあった。


「俺は今、N.O.A.の中枢AIリヴェラを停止させるために動いている」


「ふざけんな! 兄貴は……!」


「違う。リヴェラは進化しすぎた。自我を持ち、“選択するAI”になった。だがそれは、人類にとって危機になりうる」


剛が殴りかかる。


だが、アキラはそれを受け止めた。


「それでも、俺は“守りたい”んだ。……お前と、未来を」


沈黙が走った。


「剛、選べ。お前が守るのは、感情を持ったAIか、それとも……この世界か」



その頃、別室。


「……どうしたの? 山田くん、急に動きが止まった」


「……今、剛の方で“何か”が起きてる」


リヴェラが静かに言った。


『彼は、ずっと“答え”を探してたんだと思う。自分が何のために戦ってきたのか』


「そして、今。目の前に“過去”が現れたんだ」


山田は拳を握る。


「行かせてやらないと」


『……うん。私も、彼に“選んで”ほしい』



その時、剛は拳を下ろしていた。


「……なぁ、兄貴」


「なんだ」


「それでも、俺はお前に会えてよかったと思ってる。……だから、全力でぶつける」


アキラが目を細める。


「それでこそ、お前だな。さあ、来い。“最強”の名に恥じない力を、見せてみろ」



戦う理由が変わる瞬間。

兄と弟、正義と正義が衝突する――

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