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【第五章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第四章:観光気分? いいえ、運命のフラグです

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68:黒き大蛇と揺らぐ命のフラグ

 蛇の群れを蹴散らしながら、ソーマたちは地下空洞をさらに奥へと進んでいた。

 壁は自然の岩肌ではなく、どこか人工的に削られたような歪な模様を刻み、床には黒ずんだ瘴気の染みが脈動するように広がっている。


「……なあ、これって」


 ジョッシュがバットを肩に担ぎ、眉を寄せる。


「洞窟ってより……なんか、ダンジョンっぽくねぇか?」

「ええ」


 クリスが結界の杖を構えながら応じる。


「岩の配置や通路の広がり方が自然のものとは違う。……まるで、意志を持って形作られているように」


 ソーマは黙って壁に触れた。

 冷たい石の奥から、かすかな震え――脈動が指先へ伝わる。


(やっぱり……ここはただの抜け道じゃない。世界樹の生命力を糧にして、構造そのものが変質してる。まるで……)


「……ダンジョン化している」


 小さく呟いたその言葉に、エルーナの目が鋭く光った。


「私も、そう感じてた。世界樹は大陸の命の根。もしその根元が侵されてるのなら……」


 声が震え、吐息まで重くなる。

 その時、奥から大地を揺らす轟音が響いた。

 ――ドォォォン、と空気ごと叩き潰す衝撃。


「戦闘音……?」


 ジョッシュが目を細める。


「……もうすぐ、根元に辿り着く」


 エルーナが矢筒を握りしめ、駆け出した。

 湿った空気が震え、血錆のような匂いが濃くなっていく。

 そして――視界が一気に開けた。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 そこは大聖堂のような地下空洞だった。

 天井は遥か上にそびえ、光苔が蒼白に瞬く。

 絡み合う世界樹の根が柱のように幾重にも張り巡らされ、その間からは清冽な水が泉のように湧き出していた。


 だが、その神秘はすでに穢れていた。

 水は濁り、根は黒ずみ……

 そこに鎮座する影が、全ての汚染の源だった。


 ――黒き巨蛇。


 鱗は黒曜石のように硬質で、光を拒絶する漆黒。

 体長は数十メートル。

 ひとたび身をくねらせるだけで岩盤がひび割れ、尾が薙ぎ払えば岩壁ごと粉砕する。

 吐息は瘴気を帯び、空気を腐らせ、世界樹の根を黒く侵していく。


「な、なんだありゃ……!」


 ジョッシュが絶句した。


「……世界樹の力を吸い取っている?……」


 クリスの声は震えを隠せない。

 戦場には既に数十名のエルフ兵士が布陣していた。

 矢を放ち、槍を突き、魔法を放っている。


「効かん……!」

「魔法も……弾かれる……!」


 火球も氷槍も、鱗に触れた瞬間に弾かれ霧散する。

 槍の突きも刃を立てられず、軋む音を残すだけだった。


「……通じない……!」


 ソーマの喉がひりつく。

 その瞬間――視界の隅に淡い光が浮かび上がる。

 ソーマの前に、あの忌まわしいウィンドウが開いた。


《アストレイ、エルーナ、エルフ兵士たちの死亡フラグが発生しました――破壊しますか?》


(やっぱり……! 全員が死ぬ未来が見えてる!)


《フラグ発生確認――破壊対象:『アストレイ、エルーナ、エル……兵死──フラグ』》

《因果構造:進行率:5%……17%……29%……》


――ガガッ……ザザ……ッ!


《原因:循環……矛盾……干渉確認 ■■■■■……エラー発生……因果汚染率……上昇……》

《因果汚染率――急上昇》

《提案:撤退……or……コア破壊選択ヲ……早ク……早ク……早ク……》


「……っ!? ぐああっ……!」


 ソーマは頭を押さえ、視界が揺らぐ。


「ソーマさん!?」


 クリスが駆け寄る。


「だ、大丈夫だ……!」


 笑みを作りながらも、冷たい汗が頬を伝う。


(あの時の虫の女王とは比べ物にならない……こいつは、フラグそのものを拒絶する存在だ)


 背筋が冷たく震える。


「おいソーマ! 突っ立ってんな! エルフの連中、持たねぇぞ!」


 ジョッシュが怒鳴る。


「……わかってる!」


 ソーマは剣を構え直し、叫んだ。


「みんな! 俺の指示に従って動け! そうしなければ全員やられる!」


 ソーマは声を張り上げた。

 だが、エルフの兵士たちは一瞬だけ振り返ったものの、すぐに顔を背けた。


「部外者に指図される筋合いはない!」

「我らが命は女王と世界樹に捧げられている!」


「っ……!」


 ソーマは歯噛みする。


(このままじゃ、本当に――!)


「ソーマ!」


 ジョッシュが叫ぶ。


「もう説得してる暇はねぇ! 俺らでなんとかするしかねぇだろ!」

「……わかってる!」


 ソーマは蜂王剣(レギーナスティング)を握り直し、目の前の巨蛇を見据えた。


「クリス、支援を!」

「はい!」


「ジョッシュ、炎を! 鱗を少しでも焼け!」

「任せろ!」


「エルーナ、急所を狙える隙を作ってくれ!」

「了解!」


 四人が同時に駆け出す。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 巨蛇が低く唸る。

 次の瞬間、巨大な尾が横薙ぎに振り払われた。


「くっ!」


 ソーマはすんでのところで飛び退き、岩壁に叩きつけられる兵士の姿を目にする。

 血飛沫が散り、悲鳴が響いた。


「やめろぉぉぉっ!」


 ジョッシュの炎球が炸裂する。

 だが炎は表面を舐めるだけで、鱗は黒々と輝いたまま。


「硬すぎる……! 普通の攻撃は通用しない!」


 クリスの結界が尾の直撃を防ぐが、衝撃で膝をつく。


「ソーマさん援護します!」


 ソーマの体に光が走る。

 加速した身体で蛇の腹に斬撃を叩き込む。


「――っ、貫けぇぇぇッ!【スティングドライブ】!」


 ソーマの鋭い突きが鱗と鱗の隙間にめり込む。

 だが――深く入る前に弾かれた。


「ぐっ……硬度が桁違いだ!」

「なら、これで!」


 エルーナの矢が目を狙う。

 だが瞼が瞬きのように閉じられ、矢は弾かれた。


「そんな……!」


 巨蛇の口が開き、瘴気の奔流が吐き出される。

 兵士たちが次々に倒れ、毒に蝕まれる。


「力が……抜ける……!」

「うあっ……!」


 フラグがまた次々に点灯していく。


(このままじゃ、全滅……!)


 歯を食いしばり、ソーマは叫んだ。


「どうすれば、このフラグを壊せる……!?」


 黒き巨蛇はなおも暴れ狂い、世界樹の根を黒く染めていく。

 第4章ボス戦開始。


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