表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第五章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第五章:装備作り? いいえ、試練のフラグです

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/115

86:積み上げられるフラグ

 王城の大広間を後にしたソーマたちは、重苦しい空気をまとったまま石造りの廊下を歩いていた。

 謁見は終えた。

 だが、鉱山のダンジョン化――その現実は、肩にのしかかる鉛のように重かった。


 依頼の核心は魔石。

 解決できなければ依頼は失敗し、これまで積み重ねてきた旅路も無駄になるかもしれない。


 沈黙を破ったのは、背後から歩み寄ってきた兵士の声だった。


「陛下より伝令です。鉱山攻略の準備が整うまでの間、城内の一室をお使いくださいとのことです」

「えっ……」


 クリスがぱちりと瞬きをし、驚き混じりの声を上げる。


「王城に泊まれるってことですか?」


 ジョッシュは腕を組んで首を傾げる。


「いいのか? 俺たちはあくまで外部の冒険者だ。そんな待遇いいのか?」


 兵士はにこやかな笑みを崩さず、しかし声に揺らぎはなかった。


「王命です。加えて、ゼルガン殿が共に行動している以上、外に滞在させて万一があっては面目が立ちません」


 ゼルガンは小さく息をつき、肩をすくめた。


「……兄上なりの気遣いだろう。ありがたく受けておけ」


 エルーナが半ば呆れたように笑う。


「王族の弟って、こういう時ほんと便利ね……」


 ソーマは胸の奥に小さな違和感を覚えながらも頷いた。


「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおう」


 案内された客室は、まさしく王族の客人にふさわしい豪華さだった。

 厚手の絹張りのカーテンが窓を飾り、広々としたベッドが部屋の中央に鎮座する。

 壁際には暖炉があり、静かに薪がはぜている。


「うわぁ……!」


 エルーナが声を上げ、ベッドに飛び込んだ。


「ふっかふか! これ、沈み込んじゃうよ!」


 クリスは窓辺に立ち、王城の庭園を眺めながら小さくため息をつく。


「……なんだか、落ち着かないですね。贅沢すぎて逆に気が張ります」


 ジョッシュは壁に背を預け、静かに笑った。


「まあ、数日の辛抱だ。準備が済めば鉱山だ。のんびりする暇なんてねぇさ」


 ソーマは荷物を整理しながら呟いた。


「……準備か。やらなきゃいけないことは山ほどある」


 翌朝、ソーマはゼルガンに案内され、王城の鍛冶場に足を運んだ。

 そこは熱気と鉄の匂いに満ち、炉の炎が赤々と燃え盛る空間だった。

 数人の屈強なドワーフ鍛冶師たちが集まり、ソーマが持ち込んだ拳銃の図面を前に眉間に皺を寄せている。


「……なんだこれは。管に火薬を詰めて弾を飛ばすだと?」

「仕組みはわからなくもない。だが、考えが突飛すぎる」


 彼らは顔を見合わせ、頭を掻いた。

 ソーマは必死に言葉を重ねる。


「火薬、あるいは魔力の爆発力を利用して、弾丸を押し出す仕組みです。重要なのは、発射の安定性と排熱、それから――」

「待て待て待て!」


 鍛冶師のリーダーと名乗ったリシューが両手を振り上げる。


「言っていることはわかるが、実際にどう動くのか想像が追いつかん!」


 エルーナが前に進み出て、愛用の銃を構えた。


「だったら、見せてあげるわ」


 次の瞬間、魔力弾が放たれ、木製の標的を正確に撃ち抜いた。


「……っ!」


 鍛冶師たちの目が大きく見開かれる。


「これが銃よ。私のは魔力を直接撃ち出すタイプ。でもソーマのは、物理の弾丸を撃ち出す形にしたいの」

「なるほど……!」

「つまり、弓矢をさらに洗練したものか」


 ソーマは安堵の息を吐き、頷く。


「そうです。ただし弓矢よりも高速で、強力に。問題は発射機構をどう再現するかなんです」


 ゼルガンは腕を組み、しばし考え込むと、低く響く声で言った。


「お前たち、ソーマの話を真剣に聞け。俺が保証する。この若者の発想は馬鹿げているようで、時代を変える可能性がある」


 その言葉に鍛冶師たちはざわめき、やがて真剣な眼差しを交わし合った。


 そこから議論は白熱した。

 弾丸の生成方法、銃身の金属強度、排出の仕組み――

 ゼルガンも混ざり、鍛冶師たちは次々と意見を飛ばし合った。

 ソーマは説明を繰り返し、エルーナは実演を交え、時にはジョッシュやクリスも素朴な疑問を口にした。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 そうして日々は過ぎていく。

 鍛冶場での試行錯誤しつつ訓練場での実戦トレーニング。

 エルーナは射撃精度を高め、ソーマは彼女に銃の扱いを教わる形で射撃訓練をつけてもらう。

 ジョッシュはクリスのライトボールでキャッチの練習をしたりし精度を高めていく。


 夜、客室に戻ると皆が疲労困憊でベッドに倒れ込む。

 だが心の奥には奇妙な充実感があった。


「……なんだかんだで、いいチームになってきたわね」


 エルーナが寝返りを打ちながら呟いた。

 クリスは微笑んで答える。


「うん。大変だけど……きっと乗り越えられる」


 ソーマは黙って頷きながら、窓の外に広がる夜景を見つめた。

 遠くにそびえる鉱山。

 その闇の奥に待ち構える脅威を思うと、胸が高鳴った。


 鉱山ダンジョンへ挑戦すると決めてから五日後。


「弾丸はこれで良し……と」


 ソーマが机に並んだ弾丸を手に取り、確認する。

 弾丸は魔力をよく通す金属で加工され、属性魔法を込められる仕様になっていた。

 クリスとエルーナがそれぞれ光や様々な属性の魔力を注ぎ、属性弾として完成させていく。


 銃の構造はほぼ完成した。

 だが――


「……発射機構が、まだ不透明だ」


 リシューが図面を見つめ、低く唸る。

 鍛冶師たちは首を振った。


「一週間もかからずここまで形にしたのは奇跡に近い。あとは我らが試作を重ねるしかない」


 ゼルガンはソーマの肩を力強く叩いた。


「焦るな。お前の武器は今後必ず役に立つ。今はアスガンドの鍛冶師を信じ、先に進もう」


 ソーマは深く息を吸い込み、頷いた。


「……はい」


 こうして拳銃は未完成のまま、ソーマたちは鉱山ダンジョンへ向かう準備を整えるのだった。

 まぁ簡単に拳銃が完成してもね……


※作者からのお願い


投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、↓の☆☆☆☆☆から評価頂き作品への応援をよろしくお願い致します!


お手数だと思いますが、ブックマークや感想もいただけると本当に嬉しいです。


ご協力頂けたら本当にありがたい限りです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ