表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第五章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第四章:観光気分? いいえ、運命のフラグです

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

69/117

69:崩れゆく戦線と最後のフラグ

 轟音と共に、黒き巨蛇の尾が地を薙いだ。

 空洞の床が爆ぜ、巨大な石柱が粉々に砕け散る。

 岩片が雨のように降り注ぎ、兵士の悲鳴と共に血飛沫が舞った。


「くっ――!」


 ソーマは仲間を庇うように飛び込み、必殺の一突き(スティングドライブ)で尾の一撃を受け止めた。

 刹那、全身の骨が悲鳴を上げ、衝撃で視界が真っ白に弾け飛ぶ。


「ぐぅぅぅ……っ!」


 弾き飛ばされ身体が岩壁に叩きつけられ、肺の空気が一気に押し出される。

 喉に血の味が広がった。


「ソーマさん!」


 クリスの悲鳴。

 彼女は息を荒げながら両手を掲げ、光の障壁を展開する。

 迫り来る瘴気が弾かれ、ソーマの体を覆った。


「大丈夫だ……まだ、戦える!」


 血混じりの息を吐きながら、ソーマは剣を握り直した。

 だがその声は、自分に言い聞かせるような震えを帯びていた。


 戦況は刻一刻と悪化していた。

 周囲に布陣していたエルフ兵士たちが次々と崩れ落ちていく。

 瘴気に肺を焼かれ、視界を奪われ、武器を取り落とす音が重なった。


「か、体が……動かない……!」

「ぐっ……視界が……!」


 その呻きは、ソーマの視界に無数の赤い光として浮かび上がった。


(また……! また全員が死ぬ未来を見せられるのか! 壊さなきゃ……!)


《フラグ解析開始……》

《因果構造:複雑化……異常値上昇……》

《提示:撤退を推奨します》


「撤退……?」


 ソーマは荒い息を呑んだ。


 確かに、今のままでは勝てない。

 撤退すれば仲間の命は救える。

 だが――


「退いたら……エルフ兵は全滅だ!」


 ソーマは自分を奮い立たせるように叫んだ。


「ソーマ、現実を見ろ!」


 ジョッシュが血に濡れた顔で怒鳴る。


「こっちが生き延びなきゃ意味ねぇだろ! 全員死んだら、何を守ったことになる!?」

「でも……世界樹の根は!」


 エルーナが唇を震わせる。


「ここで食い止めなきゃ、森も、大陸も……!」


 その叫びと同時に、巨蛇の顎が不気味に開いた。

 漆黒の瘴気が奔流となり、空洞を埋め尽くすように吐き出される。


「【セイクリッドバリア】!」


 クリスが結界を張るが、圧力で罅が入り、全身を震わせた。


「も、もう……限界です!」

「くそっ……!」


 ソーマは剣を地に突き立て、視界に浮かぶノイズ混じりのウィンドウを睨む。


《解析継続中……》

《対象存在=■■■■■■■■■■……ダンジョンコアとの同化を確認》

《更に、世界樹の根と同化進行……》

《提示:撤退を推奨します》


「……ダンジョンコア……!?」


 ソーマの顔から血の気が引いた。


(あれはただの魔物じゃない……ダンジョンそのものの核が、姿を取っている……! しかも世界樹の根と融合……倒すことは、無理なのか……?)


 その考えに胸が締め付けられる。

 撤退すれば、エルフ兵たちは見捨てることになる。それで本当にいいのか?

 迷いの一瞬――巨蛇の尾が振り下ろされた。


「ソーマァッ!」


 ジョッシュが割り込み、バットで受け止める。

 骨が悲鳴を上げ、腕から血が噴き出す。


「っくそ……折れたかもな……!」


 苦悶に歪んだ顔で、それでも彼は笑った。


「……早くどうするか決めろよ、ソーマ!」

「ジョッシュ……!」


 ソーマは唇を噛み切り、血の味を広げる。

 その時――


「ソーマ! 見て!」


 エルーナの叫び。

 彼女の放った矢が、巨蛇の肩口に突き刺さっていた。

 通常なら鱗に弾かれるはずの矢が、淡く光を放ちながら肉を裂いていた。


「……効いてる!? 何をしたんだ?」


 ソーマの目が見開かれる。


「私の魔力を込めた特製の矢なら、鱗を貫けた!」


 エルーナは必死に弓を構え、震える声で続けた。


「でも……矢の残りは……!」


 矢筒の中は、数本しか残っていなかった。

 到底、この巨躯を仕留めるには足りない。


「……でも、魔力を一点集中すれば突破できるかもしれない……」


 ソーマは低く呟く。


「でも矢が足りない!」


 クリスが絶望に染まった声を上げた。


「どうやって……突破口を……」


 その時、ソーマの脳裏に過去の映像が閃いた。


『読み方が分からないんだ。針のような、釘のような……そんな奇妙な文字で』


 エルーナが以前、震える声で口にしていた言葉。


(……そうだ。あの時、彼女のギフトに浮かんだという文字。この世界には存在しない文字……あれこそが、鍵じゃないのか……!)


「エルーナ!」


 ソーマは振り返り、必死に声を張り上げる。


「頼みがある! あの……君のギフトの文字を、思い出して書いてくれ!」

「え……? 私の……ギフト……?」


 エルーナは驚きと戸惑いに眉を寄せる。


「確かに何かの文字だった。でも、それを今ここで……」

「頼む! 最後の望みなんだ!」


 ソーマは血に濡れた手を伸ばし、叫んだ。

 エルーナは決意の色を宿し、矢を収めて小さな羊皮紙を取り出す。

 矢じりで指先を切り、その血で震える指を走らせた。


 浮かび上がったのは――この世界には存在しない、見覚えのある文字。


「……これ、は……!」


 ソーマの目が大きく見開かれた。

 前世の物語でよく見た、あの文字だった。


 視界のフラグが激しく明滅し、頭の奥に警告音が鳴り響く。


《干渉起動――対象:■■■■■サーペント》

《構造解析開始……因果ポイントを特定……》

《提示:エルーナのギフトでコア破壊してください》


 ソーマはその通知を凝視し、息を呑む。


「まさか……エルーナのギフトが……突破口だったなんて……!」


 巨蛇の咆哮が空洞を震わせる。

 だがソーマの心を震わせていたのは、滅びの予兆ではなく――

 未知の文字が告げる、未来の可能性だった。

 エルーナのギフト予想できた人もいるのでは?

 次回明らかに!


※作者からのお願い


投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、↓の☆☆☆☆☆から評価頂き作品への応援をよろしくお願い致します!


お手数だと思いますが、ブックマークや感想もいただけると本当に嬉しいです。


ご協力頂けたら本当にありがたい限りです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ