5:ギルド説明回(受付嬢が立てる次のフラグ)
おかみさんにお礼を伝え、荷物を手に猪熊亭を出た俺は、パーティーからの脱退届を提出するため、日が傾きかけた夕暮れの中、冒険者ギルドへと足を運ぶ。
――俺たちが暮らす勇大陸アスヴァルでは、学園卒業と同時に「冒険者」「魔法」「商業」の三大ギルドへの登録が可能となる。
冒険者ギルドは冒険者の登録と管理を担っており、大陸内外を問わず活動の許可が出る数少ない機関の一つだ。
主な業務は、魔物討伐や探索任務の斡旋、冒険者の実績管理とランク付け、そして魔物の突発発生や緊急事態への対応・招集など。
冒険者ランクはE、D、C、B、A、Sの順に上がっていき、ギルドが認めた実績や経験に応じて昇格する仕組みだ。
Eランクは初心者向けの簡易任務のみだが、Dからは本格的な探索や討伐任務が可能となる。
Cランクになると一人前と認められ、危険度の高い任務や、"スタンピード"などの魔物大量発生に伴う緊急依頼の参加が義務付けられる。
Bランクからは特殊な魔物や複雑な調査任務、Aランクでは国家間をまたぐ重大任務も任され、最上位Sランクともなれば、大陸を代表する存在として、通常立ち入りが禁止されているダンジョンや領域へのアクセスも許可されるという。
魔法ギルドは魔法使いや錬金術師、学者たちの集いの場として機能し、日々情報交換や研究が行われている。
魔法理論や錬金術技術の最先端を追求し、その成果は新たな技術や産業に応用され、社会の発展に貢献している。
また、古代の魔法書や錬金資料の収集・保管も行い、後世に知識を継承する役割も果たしている。
商業ギルドは、商業活動全般の規制・管理を行う機関だ。
商売を行う者はギルド登録が必須で、安全な取引や流通の整備、特許や商標などの知的財産の保護も行っている。
商取引に関するトラブルや紛争の調停なども担っており、社会において欠かせない存在だ。
ちなみに、俺は時々デザインの依頼も受けるため、姉の勧めで冒険者ギルドだけでなく商業ギルドにも登録している。
冒険者ギルドに到着すると、館内は夕食時ということもあって比較的静かだった。
日中はクエスト報告で混雑する受付も、今は人影がまばらで、カウンターには受付嬢が一人だけ。
俺は迷わずそのカウンターへ向かう。
「冒険者ギルドへようこそ。こんな時間までお疲れ様です。ご用件は……って、あれ? ソーマさんじゃないですか? さっきクエスト報告に来られてませんでした?」
「ああ、メメさんがいてくれて助かったよ」
応対してくれたのは、このギルドの受付嬢の一人、メルマ・メイナさん。
俺は親しみを込めて“メメさん”と呼んでいる。
学園では一つ上の先輩で、ギフト研究会に所属していたが、当時はあまり接点はなかった。
それが今ではギルドで再会し、こうして頼りになる存在になってくれている。
金髪で耳元に編み込みを入れた髪型は一見ショートに見えるが、実は後ろでまとめられている。
おっとりした口調に青い瞳、甘い物が大好きという見た目どおりの性格だが、仕事はとても丁寧で誠実。
俺にとってはかなり頼れる受付嬢だ。
ちなみに、胸部装甲もなかなかの戦闘力を誇っている。
「ソーマさんの担当はツィーナさんでしたよね? 彼女ならさっき帰られましたよ?」
「うん、ツィーナさんじゃなくても大丈夫。今日は別件だから」
ちなみにそのツィーナさんというのは、【栄光への架け橋】の担当受付嬢で紅髪のツインドリルに露出度高めの扇情的な服をまとった受付嬢で、スタイルも抜群。
よくパーティーリーダーのユーサーに積極的なアプローチをしては、シオニーに妨害されている光景を見かける。
でも俺と接する時は事務的に淡々としていて、実はかなりの常識人なんじゃないかと思っている。
「今日はこの書類を出しに来たんだ。手続き、お願いできるかな」
「はい、では確認しますね……えっ!? パーティー脱退届!? どういうことですか!」
……やっぱり驚かれるよなあ。
ツィーナさんだったら『了解です』で淡々と処理してくれたかもしれない。
仕方なく、俺はパーティー脱退の経緯をメメさんに説明することにした。
「メメさんも知ってると思うけど、俺のギフトってずっと謎のままだし、スキルも発動できないでしょ?もうパーティー組んで一年経つけど、ユーサーたちはCランクまで上がったし、今の俺の実力じゃついていけないんだよ。だから、迷惑をかけないうちに、自分から抜けようと思ってさ」
あくまで俺の意思で脱退する――そう伝えておく。
今後もギルドと関わるであろうユーサーたちの評判を、わざわざ下げる必要もないから。
「そんな……なんでソーマさんが…… でもこの書類、本当に……すみません、ギルドマスターに確認してきますので、少々お待ちください!」
「いやいや、確認なんて必要ないよ。お互い納得したうえで提出してるし、もうすぐ営業時間も終わるから、迷惑かけたくないんだ」
「迷惑なんて……! ソー……いえ、冒険者さんのためなら、私のことなんてどうでもいいんです!すぐに確認してきますから、ここで待っててくださいね! 勝手に帰ったら許しませんからね!」
勢いよくそう言い放つと、メメさんはギルドマスターの部屋へと駆け出して行った。
……おかみさんもそうだったけど、どうしてこんな俺のことを、みんなそこまで気にかけてくれるんだろうか。
書いてる途中でこうすれば面白くなるんじゃねとついつい思いついてしまった設定を加えた結果、人物設定からやり直すことになったり辻褄合わせる為に今後問題が無いようにその問題に触れなきゃと思ったり、年齢にズレが発生するんじゃねと年表作って確認作業しています。
他の作者さん達は設定全部考えてから物語作ってるんですかね?
とりあえず今後矛盾が出ないようにしっかり管理しないといけないと思いつつどうせ思い付きで設定追加し勝手に苦労するんだろうなと思ってます。
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