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【第五章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第五章:装備作り? いいえ、試練のフラグです

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94/112

94:帰還と語られなかったフラグ

 ――荘厳な城門が視界に迫る。

 王都アスガンド。

 戦いを終え、ようやく帰還を果たしたソーマたちは、夕暮れに染まる壮麗な城郭を仰ぎ見ていた。


「ふぅ……やっと、帰ってきたんだな」


 ソーマが小さく呟く。

 その声には安堵が混じりながらも、わずかな緊張が残っていた。

 クリスは瞳を潤ませ、胸元を押さえながら呟く。


「帰って……来られましたね……」


 ジョッシュは大きく息を吸い込み、豪快に笑い飛ばした。


「うおお! 久々の王都だぜ! 風呂と肉が俺を待ってるな!」


 その明るさに、仲間たちの頬が自然と緩む。

 エルーナも小さく笑い、頷いた。


「ジョッシュ……本当にあなたは、変わらないわね」


 ゼルガンは寡黙に歩みを進めるだけだったが、その横顔には、長き戦いを生き延びた者の確かな達成感と、次なる決意が宿っていた。

 ――そして一行は、城内奥深くへと通される。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 重厚な扉が軋む音を立てて開かれ、豪奢な玉座の間が広がる。

 高い天井から吊り下げられた燭台が黄金の光を放ち、大理石の床に光の道を描き出していた。

 その中央、王国アスガンドの王――ウォーガンが、静かにソーマたちを迎えていた。

 威厳に満ちた姿は圧倒的でありながら、どこか柔らかさを孕んでいる。


「ソーマ・フラハ。並びに仲間たちよ――よくぞ帰還した」


 低くも朗々とした声が玉座の間に響き渡る。

 ソーマはすぐに膝をつき、深く頭を垂れた。


「ダンジョン化した鉱山にて、ドワーフの兵士の皆さんの助力を得て、我らは最奥部の異形のゴーレムを討伐し、そのコアを破壊しました。これにより、ダンジョン化は解除され、鉱山は正常に戻っております」


 報告を終えた瞬間、謁見の間に一瞬の沈黙が流れる。

 緊張が空気を張り詰めさせる。

 やがて国王は、ゆっくりと立ち上がった。

 厳めしい表情をしていたその顔が、ふいに和らぐ。


「……まずは、これまでの無礼を詫びよう」

「――え?」


 ソーマが顔を上げる。

 次の瞬間、王はゆっくりと深々と頭を垂れた。

 玉座に座るべき者が――若き冒険者たちに。


「私は愚弟に連れてこられたお前たちを疑い、試し、時に粗野な扱いすらした。だがそれは、すべて杞憂だった。お前たちと……そして、我が弟ゼルガンの働きによって鉱山は救われ、国も救われた。……礼を言わせてくれ」


 その瞬間、ソーマの胸に熱いものが込み上げる。

 自分たちの努力が認められた――ただそれだけのことが、こんなにも心を震わせるとは。

 背後では、クリスとエルーナが目元を押さえていた。

 ジョッシュですら神妙に頭を下げ、ゼルガンはほんの僅かだが視線を逸らしていた。


「……もったいないお言葉です」


 ソーマは必死に感情を押し殺し、ただそう答えた。

 王は頷き、穏やかに告げる。


「アスヴァルから依頼されている魔石の採掘には、なお数日を要する。お前たちはその間、存分に休息するといい。国を救った勇者たちには、休む権利がある」


 ソーマは深く頭を下げる。


「はっ……感謝いたします」


 ――こうして謁見は終わった。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 数日後――


 王都での束の間の休養は、仲間たちの心を癒やした。

 久方ぶりに温かな料理を囲み、安らぎの寝床で休む日々。

 笑い声が戻り、彼らはほんの一時、戦いの重圧を忘れていた。


 やがて、ついに魔石が王城に届けられた。

 帰国の準備が整い始めた頃、ゼルガンがソーマを呼び止める。


「ソーマ。……俺はしばらくこの国に残る」

「……残る?」

「ああ。お前の新しい装備を完成させる。それと、クリスの世界樹の杖もな。ここには腕の立つ鍛冶師も多い。素材も豊富だ。今のうちに仕上げるのが最善だろう」


 ソーマは言葉を失った。

 ゼルガンの存在なくして、今回の旅は決して乗り越えられなかっただろう。

 だが、その決意の強さを前に、彼は頷かざるを得なかった。


「……分かりました。でも……必ず帰ってきてください」


 ゼルガンはわずかに笑みを浮かべる。


「心配するな。一カ月も待たせない」


 そう言って彼は一本の剣を差し出した。

 重厚でありながら、手にした瞬間に驚くほど馴染む剣。


「それと、これを持って行け。仮の剣だが、お前の相棒になるだろう」


 ソーマは両手で受け取り、強く頷く。


「ありがとうございます……!」


 だが、その時。

 ゼルガンの表情がふと硬くなった。


「ソーマ……俺には、まだ語っていない過去がある」

「……え?」

「お前には、知る権利がある。だが――俺の判断だけでは話せない」


 その言葉の重みが、ソーマの心に深く沈んでいく。

 さらに問おうとしたが、ゼルガンは首を横に振った。


「時が来れば分かるさ。それまでは……力を蓄えておけ」


 ソーマは喉が詰まり、何も言えなかった。

 ただ、強く頷くだけだった。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 そして、出発の日。


 魔道列車に乗り込むソーマたちを、ゼルガンと鍛冶師たちが見送る。

 仲間たちはそれぞれ窓辺に立ち、去りゆく光景を胸に焼き付けた。


 窓の外、ゼルガンが無言で手を上げる。

 その姿を見つめながら、ソーマは心に誓った。


 ――必ず、この人に負けない冒険者になる。

 ――そして、いつか彼が語らなかった()()を受け止められる強さを手に入れる。


 汽笛が鳴り響き、列車はゆっくりと動き出す。

 新たな旅立ちが、今、始まった。

 ホント今章はゼルガンさんにソーマも作者も助けられました。

 ソーマ達だけだと苦戦しまくり話を作るのに苦労したと思います。


※作者からのお願い


投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、↓の☆☆☆☆☆から評価頂き作品への応援をよろしくお願い致します!


お手数だと思いますが、ブックマークや感想もいただけると本当に嬉しいです。


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