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【第五章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第五章:装備作り? いいえ、試練のフラグです

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81:揺れる勇者フラグと鉄路の幕開け

 飛竜便で王都を発ち、アスガンドへ向かう旅が始まった。

 空を渡る飛竜は、順風に乗って軽やかに進んでいく。

 空の旅を終え、東の港町ライン港で待つ大型船に乗り換えた。

 アスガンドまでの本航路は、どうしても船旅になるのだ。


「うっ……ううぅ……」


 出航から間もなく、ソーマは顔を青ざめさせて甲板の隅にしゃがみ込んでいた。

 船体が軋むたびに胃がぐるりと回転し、喉元までこみ上げてくる。


「ソーマ、大丈夫?」


 エルーナがすぐに駆け寄り、背中をやさしくさする。

 その隣ではクリスが心配そうにハンカチを握りしめ、そっと口元に差し出した。


「……だ、だめだ……やっぱり……船だけは……慣れない……」


 涙目で呻くソーマに、エルーナは呆れと心配が入り混じったような視線を送る。


「あなた、戦闘中はあれだけ動き回れるのに……こういうのには本当に弱いのね」

「よく生き残ってる方だと思うよ……」


 その光景を少し離れたところから見ていたゼルガンが、不意に「くっ」と笑い声を漏らした。


「……な、何で笑ってるんですか……こんなに辛いのに……」


 ソーマは青ざめた顔で、涙目のまま問いかける。


「いやな……ふっ、すまん。勇者を思い出してしまったのだ」

「勇者……?」


 ソーマが顔を上げると、ゼルガンは遠い記憶を思い起こすように目を細めた。


「あいつも船にはからっきし弱かった。飛竜のときはあれほどはしゃいでいたくせにな……船に揺られるたび青ざめ、聖女が薬を作って口に押し込み、魔闘士が肩を貸して……」


 ゼルガンの口元に皮肉げな笑みが浮かぶ。


「そしてそれを、いつも冷ややかな目で眺めていたのが――今のアスエリスの女王、エーメルだった」

「……っ、それって……まんま俺じゃないですか……!」


 ソーマは情けない顔で呻き、思わずデッキに突っ伏した。

 クリスはくすりと笑い、エルーナは目を瞬いて小さく息を漏らす。


「本当に歴史は繰り返すのね……」

「ゼルガンさん、その……勇者パーティー時代の話もっと聞かせてもらえませんか?」


 勇者パーティー。

 歴史の中でしか知らない伝説を、今まさに生き残りが語っているのだ。

 エルーナもクリスも、そしてジョッシュまで耳をそばだてていた。

 しかしゼルガンはふっと目を逸らし、空を見上げて言った。


「……いずれな」


 それ以上は語ろうとしない。

 その背に宿るのは懐かしさと、消えぬ影。


(やっぱり……簡単には話してくれないか)


 ソーマは胸に残る好奇心を押し込み、再び吐き気と格闘するのだった。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 一週間後――


「見えてきたぞ。アスガンドの港だ」


 ゼルガンの低い声が響き、ソーマはぐったりしたまま顔を上げた。

 水平線の向こうに、巨大な港町が姿を現していた。

 大小無数の船が停泊し、荷を積み下ろす人々の掛け声が波の音に混じって木霊している。


「……すごい……!」


 クリスの瞳がきらきらと輝く。

 アスエリスの港よりもさらに規模が大きい。

 人波の中には人間だけでなく、筋骨隆々のドワーフ、毛並みや耳を揺らす獣人たちが入り混じっていた。


「さすが鋼の大陸……人種も活気も桁違いね」


 エルーナが感嘆を漏らす。

 ソーマはようやく甲板に立ち上がり、大きく息を吸い込んだ。


「……やっと……着いた……! もう二度と船なんて……」

「いや、帰りもあるぞ?」


 ジョッシュが笑いながら肩を叩き、ソーマは絶望的な顔で再び膝を折りかけた。

 ゼルガンが手を上げ、ソーマ達を振り返る。


「さあ、王都アスガンドまでは俺が案内する」

「王都までって……馬車ですか?」


 ソーマが問うと、ゼルガンは首を振った。


「いや、この大陸には馬車より速く、安全で便利な足がある」


 港町の石畳を抜け、喧騒を越えた先。

 巨大な建造物の影に、きらめく鉄のレールが真っ直ぐ大地を貫いていた。

 陽光を反射するその道は、どこまでも延びていく。


「これが……」


 クリスが息を呑む。


「ドワーフの技術が詰まった【魔道列車】だ。王都まではこれで行く」


 ゼルガンの声には誇りが滲んでいた。

 轟音と共に、巨大な鉄の塊が駅へ滑り込んでくる。

 蒼白い魔力の燐光をまとい、まるで生き物のように鼓動を響かせながら。


「うおお……すごい……! 本当に列車だ……」


 ソーマは酔いを忘れ、子供のように目を見開いた。

 冒険の舞台は、いよいよ鋼の大陸アスガンド。

 新たな旅路は、魔道列車と共に幕を開けるのだった。

 ドワーフの国で魔法技術が発達してるなら列車位あってもいいですよね?

 この世界特有のご都合主義です。


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