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【第五章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第五章:装備作り? いいえ、試練のフラグです

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89:合体するフラグ

 ダンジョン化した鉱山の内部は、終始薄暗い鉱石の光に照らされ、どこか現実味を欠いた迷宮のように広がっていた。

 無機質な石壁が延々と続き、時折、地面に転がる金属片が靴底に音を立てる。


「ふぅ……随分進んできたな」


 ジョッシュが肩で息をしながら、炎を帯びたバットを軽く担ぎ直す。

 しかし、その顔に疲労の色はほとんどない。

 それも当然だった。

 前衛の最強盾――ゼルガンがいるからだ。

 巨大な大盾と大剣を兼ねたその武器は、通路を埋め尽くすゴーレムを粉砕し続け、進軍の道を切り開いていた。


「……やっぱりすごいな」


 ソーマは小さく漏らす。


「そうね。あの人がいると、本当に心強いわ」


 エルーナが軽く笑って応じる。

 だがソーマの胸には、別のざらついた不安がこびりついていた。

 先ほど遭遇したゴーレムの変形――人型から獣型へと姿を変えたあの異様さ。

 あれは偶然の産物ではない。


(……誰かが意図している。進化じゃない、()()だ……)


 胸の奥に冷たい予感が根を張る。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 休憩をはさみながら進んだ一行は、やがて奥から吹き抜ける風を感じた。

 坑道の最奥――そこは他の通路よりも広大で、天井すら見えぬほど高い大広間のような空間だった。

 その中心に――いた。


 小柄な人影。

 十歳にも満たない幼い子供が、背を向けて五体の獣型ゴーレムを弄っている。


「……子供?」


 ソーマが思わず呟く。

 あまりに不釣り合いな光景。

 獰猛な獣の姿をしたゴーレムたちを、まるでおもちゃを整備するように弄ぶ、小さな背中。

 ソーマは一歩前へ出た。


「君は……何をしているんだ?」


 子供がゆっくりと振り向き、無邪気に笑った。


「遊んでるだけだよ」


 場の空気が張り詰める。


「遊び……?」


 クリスが信じられないというように声を漏らす。

 だが次の瞬間、子供は楽しげに叫んだ。


「それじゃ――遊び相手になってよ! いっけぇ、アルファ! ベータ! ガンマ! デルタ! イプシロン!」


 五体の獣型ゴーレムが一斉に赤い光を灯し、獣の咆哮をあげて地を蹴った。


「来るぞッ!」


 ゼルガンが盾を構え、最前線に立つ。

 最初の衝撃が広間を揺らした。

 狼型の巨体が飛びかかり、ゼルガンの大盾と激突。

 火花が散り、床石が砕ける。


「ぬおおおおっ!!」


 ゼルガンの足が石床にめり込み、それでも一歩も退かない。

 熊型が横から突進してくる。


「どけぇっ!」


 ジョッシュが燃え上がるバットを横薙ぎに叩きつけた。

 鈍い轟音、熊型が横転し、石片が飛び散る。

 背後から虎型が跳びかかるが――


「させません!」


 クリスが詠唱を終え、閃光の魔弾を撃ち込む。

 虎型の肩部を貫き、動きが鈍る。

 豹型が低く構えてエルーナへ突撃する。


「来ると思ったわ」


 銃声。

 乾いた轟音と共に鉱石の瞳が弾け飛んだ。

 豹型が悲鳴のような軋みを上げて転倒する。


 獅子型は咆哮を轟かせ、ソーマへ迫る。


「こいつは俺がッ!」


 ソーマは剣を構え、渾身の力で装甲を裂く。

 火花が散り、刃が僅かに食い込む。


 一対一。

 最初はそれぞれが一体を受け持つ形で戦闘が進んでいた。

 だが五体の同時攻撃は圧倒的で、徐々に押され始める。


「ぐっ……ッ!」


 ゼルガンの大盾が何度も叩かれ、火花と破片が飛び散る。


「遊びってレベルじゃねぇだろ、これぇ!」


 ジョッシュが吠え、血管が浮かぶほどバットを振るい続ける。


「数の暴力が……これほどとは……!」


 クリスが必死に防御魔法を重ねる。

 エルーナの銃撃も追いつかない。


「ちっ……次から次へと!」


 ソーマも歯を食いしばった。


(このままじゃジリ貧だ……!)


 仲間たちの息遣い。火花と咆哮と銃声が交錯する中――ソーマは叫んだ。


「全員! 連携を取るんだ! 一対一じゃ押し負ける! 数で来るなら、俺たちも数で当たれ!」

「了解ッ!」

「任せろ!」


 それぞれの動きが変わる。

 ゼルガンが狼型を押し止め、その隙にジョッシュが側面からバットを叩き込む。

 虎型が跳躍する瞬間、クリスが魔法の盾で動きを止め、そこへエルーナが銃弾を撃ち込む。

 ソーマは仲間の援護に合わせて獅子型を押し込み、深く剣を突き立てた。


「――よし、互角に持ち込める!」


 ソーマの目に光が宿る。

 しかし同時に、胸中には冷たい影が過った。


(まずい……これは……この先に、もっと大きな仕掛けが……!)


 子供の頃、日曜の朝に見た戦隊ものやロボットアニメ。

 それが頭をよぎり、嫌な予感が背筋を走った。

 ソーマは鋭く息を吐いた。


「全員! 狙いを一体に絞れ! 五体のままだと……嫌な予感がする!」


 仲間たちが頷き、獅子型へ攻撃を集中する。

 装甲が砕け、赤い光が揺らぎ始めた――その時。

 子供の口元がにやりと歪んだ。


「へぇ……いい勘してるね、お兄さん」


 不気味な沈黙の後――子供は両手を掲げて叫ぶ。


「なら――合体だぁ!! 僕の――ドラゴニカァァァァ!!」


 轟音と共に、五体の獣型ゴーレムが赤い光を放ちながら動き出す。

 体が軋みをあげ、パーツ同士が噛み合い、獣の形から腕や脚、胴体へと組み替わっていく。


 鉄が噛み合う重低音。

 光が奔り、広間全体が振動する。

 やがてそこに現れたのは――一際巨大な人型ゴーレム。


「なっ……合体だと!?」


 ソーマが絶句する。

 子供は嬉しそうに跳ねて叫んだ。


「そうだよ! こいつの名前は――ドラゴニカ! 僕の最強ゴーレムなんだ!」


 ドラゴニカが咆哮を轟かせる。

 坑道全体が震え、石壁が崩れ落ちる。


「やべぇぞ……!」


 ジョッシュがバットを構え直し、後退する。


「力が……桁違いに跳ね上がってます……!」


 クリスの声が震える。


「全員、気を引き締めろ! ここからが本当の戦いだ!」


 ゼルガンの眼光が鋭く光る。

 ソーマは剣を強く握りしめた。


(やっぱり……これは前世で見た合体ロボだ。偶然じゃない……! この子は一体何者なんだ!?)


 冷たい予感が背筋を駆け抜ける。

 次の瞬間――ドラゴニカの巨腕が振り下ろされた。


「来るぞぉぉッ!!」


 大地を揺るがす衝撃と共に、決戦が幕を開けた――

「みんな、アレをやるぞ…」

「アレ?」

「決まってるだろ!合体だああぁぁぁぁッ!!」


※作者からのお願い


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