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6:早く帰れると思ったら帰れないフラグが立った

【冒険者ギルドマスター:カルヴィラ・ヴァラン視点】


 冒険者ギルドのギルドマスター室で、私は今日もクエストの事務処理に追われていた。


(南西のゲシュ町周辺でゴブリンの増加傾向ねぇ。……これはダンジョン発生の兆候かもしれない。パトロール依頼でも出しておくかね。……こっちは国からの依頼で、翠大陸アスエリスの世界樹の様子を確認して欲しいと来たか。うーん、Cランク以上にするか、Bランク以上にするか悩ましいねぇ。ま、様子見だけならCランクでも問題ないか。旅費を多めに出せば行きたがるパーティーもあるだろう)


 報告書の確認に始まり、異変に応じた調査依頼の作成、そして依頼内容に応じてどのランクに任せるかの判断。これがギルドマスターの仕事さ。


 かつて冒険者だった頃は、『ギルマスなんて偉そうに椅子にふんぞり返ってハンコ押すだけ』なんて思ってたもんだけどねぇ……

 でもまぁ、冒険者たちのためにもなる仕事だ。やりがいはあるよ。


(さて……特に急ぎの報告もなさそうだし、今日は久しぶりに定時で帰れそうだね。旦那が晩ご飯作ってくれてるだろうし、私はつまみでも買って、晩酌にとっておきのワインでも開けるとするかね)


 今日は4月1日。

 学園を卒業した若造たちの冒険者登録やパーティー結成の事務処理がメイン。

 先輩冒険者たちも今日は結成記念日ってことで軽めのクエストをこなして、夜はお祝いモードが多い。

 だから私のところまで上がってくる報告も少なくて助かるってわけさ。


(若いのたちも明日から本格的にクエストを受け始めて忙しくなるだろうし、こういう日くらいはさっさと帰るのが“できる大人”ってもんさ)


 そう思って、愛する旦那が待つ家へと帰り支度を始めようとした――その時だった。

 廊下を駆ける足音。

 慌ただしい足音が近づいてきたかと思うと、ノックもなく部屋の扉が勢いよく開かれた。


 そこに飛び込んできたのは、大きな胸を揺らしながら現れたメルマ。

 ――その瞬間、私の優雅な夜は儚くも崩れ去る予感がした。


「ノックもせずに入ってくるなんて、よほどの非常事態かい?」

「カルヴィラさんっ! これは一体どういうことですかっ!」


 彼女はそう言って、一枚の書類を机に叩きつけた。


「落ち着きなさいよ。可愛い顔が台無しだよ。何々……?」


 私は書類に目を通す。

 ――それは、今日Cランクに昇格した“勇者の卵様”から提出された、パーティー脱退届だった。


「パーティーの脱退届って、ギルドマスターが用意するって事は、カルヴィラさんもご存じですよね? どうしてソーマさんが脱退しなきゃいけないんですか!」


「待った待った。確かに、私は勇者の卵様に書類は渡したけど、そのときに『一晩よく考えるんだよ』って忠告はしたんだよ? ソーマ君が犯罪やら問題行動を起こす子じゃないのは分かってる。若いパーティーによくあるすれ違いなら、話し合いで解決すると思って、きっかけを与えただけさ。まさかその日のうちに出してくるとは、私も思わなかったよ……」


 詳細不明ギフト保持者に関する問題は、世界中のギルドでたまに起きる厄介事だ。

 そのギフトに希望を見出し、冒険者になったものの、スキルが発動せず無茶をする人間を、私は何人も見てきた。


「そもそも、あのパーティーの担当はメルマじゃないだろ? ツィーナはどうしたんだい?」

「ツィーナさんなら、『ユーサーさんのCランク昇格のお祝いしなきゃ』って、さっさと帰りましたよ。そのおかげで、私が対応することができて良かったですけどね」


(ツィーナのやつ、普段は真面目なのにイイ男が絡むとダメだねぇ。ま、でも対応したのが真面目ちゃんのメルマだったのは、ソーマ君にとってはツイてたってことかね)


「書類を見る限り、ちゃんとサインも魔道認証もされてる。不備はないね。一体、何が問題なんだい?」

「ソーマさん……『自分が悪いから納得して書いた』って言ってましたけど、そんなわけないじゃないですか! あんな顔、してましたよ……そんな顔、するわけない……」


(ここにもイイ男に心を乱される乙女がひとり……でも、さて、どうしたもんかね)


 ソーマ君のことは、私も気にかけていた。

 年々早まっていく魔王復活の予兆、そして最近増えている魔物の異常行動。

 そのすべてを考えると、“その時”が近づいているのかもしれない。


 ソーマ君は、【フラグ】という詳細不明のギフト保持者。

 スキルを使いこなせるようになれば、戦力として期待できると思っている。

 だからこそ、彼には「無理はするな」と、見かけるたびに声をかけていた。


 勇者の卵様たちのパーティーと共に、スキルを使わずにCランクまで食らいついていた実力は本物。

 ギルドカード上ではまだDランクだが、明らかにCランク相当の実力はある。


 ――だが、ギフトを制御できず、スキルも発動していないという一点で、Cランク昇格を見送ったのは私自身だ。

 まさか、それがこんな形で問題になるとは思わなかった。


「もうこんな時間だけど……仕方ない。ソーマ君と話す必要があると判断するよ。メルマ、付き合っておくれ」

「カルヴィラさん……ありがとうございます! すぐソーマさんを呼んできます!」


(まったく、たまに早く帰れそうだと思ったらこれさ。できる大人になるには、まだまだ修行が足りないってことかね。……まあ、ある意味、冒険者らしいといえば冒険者らしいか)


 メルマが部屋を飛び出していったあと、私はソーマ君を連れてくるのを待ちながら、愛しい旦那に『今日は遅くなる』とメッセージを送ったのだった。

 まだ出てきていないし今後そこまで書くつもりがあるか作者にもわからんないキャラの名前考えてる時に「Aの名前とBの名前をこういう風にすればこういう事にできるやんけ、わし天才か」と勝手にウキウキしてます。

 主人公もこっちにした方が名前の響きが良い気がするとかまだ出てきてもいない父親の名前をこの設定追加したからこうするとおもろいやんけとコロコロ変わりました。

 思い付いてすぐ行動するのってたまに怖いねって話です。


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― 新着の感想 ―
なるほど。脱退にはギルドマスターへの根回し(?)も必要なのですね。
ギルドマスターも脱退を認めていると思っていましたけど、実は違ったというのは驚きました。 でも、抜けられて逆に良かったのかも知れませんね。 考えろと言われて考えない訳ですし、全員が嫌っていた訳ですし………
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