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【第五章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第四章:観光気分? いいえ、運命のフラグです

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48:再始動のフラグ

 王都へと戻る道中、空はどこまでも高く、雲ひとつない青が広がっていた。

 まるであの騒動が夢だったかのように、街道には穏やかな空気が満ちている。

 ヒュッケ村での死闘も、あの異形の女王との対峙も、まるで別の物語のようにすら思えた。


 しかし、ソーマの胸の奥には、言葉にできない重苦しさが残っていた。


「……何かが……まだ、終わってない気がする」


 ソーマはつぶやくように言った。

 ジョッシュとクリスも黙って頷いた。

 彼らもまた、感じていたのだ。

 あの戦いの奥に、まだ何かが潜んでいることを。


 途中、ファルケ町に立ち寄り、アラダの店を訪れた。

 騒がしい町の喧騒の中、店の中はいつもと変わらぬ穏やかな空気に包まれていた。


「おう、おかえり。無事で何よりだな」


 アラダは変わらぬ調子で迎えてくれた。


「……お守り……壊してしまいました」


 ソーマは目を伏せ、胸から取り出した、割れたお守りの欠片を見せた。


「気にするな。それで命が助かったなら、むしろ本望ってもんだ」


 アラダは笑い、代わりに新たなお守りを差し出した。


「新しいお守りだ。受け取ってくれ」

「……ありがとうございます」


 礼を言い、店を後にする頃には、少しだけ心が軽くなっていた。


 再び王都へと向かう馬車の中。

 静かに揺れる車内で、ソーマはまた考えていた。


「……ゴブリン……虫……そしてダンジョン……。全部が偶然とは思えない」


 頭の中でバラバラな点を、必死で結ぼうとする。

 だが、まだ答えは見えなかった。


 やがて馬車は王都の南門をくぐり抜けた。

 懐かしい石畳の感触、賑やかな露店の声、人々の活気あふれる笑顔。


 だが――


「……なんだろう、帰ってきたのに……ここが少し遠く感じる」


 それは平穏への違和感だった。

 静かすぎる日常の裏に、何かが潜んでいるような気がしてならなかった。

 冒険者ギルドに顔を出すと、受付嬢のメルマが微笑んで迎えてくれた。


「ソーマさん、おかえりなさい。お疲れ様でした」


 いつもの笑顔。

 だがそれに甘えることはできなかった。

 報告を終えると、メルマはすぐに席を立ち、奥へと引っ込む。


 そして間もなく――


「ギルドマスターがお呼びです」


 通されたギルド奥の部屋。

 そこにいたカルヴィラの顔は、いつになく険しかった。


「セクト樹海の件、詳細に報告してもらおうか」

「……ユーサーたちは、もう来てるんですよね?」

「ああ。虫の群れ、異常個体、そして融合された女王の件も聞いている。ただ、君たちから見た視点での情報が欲しい」


 ソーマは頷き、ゆっくりと語り始めた。

 村での異変、ユーサーたちとの合流、セクト樹海のダンジョン化――そして、そして融合された異形の女王。


「……あの女王、間違いなく人為的なものです。誰かの意思を感じました。ゴブリンダンジョンの時と……似ている」


 カルヴィラの表情が一瞬、強張る。


「やはり……か」


 カルヴィラが眉をひそめた。


「最近、各地で似たような異変が報告されている。これはもう、偶然では済まされん。近いうちに、ギルドとしても本格的な調査を始める」

「……俺たちにも、できることがあるなら……動かせてください」


 ソーマの言葉は、自分でも驚くほど自然に口から出ていた。


「……君たち、疲れているだろう。少しは休め」

「疲れてます。でも……それ以上に、自分の力のなさを痛感しました。今のままじゃ、また誰かを守れない」


 カルヴィラはしばらく沈黙したあと、微かに頷いた。


「……分かった。しばらく休養を取れ。次の依頼が出たら、真っ先に連絡する」


 報告を終え、猪熊亭へと戻ると、おかみさんが笑顔で迎えてくれた。


「おかえり。よく無事で戻ったねえ。さあ、たんと食べて、今日はゆっくりおやすみ」


 テーブルに並んだあたたかな料理が、心までほどいてくれるようだった。

 夕食を終えると、ソーマたちは自然に部屋に集まっていた。


「……ユーサーたち、やっぱすごかったな」


 ジョッシュがポツリと呟いた。


「一発一発が重くて、無駄がない。完全に戦い慣れてるって感じだった」

「攻撃だけじゃない。連携も、判断も、全部……隙がなかった」


 ソーマも頷く。

 自分の戦いぶりが情けなく思えた。

 結局、指揮を執るにもユーサーたちの力がなければ何もできなかった。


「俺の指揮はユーサー達の戦力があってこそだった。俺自身は兵士を倒したり攻撃を逸らすだけが精いっぱいだった……」

「俺もだよ。新しいスキルは覚えたけど……すぐ息切れだ。火力も続かないし……」

「……私はまだまだ力不足です。攻撃は無理でも、皆さんをもっと守れるくらいの力が欲しい……です」


 悔しさが、静かに、だが確かに胸を締め付ける。

 だが――


「……でも、それって、前に進んでるって証拠だよな」


 ソーマが自嘲気味に笑うと、窓からの風が髪を揺らした。

 その風は、どこか未来の匂いを運んでいる気がした。


 ソーマは立ち上がり、窓の外に目を向ける。

 星のまたたく夜空の下、遠く王城の塔が見えた。


「やることは、山ほどある。まだ、全然足りない。……もっと強くなりたい。ユーサーたちと並べるくらいに。いや、それ以上に――俺は、守りたい人たちを守れる力が欲しい」


 その言葉に、ジョッシュとクリスも力強く頷いた。


 静かに、けれど確かに。

 ソーマたちの、新たな挑戦が――幕を開けようとしていた。

 第4章のスタートです。

 ソーマ達の新たな決意。

 そして新たな旅立ちにご期待ください。


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