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【第五章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第四章:観光気分? いいえ、運命のフラグです

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61:アスヴェリスへ、新たなフラグと共に

 森の奥、湿った土の匂いに混じって焦げた草の臭いが鼻を突く中、四人は互いに呼吸を整えていた。

 足元にはまだ、戦いの跡として横たわる蛇の死骸。

 静寂が戻った森に、微かに水滴が葉を打つ音だけが響いていた。


「……ふぅ、危なかったな」


 ジョッシュが肩の汗を拭いながら言う。

 声には安堵と緊張が入り混じっていた。


「お前が飛び出さなかったら、あの子はやられてたぜ」


 その言葉に、フードを脱いだ少女――エルーナは首を振る。


「いや……そもそも私の不注意だったんだ。助けてくれて、本当にありがとう」


 金色の瞳がまっすぐソーマを見つめる。

 その視線に射す光に、ソーマは思わず目を逸らした。

 胸の奥が熱くなるのを感じる。


「……気にしないでください。あの状況だったら誰だってそうしました」


 クリスが口元に柔らかい笑みを浮かべる。

 その笑みは戦いの緊張を溶かすように、周囲に温もりをもたらした。


「改めて、私はエルーナ・バーン。……見ての通り、ハーフエルフなの。よろしくね」


 少女の声は明るく澄んでいて、戦闘後の硬直した空気を柔らかく包む。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 しばらく歩き、森の奥にある小さな泉で休憩を取った。

 水を汲み、乾いた喉を潤すと、自然と会話が弾む。


「それで……皆はどうしてこんな所に?」


 エルーナが好奇心を滲ませ、問いかける。

 ソーマは少し考えた後、率直に答えた。


「俺たちは世界樹の様子を見に来たんだ。……門前払いだったけどな」

「……世界樹を?」


 エルーナの目がわずかに揺れる。

 期待と不安が入り混じった複雑な表情だ。


「アスヴァル国からの依頼なんです。けれど、王都の門番にもギルドにも取り合ってもらえなくて……」


 クリスが言葉を継ぐ。

 淡い疲労の色が表情に現れる。


「それで、南にあるアスヴェリスに向かえば何とかなるんじゃないかって……」


 ジョッシュが肩をすくめ、少し笑みを漏らした。

 エルーナは一瞬黙り込み、やがて小さく笑った。


「……そういうことなら、私が案内するよ」

「え?」


 三人が同時に声を上げる。


「私はアスヴェリスで暮らしてるの。ずっと。だから……一緒に行こう。きっと力になれるよ」


 ソーマはその言葉に驚きつつも、胸の奥に暖かなものを感じた。

 暗い森に小さな灯りがともったような心地。


「いいのか?」

「もちろん。助けてもらった恩もあるし……」


 エルーナはにこりと笑った。


「それに、なんだか放っておけないんだ。あなたたちのこと」


 その笑顔に、クリスがほっと息を吐く。


「……ありがとう。心強いです」


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 夜、森の中で焚き火を囲む。

 フォレストエルクは近くで休み、火の粉が小さく舞う。

 赤い炎に照らされた顔には、戦いの余韻と緊張の残滓がまだ残っていた。


「……ねえ、エルーナはどうして一人で森に?」


 クリスが尋ねる。


「森でちょっと調べごとをしてたの」

「こんな危険な森に一人で?危なくないのか?」


 ジョッシュが眉をひそめる。


「この森はエルフにとって庭みたいなものだよ。それに……私、昔から一人だったから」


 エルーナは膝を抱え、火を見つめる。


「私は人間とエルフの子供。ハーフエルフはエルフにとって、異種族以上に忌むべき存在。産まれたばかりに捨てられて、アスヴェリスの女王様に拾われたの」

「女王が……?」


 ソーマは意外そうに眉を上げる。


「うん。女王様は、異種族だからって忌み嫌わないの。私もそのひとり。だからアスヴェリスは……家族みたいな場所」


 その声は明るいが、微かに寂しさも滲む。


「……俺も孤児院育ちだ」


 ぽつりと呟いたジョッシュに、クリスも続く。


「私も」


 二人の言葉に、エルーナの瞳が大きく見開かれる。


「……そうなの?」

「ああ。親なんて知らねえ。でも、仲間がいれば十分だった」


 ジョッシュは笑い、肩をすくめる。


「私も同じです。血のつながりはなくても、助け合える人がいれば……」


 クリスの言葉に、エルーナの胸が熱くなる。


「……そっか。じゃあ、ちょっと似てるんだね、私たち」


 小さな笑顔が、炎に揺られて柔らかく光る。

 ソーマは黙ってその光景を見つめる。

 自分とは異なる境遇だが、同じ痛みを知る者同士の共感がそこにあった。

 それは羨ましくもあり、心強くもあった。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 翌朝、鳥のさえずりで目を覚ましたソーマは、森の清々しい空気を胸いっぱいに吸い込む。

 隣で眠る仲間たちの寝顔に視線を向け、不思議な安堵を覚えた。


 フォレストエルクに跨がり、南へと進む一行。

 森を抜けた先に見えたのは、黒曜石のように輝く城壁。

 空を切り裂く尖塔がそびえ、妖しく美しい威容を放っていた。


「……あれが、アスヴェリス」


 エルーナが誇らしげに告げる。

 ソーマはその光景を胸に刻み、静かに呟いた。


「ここで、何か情報があればいいんだが……」


 ダークエルフの都――アスヴェリス。

 新たな舞台が、彼らを待ち受けていた。

 ダークエルフのお姉さんに優しくされたい。

 褐色美人いいですよね。


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