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【第五章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第四章:観光気分? いいえ、運命のフラグです

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52:新装備、試運転のフラグ

 ゼルガンさんから新装備を受け取った数日後――


 朝のギルドは活気に包まれていた。

 革鎧を鳴らしながら談笑する冒険者たち、依頼書を求めて殺到する人の列。

 奥のカウンターでは、ペンの走る音と紙を束ねる音が重なって響く。


 ソーマたちは列の脇を抜け、受付のメルマも元へ歩み寄った。


「おはようございますメルマさん。新装備を試したんですけど何かちょうどいい依頼、ありますか?」

「ちょうどいい依頼ですか……あ、そういえば」


 メルマが一枚の依頼書を取り出し、机の上に置いた。


「新種の虫型魔物ですか?」


 ソーマが眉を寄せて書面を覗き込む。


「はい。東のアンジュ村近隣の森に、今まで確認されたことのない虫型魔物が現れています。鉱石のような外殻を持ち、しかも炎を吐くそうです」

「虫が炎って……反則じゃないか?」


 ジョッシュが半ば呆れたように言う。


「先月のセクト樹海の件もそうですが、虫型魔物の被害が増えています。しかも――」


 メルマの声がわずかに落ちた。


「倒しても、例の報告通り()()()()()()んです。素材が取れないから、対策を立てられない。危険な相手ですよ」


 依頼書の備考欄にはこうあった。


【Cランク】アンジュ村近隣の森に出現した虫型魔物(討伐任務)

 → 炎を吐くムカデ。【カルドムローラ】と名称。挑んだ冒険者は炎弾によって大やけどを負い、撤退。外殻は硬く、隙間以外への攻撃は無効化される恐れあり。高リスク。


「いいな。新装備の試しにはもってこいだ」


 ジョッシュの口元に笑みが浮かぶ。


「危険度は高いですけど……きっといけます」


 クリスが、抱えていた盾をそっと撫でた。


 ――こうして討伐依頼は受理された。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 王都から東へ二日。

 途中の町で一泊し目的地のアンジュ村で補給を済ませ、さらに半日森の奥へと進む。

 足元の土は黒く焦げ、木々の幹には丸く抉れた焼痕があった。


「……まるで大砲を撃ち込まれたみてぇだな」


 ジョッシュが焦げ跡を指でなぞる。


「これが炎弾の威力か。正面から受けたら即終わりだな」


 ソーマは剣の柄に手を添え、視線を巡らせる。

 クリスは女王蜂の鎧から再構成された小型盾―― 蜂王盾(クイーンズミラー)を抱え、何度も角度や重心を確認していた。中央の金色の水晶が淡く脈打ち、森の光を反射している。


「この盾なら……守り切れます」

「頼もしいな」


 ソーマは短く返す。


 その時――


 不快な金属音が森を震わせた。

 甲殻が擦れ合うギチギチという音、湿った土を蹴り進む無数の脚の音。

 茂みを割って現れたのは、全長五メートルのムカデ。

 鉱石のように硬い外殻は節ごとに輝き、腹部の奥で赤い器官が脈動している。


 カルドムローラが、金属を引っ掻くような咆哮を放った瞬間――


「行くぞッ!」


 ソーマが地を蹴る。

 足裏に集めた魔力が爆ぜ、風を裂く。

 一気に側面へ回り込み、蜂王剣(レギーナスティング)が閃く。


「――貫け、【スティングドライブ】!」


 鋭い突きが装甲の継ぎ目を叩く。

 甲高い悲鳴が森にこだました。


「キィィィッ!」


 ムカデが尾を振り下ろす。


「遅い」


 鎧蜂(レギナギア)が青白く光り、ソーマの姿が掻き消える。

 実際には極限の加速で軌道を外れたのだ。


「今だ、ジョッシュ!」

「おうっ!」


 ジョッシュが飛び出す。

 彼の足元で、蜂靴(スティングスパイク)が低く唸りを上げた。

 一歩で弾丸のような加速、地面を滑るスライディングで懐に潜り込み――


「おらぁっ!」


 踵で腹部を蹴り上げる!


《スキル:盗塁 が解放されました》

《スキル:スライディング が解放されました》


「二つ同時に新スキルかよ!最高だ!」


 一ヶ月の地道な走り込みが、ついに形になった瞬間だった。

 衝撃でムカデがのけぞる。

 だがすぐに後退し、腹部が赤く光を帯びる。


「来るぞ、炎弾!」


 ソーマの警告と同時に、火球が弾丸のように迫る――


「任せて!」


 クリスが蜂王盾(クイーンズミラー)を前に出す。

 光が水面の波紋のように広がり、炎弾を無音でかき消した。


「まだ来る!」


 二発目、三発目、四発目――すべて盾が弾く。

 カルドムローラが体を丸め、節を噛み合わせて回転を始めた。


「回転突撃……!」

「もう退かない!」


 クリスは蜂王盾(クイーンズミラー)に魔力を集中する。


《スキル:セイクリッドシールド が解放されました》


「これは……私にも新しいスキルが!」


 次の瞬間、蜂王盾(クイーンズミラー)を中心に光の壁が展開され、回転突撃を真正面から受け止める。

 腕が痺れ、足元がめり込むが――


「はあぁっ!」


 衝撃を弾き返し、ムカデを逆方向に吹き飛ばす。


「ナイス、クリス!」

「今です、ソーマさん!」


 ソーマが構える。

 蜂王剣(レギーナスティング)が唸り、蜂の水晶核で作られた刃に魔力が宿る。

 金色の筋が脈動し、空気が震える。


「――弾けろ、【スティングバースト】!」


 一歩で距離を詰め、空間を裂く突き。

 装甲の隙間を抜け、心臓部へ到達――

 内部で魔力が炸裂し、閃光と衝撃波が走る。


「ギシャァァァアアア!」


 絶叫と共に、巨体が崩れ落ちた。


 静寂――

 焦げた葉がひらひらと舞い落ちる。


 ソーマは剣を収め、息を整えた。

 ジョッシュは得意げにブーツを見下ろし、クリスは盾を抱き締める。


「……やれるな、これなら」


 三人の瞳には、確かな自信と次の戦いへの意志が宿っていた。

 魂がこもった装備は、もう一人の仲間――

 そう感じながら、彼らは森を後にした。

 戦闘で使えるスキルがないソーマを活躍させる為に武器で補正しました。

 これで戦闘描写の幅が増えたはずです。


※作者からのお願い


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