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【第五章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第五章:装備作り? いいえ、試練のフラグです

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85:閉ざされた鉱山と黒きフラグ

 玉座の間に沈黙が落ちた。

 国王の言葉を待つソーマたちの胸には、張り詰めた緊張が広がっている。

 長い沈黙を破ったのは、王座に座すアスガンド王だった。

 低く重い吐息を漏らし、鋭い眼光をソーマ達へと向ける。


「……確かに、魔石を引き渡す依頼は届いている。しかし――現状、それを果たすことはできぬ」


 玉座の間に響いたその言葉に、ソーマ達は一斉に息を呑んだ。

 予期せぬ返答。

 依頼の根幹を揺るがす一言に、誰もすぐに言葉を返せない。

 最初に声を発したのはクリスだった。


「どういう……ことですか? 国が依頼を受けていながら……渡せないなんて」


 彼女の声はわずかに震えていた。

 責め立てるつもりはなかったが、滲み出る焦りが言葉を鋭くしていた。

 国王は厳しい表情のまま、ゆるりと視線を落とす。


「理由は単純だ。魔石を産出していた鉱山が……今や異変に呑まれ、採掘ができぬ状態となっているのだ」

「異変……?」


 ソーマが思わず繰り返す。胸の奥がざわつき、背筋に冷たいものが走った。

 国王の眼差しに、重苦しい影が宿る。


「……鉱山が、ダンジョン化した」


 その一言で、大広間が揺れるようなざわめきに包まれた。

 ジョッシュは低く唸り、険しい眼差しを王に向ける。


「ダンジョン化……? 自然ならいざ知らず管理されている鉱山が……?」


 エルーナは顔を蒼ざめさせ、声を詰まらせる。


「鉱山がダンジョンに……!? そんなことになったら、周辺の街や村は……!?」


 国王は静かに頷く。


「すでに住民と鉱夫たちは避難させてある。しかし問題は――そのダンジョンに巣食う魔物だ」


 そこで言葉を切り、低く告げた。


「ゴーレムと呼ばれる魔物……だ」


 その名を聞いた瞬間、ソーマの脳裏に古い伝承がよぎる。


「……ゴーレム……古代に造られた、土や石の兵士……」

「ただの石の塊ではない」


 国王は苦々しく続ける。


「奴らは核となる魔石を中心に動く、古代の魔物だ。並の武器では傷ひとつ付けられぬ。倒しても倒しても、次から次へと現れる……まるで尽きることのない軍勢のようにな」


 クリスが息を詰めた。


「核が魔石……? ……魔石が敵を生み出している……」


 ゼルガンが口を開く。


「兄上……つまり、このゴーレムの脅威を取り除かねば、採掘は再開できぬということだな」

「ああ」


 国王は頷く。


「この異変を解決しない限り、魔石の引き渡しは不可能だ」


 その断言に、広間は重苦しい沈黙に包まれた。

 ソーマは拳を固く握りしめる。

 ここまで来て依頼が果たせないなんて――そんな結末は絶対に受け入れられない。

 けれど国王の言葉から感じるのは、拒絶ではなく切実な現実だった。

 魔石を手にするには、この異変を打開するしか道はない。


「……つまり」


 ソーマは一歩前に出る。


「僕たちが、その異変を解決できれば……魔石を渡していただける、ということですね?」


 国王の鋭い視線が突き刺さる。


「言葉にするのは容易い。だが相手は古代兵器だ。数多の冒険者を送り込んだが……生きて帰った者は、指折り数えるほどだ」


 空気が一層重くなる。

 クリスは顔を青ざめさせ、ジョッシュは黙して腕を組む。

 エルーナは強張った表情で、唇を噛んでいた。

 そんな仲間たちの前に、ゼルガンが一歩進み出る。


「兄上……この若者たちの力を試させてくれ。俺も共に戦おう」


 国王の瞳に険しい光が宿る。


「……まだお前は国を捨てた身だ。その口から語られる言葉を、軽々しく信じることはできぬ」


 冷徹な声。

 しかしゼルガンは揺るがない。


「それでも構わん。俺はこの者たちの依頼を果たすために、命を賭ける」


 ソーマの胸が熱くなる。

 ゼルガンが背負う罪、その重さを知っているからこそ、その覚悟の強さが痛いほど伝わってきた。

 長い沈黙の後、国王は目を細めて告げた。


「……好きにするがいい。ただし覚えておけ。相手は人の理を越えた存在だ」


 こうして謁見は終わり、ソーマたちに課された試練は想像を絶するものとなった。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


【???視点】


 その頃――鉱山の奥深く。

 湿った空気が漂う暗い洞窟に、不気味な魔法紋が壁一面に浮かんでいた。

 その中心で、小さな影がちょこんと座り込み、何かを弄っている。


「ふふ……ここを、こうして……えへへ、動いた、動いた!」


 甲高い笑い声。

 それは幼い子供のように無邪気な声音だった。

 岩石で組まれた巨大な腕――ゴーレムの一部が、幼い手の動きに呼応して軋みを上げる。

 淡い光を帯びた魔法陣が脈動し、石の兵士がゆっくりと立ち上がる。


「作るのって、楽しいなぁ……」


 その背後、影の中からぬらりと蛇が姿を現した。

 鱗は冷たく光り、赤い瞳がじっと幼い存在を見つめる。


「……冒険者に気をつけなさい。名前は――ソーマ」


 囁きは洞窟に反響し、尾を引いて消える。

 しかし、忠告は届いていなかった。

 幼い影は夢中で核の調整を続け、にこにこと笑っている。


「ほら、立った! 今度はもっと大きく……もっと強いのを作ろう!」


 ごごごご……と大地を揺るがす地響き。

 積み上げられていく巨躯は、常識を超えた大きさを持ち、洞窟の天井をも圧迫する。

 幼い瞳が無邪気な光を宿しながらも、狂気に似た輝きを放った。


「ふふふ……やっぱり、作るのって楽しい!」


 洞窟を震わせる声。

 その奥で、異形の巨兵が誕生しようとしていた――

 今章のボスが確定しました。


※作者からのお願い


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