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第1話:餓狼、現る

放課後の屋上は、いつも通り静かだった。

クラスの誰も来ないこの場所は、俺にとって唯一の“セーフゾーン”。

電波の通りもいいし、見下ろす景色も悪くない。

何より、誰にも見られずに“作業”ができる。


今日もノートPCを開いて、こっそり裏掲示板にアクセスする。

セキュリティの抜け穴、最新のクラッキング情報、そして——


「……あ?」


屋上の扉がきしんだ音とともに開いた。


現れたのは、背中に学ランを羽織ったガタイの良い男。

短髪、鋭い目つき、そして拳に巻かれたテーピング。


……間違いない。

藤堂剛——あの“餓狼”だった。


「お前、山田隆司だよな」


声が低い。硬い。まるで拳が喋っているような威圧感。


俺はとっさにPCの画面を閉じ、少し身を引いた。

なんでこいつが、よりにもよってこんな場所に。


「ちょっと話がある」


「……俺に?」


頷く剛。

そして、ポケットから1枚のプリントを取り出して差し出してきた。


「これ、見覚えあるか?」


……それは、俺が昨夜ハッキングした“某機密サイト”のアクセスログだった。

IPアドレス、コードの書き換え履歴、解析ログ。

何より、自分しか知らないはずの記録が、ここに“証拠”として晒されている。


「な、なんでこれを……」


「あるルートから手に入れた。お前の技術、俺が欲しい」


「……は?」


話がまったく読めない。

なぜ喧嘩しか能がない不良が、俺のハッキング技術に興味を持つ?

何がどうなって、そんな展開になる?


「俺、最近“ある組織”に狙われててな。どうやらその組織、お前の動きも追ってる。つまり、もうお前も“巻き込まれてる”ってことだ」


「ちょ、ちょっと待て。俺、ただのオタクだぞ!?」


「いや、お前は“武器”を持ってる。俺には拳しかないけど、お前にはコードがある。だったらタッグを組めばいい。殴っても壊せない壁を、お前が壊せ」


……意味がわからない。

でも、直感だけは騒いでいた。


この男——本気だ。



その時だった。

屋上の柵を乗り越えて、黒ずくめの集団が現れた。


3人。全員が黒いマスクをつけ、無線機を装備している。

そのうちの一人が小型銃のようなものを構えた。


「目標確認。ハッカー・ヤマダ、排除対象に指定」


「チッ、早かったな……!」


剛が咄嗟に前に出た。

そのまま鉄パイプを握って構える。


「動け山田! 俺が抑える、お前は“こっち側”の手段で応戦しろ!」


「こ、こっち側って……!」


「ネットにいるだろ? お前の“戦場”が!」


俺は迷っていた。

現実なんかより、二次元とコードの世界のほうがずっと楽だったのに。


でも、このままじゃ——


殺される。


俺はノートPCを開き、地下のネットワークにアクセスする。

指が震えながらも、正確にキーを打ち込んでいく。


「接続完了。妨害信号……入った」


瞬間、相手の通信機からノイズが走った。


「っ!? ジャミングされた!?」


「ナイスだ山田ァァ!!」


剛が笑った。

殴った。

一人を吹っ飛ばした。


PCと拳。

バラバラな世界の武器が、いま確かに一つになった。


「やるじゃねぇか、ハッカー!」


「お前こそ、化け物かよ……!」


こうして俺は、“最強のバカ”とバディになった。

予想外すぎる世界の終わりに向けて——

最弱と最強が動き出す。



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