9:とある受付嬢の想い(現状恋愛に発展させる予定はないがフラグ自体は存在する)
【冒険者ギルド受付嬢:メルマ・メイナ視点】
ソーマさんの連絡先、ついにゲットしました!
ありがとう、カルヴィラさん!
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
思い返せば、私とソーマさんの出会いは学園でしたね。
“ギフト【書記】を活かせる場が欲しい”――そんな思いから入部したギフト研究会。
そこが、二人の物語の始まりでした。
私がソーマさんを気にするようになったきっかけは、趣味のスイーツ巡り。
ある日、ふと立ち寄った店の前に可愛い旗があって、それがきっかけでお気に入りの店が増えました。
『誰がこんな素敵な旗を作っているんだろう?』と不思議に思っていたら――まさかの、あなただったなんて。
あの時は、本当に驚きました。
それからは自然と、あなたを目で追うようになりました。
ギフトの謎を解明しようと、いつも真剣な眼差しで努力するあなた。
私はひとつ年上だし、全力なあなたの邪魔をしたくなくて、あまり積極的には話せなかったけれど――
でも、あなたを見ているだけで元気がもらえたんです。
そして、ギフト研究会の会長になったあなたが言ったあの言葉。
『俺はいつか、自分のギフトの謎を解き明かしてスキルを発動させ、冒険者になる』
その言葉を聞いたとき、私は決めました。
商業ギルドからのお誘いを断って、冒険者ギルドであなたを待とうって。
そして今日、あなたがその約束を果たすためにギルドに来てくれた時――
私は本当に、本当に嬉しかったんです。
本当はあなたの担当になって、導いてあげたかった。
でも、あなたが所属する“勇者の卵”パーティーは私にはまだ荷が重くて、先輩のツィーナさんに担当を譲る形になってしまった。
その時は正直、神様を恨みました。
どうしてあなたと私を引き離すのって。
それでも、私はいつもあなたを見守っていたし、ツィーナさんが不在の時に代理で担当できた時――その時間が永遠に続けばいいのにって、心から思いました。
だから今日、あなたが悲しそうな顔で受付に来た時は……本当に驚いた。
カルヴィラさんの部屋から戻ってきた後、魔導通話機を見つめるあなたの横顔――
夢を諦めかけて、それでも家族に連絡できずに葛藤するその表情を見て……
もう、私、見ていられなかった。
いつも元気をくれたのは、あなた。
だから今度は、私があなたを元気にしてあげる――そう決めたんです。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
ソーマさんと連絡先を交換して、再会の約束を交わした後、私は一時の別れを告げてカルヴィラさんの部屋へ戻った。
「さて、カルヴィラさんの“いい考え”ってやつを聞かせてください。私を残したってことは、私にも関係があるんでしょう?ちなみに――冒険者ギルド職員としてのスカウトだったら、大賛成ですよ?先輩として、お仕事だけでなく、私生活に至るまで手取り足取り指導してあげたいと思っていますし♪」
「私としても、職員として勧誘するのに反対はないけどね。でもソーマ君がそれを望むとは思えない。それよりも――変な想いを秘めてないかい?前から思ってたけど、君がソーマ君を見る目の奥がちょっと怖いんだよねぇ……」
「失礼ですね。これは純愛です。で?私に何をさせるつもりなんですか?」
――まったく、失礼しちゃう。
私はただ、もうチャンスを逃したくないだけなのに。
「まず確認したいのは、メルマが担当している“あの二人”のこと。半年前にパーティーを解散してから、今でも兄妹でコンビを続けているだろう?」
「……“あの二人”って、アーディンさんたちのことですか?」
アーディン兄妹。
かつて組んでいたパーティーを解散し、今は兄妹二人で活動を続けている冒険者。
そういえば、彼らもギフト研究会に所属していた私の後輩だった。
「ソーマさんとも面識がありますし、学園時代は仲が良かったですけど……アーディンさんたちのギフト事情は、カルヴィラさんもご存知のはずでは?」
「もちろん知ってる。だからこそ、だよ。お互い事情を分かっているからこそ、三人でパーティーを組むには悪くない。実力もDランク同士で釣り合っている。――そして、マイナスにマイナスをかければ、案外プラスになるかもしれないと思ってね」
……私のソーマさんを“マイナス”呼ばわりとは、いい度胸してますね?
――まあ、それはさておき。
確かに妙案かもしれない。
アーディンさんのお兄さんも、ソーマさんと同じくギフトの詳細不明。
かろうじてスキルは発動できているけれど、本来の力はまだ見えていない。
妹さんも“あのギフト”持ちという理由で、パーティーに誘われる機会はあっても、その性格と“兄とセット”という扱いがネックになって、過去にパーティーを解散したこともある。
……もし、少しでもソーマさんが冒険者を続けるきっかけになるなら。
確かに、この案は価値がある。
「わかりました。明日、さっそくアーディン兄妹に連絡をとって確認してみます。問題なければ、早めに日程を調整しますね」
「迷惑をかけるが、頼んだよ。将来有望な冒険者たちの芽は、できれば摘みたくないからね」
ギルドマスターの部屋を出ようとした時、大切なことを聞き忘れていたのを思い出した。
「あ、あの――もちろん、ソーマさんの担当は私ってことでいいんですよね?」
「……好きにしたまえ」
「っしゃあーっ!!」
思わず、ガッツポーズが出てしまった。
想いが重い。
書く前にこんな女性設定にはしてなかったが書き始めたらポエムを書いていた。
今後どう影響してくるかは未来の私に丸投げします。
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