表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第五章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第一章:おしまい? いいえ、始まりのフラグです

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/104

8:追放フラグの先にあるもの

「さーて、今日は買い出しだな」


 窓際で大きく伸びをした。


「準備する物、ちゃんとリストにまとめてきましたよ」


 小さなメモ帳を取り出して誇らしげに笑う。


「さすがクリス。頼りになるな」

「ふふっ、当然ですっ」

「よし、出発だ。行こう、ジョッシュ!」

「おう! こういうのって、なんかワクワクするよな」


 三人は肩を並べて通りへ出た。

 向かう先は、冒険者御用達の中央マーケット。

 クエストに必要な備品や保存食、ポーション類を揃えるには、ここが最適だ。


 そんな買い出しの途中――


「……あれ? もしかして、ソーマ?」


 聞き慣れた声が背後から飛んできた。

 ソーマが振り返った瞬間、胸の奥がざわりと波立つ。

 そこにいたのは、ソーマを追放した張本人――ユーサー。

 その隣にはシオニーと斥候のアイムの姿もあった。

 三人は通りの喧噪の中で、わざとらしくこちらを見下ろしていた。


「ソーマ……こんなところで何してんの? まさか、まだ冒険者続けるの?」


 シオニーが鼻で笑い、アイムは露骨な嘲笑を浮かべる。

 ジョッシュが一歩踏み出しかけたが、ソーマは手を軽く上げて制した。


「今は俺たち三人で、クエストの準備中だ」


 ユーサーは鼻で笑い、視線をクリスとジョッシュへと流す。


「はは、学生時代のよしみで組んだってわけか。まあ……せいぜい死なないようにね」


 ソーマは一歩踏み出し、真正面から視線をぶつける。


「……俺たちの進む道は、俺たちが決める。お前たちの評価なんて、もういらない」


 すぐ横で、クリスが力強く言葉を紡ぐ。


「私たちは笑われてる間も、一歩ずつ前に進んできました。……必ず証明します。どこまで行けるか」


 ジョッシュもにやりと笑い、拳を握った。


「上から笑ってろよ。その間に、俺たちは泥水すすってでも強くなる。次に会った時は――もう笑えねぇぞ」


 三人の気迫に、ユーサーたちはわずかに表情を揺らすがすぐに嘲笑を浮かべ、肩をすくめた。


「……どうでもいいさ。僕たちはもうCランク。新しい拠点(ホーム)も手に入れたしね」

「安宿暮らしの底辺パーティーさんにはお似合いの環境でしょ? こっちは優雅に新生活よ」

「ま、せいぜい足掻いてみろよ」


 吐き捨てるように言い残し、人混みへと消えていった。


「……よし。買い出し、続けるか」


 ソーマの一言に、クリスとジョッシュが頷く。

 胸の奥に怒りと悔しさが渦巻く。

 だがそれ以上に――進むべき未来が、確かに見えていた。


「次のクエスト、絶対に成功させよう。俺たちはここからでも、強くなれる」


 その言葉に、クリスが柔らかく微笑み、ジョッシュが拳を突き合わせる。

 三人の歩みは、もう止まらなかった。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 朝焼けが街の屋根を黄金に染める頃、冒険者ギルドの重い扉が、静かに押し開けられた。


「おはようございます、メルマさん」


 カウンターの奥で書類を整理していたメルマが顔を上げ、ふわりと微笑む。

 だが、その眼差しにはわずかな不安が混じっていた。


「おはよう、ソーマさん。……いよいよ出発ですね」

「はい。新しいパーティーとして、最初の依頼です」


 横に立つクリスは緊張の面持ちで小さく頷き、杖を握る手がわずかに震えていた。

 その背で、ジョッシュが豪快に肩を回す。


「うおーっ! ついに本番だな! 燃えてきたぜ!」


 メルマは苦笑しつつ、ほんの少し安心したように息を吐いた。


「……緊張しすぎないでくださいね。張り詰めすぎると、逆に判断を誤ります」

「肝に銘じます」


 ふっと、柔らかな空気が三人の間に流れる。


「……申請に移動は徒歩になっていますね? 馬車なら一日で着きますよ?」

「はい。パーティーとしての訓練も兼ねます。野営しながら二日で向かう予定です」

「なるほど、実地訓練ね。……気をつけてください。あの森は魔物だけじゃなく盗賊も出ることがあるから」

「了解です」


 三人は深く礼をし、ギルドを後にした。


 ギルドの外に出ると、朝の空気が思ったよりも冷たく肌を刺した。


 南門を越え、広がる青空の下を進む。

 穏やかな丘陵、遠くに霞む雪山。

 胸いっぱいに吸い込む冷たい朝の空気が、冒険の始まりを告げていた。


「やっとだな……! これぞ冒険ってやつだ!」

「……張り切るのはいいけど、荷物、傾いてる」

「あ、ほんとだ!? サンキュー!」


 そんなやり取りに、ソーマは思わず笑みを零す。

 夕方には、予定通り小さな丘の上に野営地を設営できた。

 焚き火の炎が小さく揺れ始めるころ、クリスがぽつりとつぶやいた。


「……悪くないですね、この感じ。兄さん以外の人と旅をするの、久々だけど」

「俺も。初めてじゃないのに、なんか……胸が騒ぐ」

「そのうち慣れるよ。……飽きるくらい野営することになるんだから」


 火を囲む時間が、三人の距離を少しずつ縮めていく。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 翌朝。

 森の入口に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。


「……静かだな」


 鳥の声も、風の音すらも消えた不自然な沈黙。

 地面には、不規則に並ぶ小さな足跡。


「……ゴブリン、四体以上。数はまだ増えるかも」


 低く告げた瞬間、茂みの中から黄緑色の小柄な影が一斉に飛び出す。


 ギギギ……ッ!


 ソーマが低く告げた瞬間、黄緑色の小柄な影が茂みから一斉に飛び出した。

 粗末な剣や棍棒を振り上げ、歯をむき出しにして襲いかかってくるゴブリンたち。


「クリス、後方に下がって! ジョッシュ、援護頼む!」

「了解!」

「任せろって!」


 号令と同時に、ソーマが駆ける。

 ロングソードを握り、敵の群れへ正面から切り込む。


 三方から襲い来る刃と棍棒。

 だがソーマは一歩も退かず、足さばきと間合いであえて敵を誘い込み、動きを制御する。


 ――倒すより、倒されないことを優先。

 動線を絡め取り、敵の攻撃同士をぶつけ合うように立ち回る。


 剣が斜めに振り下ろされ、一本目のゴブリンの棍棒を弾き飛ばす。

 即座に返すように横薙ぎの斬撃。

 二体目の腹を裂くと同時に、三体目の突きを体をひねって避け、剣の柄で喉元を打つ。


「っらぁっ!!」


 息を詰めた連続攻撃。

 足元に転がる葉の感触を確かめるように踏み込み、敵の動線をコントロールする。


「【シールド】」


 クリスの魔力が弾け、ソーマの周囲に淡い光の膜が張り巡らされる。

 投げつけられた石を弾き飛ばし、背中を守った。


「助かった、クリス!」

「集中して。まだ来る」


 汗を浮かべながらも、彼女の声には揺るぎがない。


「こっち来んなっての! ――【魔球ストレート】!」


 ジョッシュの腕から放たれた光球が一直線に飛び、ゴブリンの頭を吹き飛ばす。


 ――バシュッ!


 光の閃光が森を裂き、悲鳴が響いた。


「右から二体!」

「見えてます。ソーマさん、背後!」


 クリスの警告に、ソーマは瞬時に跳躍し、背後の一撃を空振りさせる。


「今だ、ジョッシュ!」

「おっしゃあああ!」


 二発目の魔球が炸裂し、ゴブリンを地面に沈めた。


「ナイス!」

「へへっ、この距離なら外さねぇ!」


 ジョッシュが軽口を叩きながら位置を変え、クリスの横へ戻る。


「魔力、持つか?」

「まだ余裕です。でも、長期戦は避けたいです」

「了解。ソーマ、指示を!」

「……短期決戦だ。俺が奥を叩く。クリスは後方支援継続、ジョッシュは突入口を作れ!」

「了解ぃっ!」


 ジョッシュが魔球を乱れ投げ、光の弾幕でゴブリンたちをひるませる。


「今だッ!」


 ソーマが疾風のごとく突っ込み、ロングソードを薙ぐ。

 二体が同時に血を噴き散らし、地に伏した。


 その時奥から、ひときわ大柄な影が現れる。

 肩には骨の装飾。

 眼光は鋭く、他のゴブリンとは明らかに違う威圧感。


「……ゴブリンリーダーか」


 ゴブリンリーダーが雄叫びを上げ、棍棒を振り下ろす。

 ソーマは深く息を吸い――その瞬間、再び魔力が走った。


「【ブースト】。加速補助」

「ありがとう、クリス!」


 加速した踏み込みで懐へ潜り込み、渾身の一撃を叩き込む。


 ――ギャアアアッ!!


 骨飾りごと胴を裂かれ、ゴブリンリーダーは膝をつき、やがて崩れ落ちた。

 リーダーの死を目にした子分は一瞬怯み、そのまま悲鳴を上げて森の奥へ逃げていく。


「敵影、撤退確認。戦闘終了」


 ソーマが告げたその声に、三人の間に静かな余韻が流れた。

 ソーマは剣を下ろし、深く息を吐いた。

 ジョッシュが大きく笑って拳を突き上げる。


「やったな! 俺たちの初陣、大勝利だ!」

「……まだ不十分。でも、悪くなかったです」


 クリスの小さな言葉に、ソーマも口元をわずかに緩める。


「よくやったよ、二人とも」


 風が再び穏やかに吹き抜け、森の沈黙は破られた。


 ――彼らの旅は、今まさに動き出したばかりだ。

 お久しぶりの勇者パーティー(物語内では2日ぶり)

 二日しかたってないのでまだ破滅フラグは起きていません。

 戦闘描写書くの苦労します。


※作者からのお願い


投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、↓の☆☆☆☆☆から評価頂き作品への応援をよろしくお願い致します!


お手数だと思いますが、ブックマークや感想もいただけると本当に嬉しいです。


ご協力頂けたら本当にありがたい限りです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
カルヴィラさん、何を思いついたんでしょうね。 ひとまず第8話まで一気に読めました。文章も読みやすく、状況が過不足なく説明されていて、ストレスがありません。これからの展開がとても気になります。
メルマが何かしら関わるのかな? 道場も立派な仕事だと思うけど、ギルドマスターからするとやっぱ抱え込みたいんでしょうね。 (*´ω`*) 用語集は用意しますね。 表記ゆれのチェックはプログラムである程…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ