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【第六章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第五章:装備作り? いいえ、試練のフラグです

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84:罪と決意のフラグ

 翌朝――

 魔道列車の車窓から差し込む朝陽が、淡い黄金の光となって客室を包んでいた。

 静かな揺れの中、ソーマは目を覚まし、向かいの席に腰かけているゼルガンに気づいた。

 彼は夜明けからずっと眠らず、窓の外を見つめていたようだった。


「……ゼルガンさん?」


 声をかけると、ゼルガンは振り返り、わずかに目元を緩めた。


「起こしたか」

「いえ……。眠ってなかったんですか?」

「……どうにも、眠れん夜だった」


 ゼルガンの声は低く、しかしその奥に硬い決意を宿していた。

 ソーマは胸にざらついた不安を覚える。

 昨日聞いた彼の過去が、まだ胸の奥に棘のように残っているのだ。


「帰るの……怖いですか?」


 思わず問いかけてしまうと、ゼルガンは小さく笑った。


「怖くないと言えば嘘になる。だが……避けては通れん」


 その横顔はどこか影を背負いながらも、まっすぐ前を見ているように見えた。

 その後も列車は途中の街で休憩をはさみつつ進み、やがて王都が近づく頃――


「もうすぐ王都に着くな」


 ゼルガンの言葉に、空気が自然と張り詰めた。


「……実は、アスガンドを出てから俺は一度も戻っていない」


 静かに告げられた言葉に、ソーマたちは驚きの表情を見せる。


「じゃあ……妹さんたちと国を出てからずっと……?」


 クリスが小さな声で問う。


「ああ。アスヴァルでの生活、勇者パーティーとしての活動……すべては外で完結していた。帰る顔がなかったからな」


 エルーナが唇を噛みしめる。


「だから……余計に今回の帰還は……」

「そうだ。すでに俺が王都に向かっている情報は、間違いなく王城に届いているだろう」


 ゼルガンは腕を組み、深く息を吐いた。


「兄――現国王がどう出るかはわからん。歓迎など、されるはずもない」


 ソーマは思わず拳を握りしめた。


「でも、ゼルガンさんが一緒に来てくれるおかげで、僕たちは……」


 ゼルガンはその言葉を首を振って遮った。


「俺がどうなろうと構わん。ただし――お前たちの依頼。それだけは必ず通す」


 その瞳に宿る覚悟に、全員の胸が痛む。

 彼の罪と悔恨を知った今、その決意の重さが痛いほど伝わってくるのだ。


 やがて列車は王都の駅に滑り込む。

 車輪の音が止み、ドアが開いた瞬間――

 重厚な鎧に身を包んだ兵士たちが、構内を埋め尽くすように整列していた。

 視線は一斉にゼルガンへ注がれ、その場の空気が一気に凍りつく。


「……やはり待ち構えていたか」


 ゼルガンの低い呟きに、クリスは息を呑み、ジョッシュはバットに手を伸ばしかけた。

 だがゼルガンが鋭く手で制す。


「武器を抜くな。敵意を見せれば終わりだ」


 先頭の将校が声を張った。


「ゼルガン殿。そして同行の冒険者諸君。国王陛下がお待ちだ。ついて来てもらう」


 拒否の余地はない。

 ソーマたちは視線を交わし合い、黙って頷いた。

 兵士たちに囲まれたまま、駅を後にする。


 王都の街並み。

 石畳の大通りを進む彼らの姿は人々の目にさらされ、ざわめきが広がる。


「あれは……王弟ゼルガン殿……!」


 民衆の囁きが重なり、ソーマの心臓は早鐘を打った。

 クリスはソーマの袖を掴み、エルーナは真剣な表情で兵士の列を見つめる。


 ただ、ゼルガンだけは一言も発さず前を向いて歩き続けていた。


 やがて王城の大扉が開かれる。

 高い天井、金と白を基調とした豪奢な大広間――

 その玉座に、鋭い眼差しを宿した男が座していた。

 アスガンド国王、ゼルガンの兄である。


「……久しいな、ゼルガンよ」


 その声は低く響き、威圧感を伴って大広間に落ちた。

 ゼルガンは一歩前に出て深く頭を垂れる。


「兄上……」

「国を捨て、王族の義務を投げ捨てたお前が……何をしに戻ってきた?」


 国王の瞳には怒りとも憎しみともつかぬ色が宿る。

 ゼルガンはその視線を受け止め、まっすぐに言葉を吐いた。


「頼みがある」

「頼みだと?」


 国王は鼻で笑う。


「ソフィーを連れ出し、挙げ句の果てに守れもせず失ったお前が、何を今さら……」


 冷酷な言葉に、大広間の空気が重く沈む。

 ソーマは思わず前に出かけたが、ゼルガンの背中に阻まれる。

 その背は震えていたが、彼は声を張った。


「ならば、俺のことはどうでもいい。だが、この者たちの願いを聞いてやってほしい」


 ソーマは驚きつつも、一歩前へ。


「僕たちは……アスガンドからの正式な依頼で参りました。魔石の引き取りの件です!」


 国王の目が鋭く細められる。


「魔石……」


 クリスも頭を下げて続けた。


「依頼を受けてここまで来ました。どうか、取り次いでいただけませんか」


 国王は玉座に深く身を沈め、顎に手を当てる。

 長い沈黙――

 広間に響くのは兵士たちの鎧のきしむ音だけだった。


 やがて――


「……確かに依頼は受けている。だが……」


 国王の渋い表情とともに落とされた言葉に、ソーマの胸はざわめいた。

 ゼルガンは深く頭を垂れ、声を絞り出す。


「どうか、この若者たちに免じて……国の未来のために」


 静まり返った大広間に、国王のため息が重く響いた。

 その次の言葉が、この先を大きく変えることを――誰もが理解していた。

 久々の再会は感動とはなるわけもなく……


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