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【第五章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第四章:観光気分? いいえ、運命のフラグです

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62:黒曜の女王と気さくなフラグ

 南の森を抜けた先に現れたのは、黒曜石のごとき城壁だった。

 陽の光を受けて漆黒に輝き、アスエリスの白亜の都とはまるで対照的。


「……すごい」


 思わずクリスが息を呑む。

 その瞳には畏れよりも、どこか憧れの光が宿っていた。

 門の前に立つダークエルフの兵たちは、三人の人間とフォレストエルク、そしてその傍らに立つエルーナを見るとすぐに槍を下ろした。


「お帰りなさい、エルーナ」


 ソーマたちは驚く。

 兵の声には、親しみすら込められていた。

 エルーナは小さく笑って肩を竦める。


「ただいま。こっちは……私を助けてくれた人達だよ」


 兵は三人を一瞥し、そして穏やかに頷いた。


「ならば入城を拒む理由はありません。ようこそ、アスヴェリスへ」


 昨日までアスエリスで幾度も門前払いを食らったソーマたちは、拍子抜けして顔を見合わせた。


「歓迎……されてる?」


 ジョッシュが小声で呟く。


「どうやら、ここは違うみたいですね」


 クリスの頬に安堵の色が広がる。

 黒き都に足を踏み入れると、そこには驚きの光景が広がっていた。

 街路には活気が溢れ、露店の香辛料の匂いが風に乗って漂う。

 行き交う人々は確かにダークエルフが多いが、人間や亜人の姿すら珍しくない。


「アスエリスじゃ、こんな景色ありえねえな……」


 ジョッシュは目を丸くし、通りを見渡す。

 この町の人々は人間の姿を見ても眉をひそめることなく、むしろ物珍しそうに声をかけてくる。


「旅の方? よかったら寄ってって!」

「おー、立派なフォレストエルクだな!」


 ソーマは胸の奥がじんわりと熱くなるのを覚えた。

 ――拒絶ばかりの世界樹の都と、まるで違う。

 同じ大陸でも、ここまで態度が変わるものなのかと。


「ね、言ったでしょ?」


 エルーナが得意げに微笑んだ。


「アスヴェリスは誰でも受け入れてくれるんだよ」


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 街を抜け、そのまま城へと向かう。

 通常ならば何重もの手続きを経てしか入れぬはずの城内へも、エルーナの案内で難なく通される。


「……本当に大丈夫なのか?」


 ソーマが思わず問いかける。


「うん。すぐに会えるよ。だって……女王様はそういう人だから」


 エルーナの言葉には迷いがなかった。

 そして、漆黒の回廊を抜けた先。

 広間の玉座に座っていたのは、一人の女性だった。


 長い銀髪に赤紫の瞳。

 豪奢な衣装を身にまといながらも、足を組んで気さくに笑っている。

 その姿は、荘厳さよりも人懐っこさを前面に出していた。


「おかえり、エルーナ!」


 朗らかな声が広間に響く。


「ただいま、ルーナ様」


 エルーナが一礼すると、女性はひらひらと手を振った。


「よそよそしいのはやめてってば。ほら、こっちに来なさい」


 ――この人が女王?

 ソーマは目を疑った。

 あまりにも気さくで、威厳を強いる気配がない。

 ルーナと呼ばれた女王は、すぐにソーマたちへ視線を向ける。


「ふむ……そっちの人は、エルーナの友達かな?」

「はじめまして女王様。俺はソーマ。こっちはジョッシュ、そしてクリス。勇大陸アスヴァルから来た冒険者です」


 ソーマは胸を張り、正直に告げた。


「他国の冒険者だって? いいじゃない。面白そう!」


 ルーナは子供のように笑った。

 その態度に、クリスも緊張がほぐれて小さく笑みを浮かべる。


「……驚きました。こんなに気さくな女王様がいらっしゃるなんて」

「で、用件は?」


 ルーナは前のめりに問いかける。


「ただの観光じゃないんでしょ?」


 ソーマは息を吸い、真っ直ぐに告げた。


「アスヴァルの依頼で……世界樹の様子を確かめに来ました。けれど、アスエリスでは門前払いを受け……」

「ふむふむ」


 ルーナは頷きながら頬杖をつく。


「それで、困ってここに来たと」

「はい。アスヴェリスなら、何か道が開けるんじゃないかと」


 ソーマの声には必死さがにじんでいた。

 王女はしばし目を伏せ、思案するように唇に指を当てる。

 広間に沈黙が落ちる。

 緊張に耐えきれず、ジョッシュがぼそりと呟いた。


「……やっぱダメか」


 だがルーナは、ふっと笑って立ち上がった。


「ちょっと待ってて」


 言うなり軽い足取りで奥へ消えていく。

 残された三人は顔を見合わせた。


「……軽いな」


 ジョッシュが呆れたように言う。


「でも、悪い人ではなさそうですよ」


 クリスの言葉に、ソーマも小さく頷いた。

 気さくだが、芯の強さを感じる。

 そんな人物だった。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 やがて再び現れたルーナの手には、一枚の書状があった。

「待たせたね。これを持っていくといい」


 差し出された羊皮紙には、鮮やかな紋章と封蝋。

 そこには『アスヴェリス女王ルーナ』の署名が刻まれていた。


「……これは?」

「アスエリスの女王――エーメル宛ての紹介状だよ。あの子なら、きっと君たちの話を聞いてくれる」


 ソーマの目が大きく見開かれる。

 アスエリスの門を突破する鍵が、ここにあった。


「いいんですか……?」

「もちろん! 面白そうだもの」


 ルーナは悪戯っぽく笑った。


「世界樹の件、私も気になってたしね。君たちが動いてくれるなら大歓迎だよ」


 ソーマは深く頭を下げる。


「感謝します……女王様」

「ふふ、堅苦しいのはなし。ルーナでいいよ。だって――」


 彼女は楽しそうにウィンクした。


「君たちはもう、エルーナの友達なんだから」


 その言葉に、ソーマの胸は熱くなる。

 拒絶と閉ざされた門の記憶が、ようやく癒されていくような気がした。


 こうしてソーマたちは、新たな希望を手にしたのだった。

 ルーナ女王はもちろん褐色グラマラスなイメージです。


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