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【第五章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第五章:装備作り? いいえ、試練のフラグです

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76:託された希望と決意のフラグ

 朝日が王都の屋根を照らし始めたころ、ソーマたちは猪熊亭を出て石畳を踏みしめていた。

 夜通しの喧噪が嘘のように静まり返り、露店の準備を始める人々の声や木製の車輪のきしむ音が、穏やかで心地よいBGMになる。


「いやぁ……久々にぐっすり眠れたな」


 ジョッシュが大きく伸びをした。

 鍛え上げられた腕が朝の光に照らされ、筋肉の影がくっきりと浮かぶ。


「猪熊亭のベッドは柔らかすぎず硬すぎず、ちょうどいいね」


 エルーナが笑みを浮かべる。

 初めてここで寝泊まりした彼女にとって、それは仲間と共にある実感でもあった。


「うん。帰ってきたんだなって、安心できる場所です」


 クリスも微笑み、手にした杖を軽く握り直す。

 その視線には、これから新たに手にする力への期待と、仲間と共に歩む未来への決意が混ざっていた。

 ソーマは荷袋を背負い直し、仲間たちを見渡す。


「さ、行こうか。ゼルガンさんなら、きっと期待以上のものを作ってくれる」


 石畳を進むと、路地の奥に煤けた建物が見えてきた。

 鉄を打つ規則正しい音が響き、熱気が風に混じる。

 ゼルガンさんの鍛冶屋【悪・即・斬】だ。


 重い扉を押し開けると、金属と油の匂いが鼻をついた。

 奥の炉の前で、大柄な男がハンマーを振り下ろす。

 背中に刻まれた傷跡が、彼の戦歴を語っていた。


「帰ったか。無事でなによりだ」


 ハンマーを置き、ゼルガンが振り返る。

 目には厳しさと温かみが同居していた。


「ゼルガンさん、ただいま戻りました。早速これを見てください」


 ソーマは深く頭を下げ、袋から取り出したのは、巨大な蛇の鱗や牙、光を放つ魔石の数々だった。


「……ほう。これはまた見事な素材だな」


 ゼルガンが手に取った鱗を光にかざし、唸るように声を漏らす。


「並の魔物じゃないな……何を相手にした?」

「世界樹の地下に潜む、大蛇でした。ダンジョンコアと同化していて……本当に強敵でした」


 ソーマが答えると、ゼルガンの目が鋭さを増す。


「……やはりな。素材を見ただけで分かる」

「それだけじゃありません。そこで出会ったのが、アスエリスの女王エーメル様です」


 ジョッシュが続けると、ゼルガンの太い眉がわずかに動いた。


「……エーメル?」

「はい。助けてもらった上に、素材まで譲っていただいて……とても気高く、優しい方でした」


 クリスが感慨深く語ると、ゼルガンは長く黙した後、懐かしむように笑った。


「……あいつも女王になって変わったみたいだな」

「ゼルガンさん、ご存知だったんですか?」


 驚くソーマに、鍛冶師は遠い目を向ける。


「ああ。仲間の一人だ。勇者のパーティーの、な」

「……えっ!?」


 一同が息を呑む。

 元勇者の仲間――その響きだけで空気が一瞬張り詰める。


「魔法の腕も知識も一流だった。旅を始めたばかりの頃はエルフ特有の異種族を嫌っていたが、それもなくなった。そして魔王封印の功績で女王となったんだ」


 ゼルガンの声には、かつての仲間への誇りが滲んでいた。


「……そうだったんですね」


 ソーマの胸に熱いものがこみ上げる。

 女王として国を導く彼女の姿と、かつて共に戦った仲間を想うゼルガンの姿が重なる。

 だが感傷に浸る間もなく、ゼルガンは大きな手で机を叩いた。


「さて――素材も揃った。お前たちは何を望む?」


 仲間たちは顔を見合わせ、頷き合った。


「俺はマントが欲しいです」


 ソーマが口を開く。


「守りにもなるし、仲間を庇うときに役立てたいんです」

「ふむ……鱗を織り込み、軽くて強靭な布地を作るか。蛇の魔力を流せば、毒や呪いも防げるかもしれん」


 ゼルガンは腕を組み、早速構想を巡らせる。


「ジョッシュにはグラブをお願いします」

「……グラブ?」


 ゼルガンが首を傾げると、ソーマも困ったように笑った。


「えっと……手にはめる防具なんですけど、普通の篭手じゃなくて……捕まえるための形なんです」


 ソーマは野球のグラブを手で示しながら説明する。


「……つまり、受け止めるための手袋みたいなものか?」

「そういう感じです! ジョッシュには新しい戦い方を覚えてほしい。相手の攻撃を掴んで叩き伏せる、そんな戦い方を」


 ゼルガンは少し黙り込み、やがて口角を上げた。


「面白い。やってみる価値はあるな」


 エルーナも一歩前に出る。


「私は軽鎧をお願いしたいわ。動きやすさを損なわず、防御力を上げられるものを」

「蛇の革は柔軟で丈夫だ。ソーマの新しい仲間のために仕立ててやろう」


 最後に世界樹の枝が机に置かれる。

 薄緑に輝く木片に、一同は息を呑む。


「……これはどうする?」


 ゼルガンの問いに、仲間たちは顔を見合わせる。


「正直、俺は新しいバットも考えた」


 ジョッシュがぼそりと呟き、耳まで赤くなる。


「けど、世界樹の枝で殴るなんて恐れ多すぎる」


 ソーマは笑いながら頷いた。


「うん、それはな」

「だから……杖にしましょうって決めたんです」


 クリスが静かに言う。

 胸の前で両手を組み、世界樹の枝に視線を落とす。


「私はまだ未熟ですけど、この枝を託された意味を無駄にしたくないです」

「あなたにこそ相応しいと思うわ」


 エルーナが微笑み、ソーマも頷いた。


「うん、俺もそう思う。世界樹の枝はクリスの杖にしよう」


 クリスの頬が赤らみ、静かに笑む。

 大切な役割を託された喜びと責任が胸を満たしていた。


「……いいだろう。世界樹の杖、俺の手で形にしてやる」


 ゼルガンが力強く宣言し、一同の胸は高鳴る。

 だが、話はまだ終わらない。

 ソーマは深く息を吸い、机に視線を落とす。


「そして……今回、お願いしたい本命があります」


 ゼルガンの鋭い目がソーマを射抜く。


「ほう? 何だ?」


「……銃です」


 その瞬間、鍛冶場の空気が一瞬で張り詰める。

 火花が散る炉の音だけが響く中、ゼルガンの目がぎらりと光った。


「……詳しい話を、聞かせてもらおうか」


 こうして、新たな装備作りの幕が開かれた。

 果たしてゼルガンは銃を作る事が出来るのか?

 そしてソーマは上手く説明ができるのか?


※作者からのお願い


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