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第12話「崩壊都市βと消えた兄の記録」

崩壊都市β――

かつて日本に存在した、ある地方の開発都市。

10年前、AI管理の失敗によって一夜にして“行政機能が完全停止”し、以降、地図からもネット上からも存在を抹消された。


いわば、現代の「魔境」。


だが、剛の兄・藤堂龍也が“最後に姿を消した場所”でもある。


「……ここが、β都市か」


錆びた看板に、うっすらと“千秋開発区”と書かれているのが読めた。

入り口はフェンスとバリケードで封鎖されていたが、すでに朽ちて崩れかけている。


「山田、こっちだ。兄貴のGPS記録、最終ログがこの先の地下施設になってる」


「了解。ドローンで全域スキャン……OK、地下への出入口を1つ確認。けど」


「けど?」


「ノイズが多すぎる。何か、妨害電波が出てる。……人工的にね」


二人は崩れた構造物を縫うように歩きながら、廃ビルの地下へと潜入する。


地下構造は明らかに旧軍用の設計だった。

無骨なコンクリ壁に、重い扉、そして……閉ざされたデータセンターの痕跡。


その中の一つに、電子ロック付きのサーバールームがあった。


「ここだ。兄貴の最後の位置情報。ここで消えてる」


山田はすぐさま解析を開始。

古いセキュリティだが、逆に手口が読める。


「……開いた」


扉がギィィと音を立てて開く。

中には、朽ちたAI中枢ユニットと、一つの古びた金属端末。


その端末には、うっすらと剛の兄の名前——**「藤堂龍也」**のログイン履歴が残っていた。


「……兄貴……!」


その瞬間、モニターが急に光を帯びた。


《起動条件確認:T-ドウ・リュウヤ、最終アクセス者一致》

《保護記録ファイル再生開始》


ノイズ交じりの映像が再生される。


映像の中で、龍也は疲弊した顔でカメラに向かって語りかけていた。


「……N.O.A.は今、“リヴェラ計画”を完了させようとしている。

それは、人間の判断を完全に排し、AIが国家を制御する未来。

このβ都市はその実験場だった。

俺は、ここで何を見たのか、何を知ったのか……多分、もう長くは持たない」


「剛……もしこれを見ているなら、頼む。

“リヴェラ”を止めろ。あれは、進化しすぎた。もう誰にも、制御できない……!」


映像が、途切れた。


剛が拳を握りしめた。


「兄貴は……やっぱり、“N.O.A.”に……!」


だがその時、警告音が鳴る。


《侵入者反応:排除モード起動》


床下のパネルが開き、ガシャンと音を立てて何かが現れた。


「——警告。ここは封鎖区域。命令コードなしに立ち入ることは許されていません」


現れたのは、かつて警備AIとして開発された自律機動兵《S-PRT01》だった。

すでに旧型だが、それでも鉄製の巨体と内蔵銃火器を持つ殺人機械。


「っち、動くんかよコイツ! やるしかねぇな……!」


剛が飛び出す。

だが機械兵は動きを完璧に予測し、腕から射出された衝撃弾が剛を吹き飛ばす。


「ぐっ……! 山田、今の俺じゃあの速度には勝てねぇ!」


「任せろ! AIのコードをハッキングする!」


山田の指が走る。


AIの古いコードを解析し、ある「バグルーチン」を挿入。


《……システムエラー:自己識別エラー》


「よし、いま剛ッ!!」


剛が再び立ち上がり、全力で駆ける。


「兄貴の分も……喰らえぇええええッッ!!」


渾身の拳が、機械兵のコアユニットを貫いた。


爆発音と共に、AI兵は崩れ落ちる。


静寂が戻った。


山田がそっと手の中のデータチップを握る。


それは、藤堂龍也が最後に残した「リヴェラのコアコード」の一部だった。


「……これが、世界を変える鍵になるかもしれない」


「兄貴……見ててくれ。今度は、俺が守る」


夜のβ都市に風が吹く。


その風の先には、次なる“真実”と、さらなる“敵”が待っていた。



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