表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第五章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第五章:装備作り? いいえ、試練のフラグです

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/113

82:英雄の影フラグ

 轟音を響かせながら、巨大な鉄の塊が駅へと滑り込んできた。

 その姿に、ソーマたちは息を呑む。


 鋼鉄の車体は太陽の光を反射し、黒光りしている。

 窓からは魔力を帯びた淡い光が漏れ、床下の魔道機関が低く唸り声をあげていた。


「これが……魔道列車……!」


 ソーマは思わず声を上げる。

 船酔いの記憶を忘れたかのように、その瞳は子供のような好奇心で輝いていた。


「ただの鉄の塊じゃないのね。魔力の流れが……生きているみたい」


 エルーナが目を細め、魔力感知の術式で列車を見やる。


「ドワーフの技術と魔法の融合……すごいです。理論上は可能でも、実際に形にするなんて……」


 クリスが感嘆の声を漏らした。

 学者肌の彼女にとって、まさに夢のような存在だった。

 そんな仲間たちを見やり、ゼルガンが重々しく言った。


「魔道列車は、馬車で一週間以上かかる距離を、途中の街に停車しながら三日で走破する。ドワーフたちが誇る鋼と魔法の結晶だ」

「三日!? 一週間が三日に……すごすぎる!」


 ソーマは目を丸くし、ジョッシュも口笛を吹いた。


「だが、その分費用は安くない。長旅ゆえ寝台車を利用するのが一般的だ」


 ゼルガンはそう説明すると、駅の窓口へと歩み寄った。


「すまない、五人分の部屋を取りたい」


 ゼルガンの声に、応対した駅員のドワーフが帳簿をめくる。


「五人部屋だな? ……残念だが、あいにく満室でな」


「えっ、満室……?」


 ソーマは肩を落とした。


「まさか、床に雑魚寝とか……?」


 エルーナが眉をひそめる。


「……まさか立ちっぱなしなんてことはないでしょうね?」

「立ち席はあるが、お前さんらには勧めん」


 駅員はひげを撫で、申し訳なさそうに首を振った。

 するとゼルガンが一歩前に出る。


「……特室に空きはないか?」

「無茶を言わんでくれ。規則でな……」


 駅員が渋い顔をするが、その目がゼルガンの顔をしっかりと捉えた瞬間、動きが止まった。


「……お、おぬし……もしや……ゼルガン殿では?」

「……まだ俺を覚えているか……」


 ゼルガンは軽く顎を引き、静かに答えた。

 次の瞬間、駅員は目を丸くし、背筋を正した。


「な、なんと! 本物のゼルガン様か! これは失礼を……っ!」


 慌てふためく駅員に、周囲の乗客もざわつく。


「ゼルガン……? あの勇者パーティーの……?」

「本当にご本人なのか……!」


 駅員は汗を拭いながら、深々と頭を下げた。


「も、もちろんお部屋をご用意いたします! 最上等の【特室】を! すぐに手配いたしますので!」


 その豹変ぶりに、ソーマたちは唖然とした。


「え、えっと……元勇者パーティーってだけで、ここまでしてくれるんですか?」


 ソーマが戸惑いながらゼルガンを見上げる。


「英雄扱いされるのは分かりますけど……あまりにも対応が違いすぎませんか?」


 クリスも首を傾げ、エルーナも疑いの眼差しを向ける。


「あなた、実はただの勇者の仲間じゃないんじゃないの?」


 ゼルガンはしばらく沈黙し、やがて静かに口を開いた。


「……そうだな。そろそろ話しておいてもいい頃合いか」


 ゼルガンの声はいつになく低く、重い。

 ソーマたちはごくりと息を呑んだ。


「俺はゼルガン。元勇者パーティーの鍛冶師にして――アスガンド現国王の弟だ」

「……えっ」


 ソーマの思考が一瞬止まる。


「ええええええええっ!?」


 次の瞬間、ソーマたちは大声を上げた。

 クリスは口を押さえ、エルーナは目を丸くし、ジョッシュはぽかんと口を開けている。


「お、王弟……!? 国王の弟って……そんな人が、どうしてアスヴァルで鍛冶師なんかを……!?」


 ソーマの混乱は極まった。

 ゼルガンは苦笑を浮かべ、頭をかきながら言った。


「勇者と共に旅をした過去があるとはいえ、俺はもうただの一鍛冶師にすぎん。だが……立場上、こうして顔を知られている。だから駅員もああまで丁重にしたんだろう」


 淡々と告げるその声に、どこか影が差している。

 だがソーマたちの胸中は、それ以上に驚きでいっぱいだった。


(……ゼルガンさんが、王弟……? そんな人が、なんで俺たちと……?)


 ソーマの疑問は尽きなかった。

 だが答えを探すよりも早く、駅員が駆け戻ってきた。


「お待たせいたしました! 特室のご準備が整いました。どうぞご案内いたします!」


 その声に導かれ、ソーマたちは魔道列車の奥へと歩みを進める。

 新たな真実と共に、鋼鉄の旅路が幕を開けようとしていた。

 と言う訳でゼルガン正体でした。

 次回何故彼が旅に出たかなどの背景を語ります。


※作者からのお願い


投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、↓の☆☆☆☆☆から評価頂き作品への応援をよろしくお願い致します!


お手数だと思いますが、ブックマークや感想もいただけると本当に嬉しいです。


ご協力頂けたら本当にありがたい限りです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ