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【第五章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第三章:虫の知らせ? いいえ、抗うべきフラグです

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41:蟲の王、異常なフラグ

 ダンジョンと化した森――セクト樹海の奥を、ユーサーたちは迷いもなく進んでいく。

 その歩みは、もはや()()()ではなかった。

 彼ら自身がこの空間の主であるかのような、圧倒的な自信と余裕に満ちている。


「敵、接近。四体、左手から──」


 静かに告げるアイムの声。

 即座にエーデルが詠唱を紡ぐ。


「了解。【アイシクルランス】」


 氷の槍が音もなく放たれ、次の瞬間には木陰から迫っていた巨大な甲虫が貫かれていた。

 甲高い鳴き声すら上げる間もなく、その命は潰えた。


「……なんつー命中精度だよ。俺が手を上げる暇もねぇ」


 ジョッシュが苦笑しながら肩をすくめる。


「通常個体だけじゃない。さっきの特別種も一瞬だった……強すぎるよ、ユーサーたちは」


 ソーマが呟くように言うと、後方を歩くクリスが静かに頷いた。


「侵入者ではなく、()()()……そんな感じです」


 道の脇に潜んでいた虫たちは、気配を残す間もなく狩られていく。

 あまりにもスムーズすぎて、不気味なほどだった。


「……なんか、誘われてるみたいですね」


 クリスが立ち止まり、頭上の暗い天蓋を見上げる。


「確かに、変だな。敵の数も配置も、どこか()()()()()感じがある」


 アイムが眉をひそめ、感覚を研ぎ澄ませる。

 戦闘になるべき場面で、戦闘が発生しない。

 あたかも、ダンジョンそのものが()()()()()ようだった。


「敵が僕たちの力量を察知し、真正面からの決戦を選んだ……そう考えるのが自然かな」


 ユーサーが静かに言い、剣に手をかける。


「つまり、誘ってるのか」


 ソーマが呟く。

 背筋に微かな冷気が走った。

 アイムが再びエリアサーチを展開する。

 青白い光のラインが地形をなぞり、進路を浮かび上がらせる。


「行こう。敵がどんな策を巡らせていようと……僕たちの目的は一つ」


 ユーサーが歩みを進める。

 誰一人、ためらわない。

 その姿は、まさに()()と呼ぶにふさわしいものだった。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 ──そして数十分後。

 一行は、ダンジョンコアの間の手前に辿り着いた。


 それはまるで、地中に空いた蟻の巣の入口。

 だがその奥には、広大な空洞が広がっているのがわかる。

 濃密な魔力が漂い、皮膚に刺さるような圧を感じる。


《アストレイ、栄光の架け橋の死亡フラグが発生しました――破壊しますか?》


「っ!?待ってくれ!」


 ソーマが突然立ち止まり、全員に制止を促す。

 感じた。

 ――()()が発生したのを。

 自分にしか見えない、忌まわしきフラグの兆し。

 いつもの様に破壊しようと念じたその瞬間――


《フラグ発生確認――破壊対象:『アストレイ、栄光ノ架ケ橋、死──フラグ』》

《構造解析開始……因果ポイントヲ……ヲ……》

《原因:■■■■■……エラー発生……視界ノ奪取確認……┐××撃……ハ……ス……》

《提┤:撤退orコア破壊……選択ヲ、早ク、早ク、早ク……》


 ソーマの視界が揺らぎ、猛烈な頭痛が脳髄を貫いた。


「ソーマさん!」


 クリスが駆け寄り、即座に回復魔法を唱える。


「……っ、今、少しマシになった……ありがとう……」


(今のは……ただのフラグじゃない。こんな反応、初めてだ)


 ソーマが額を押さえながら顔を上げた。


「これ以上は危険だ。今日はここまでにして戻る。依頼としては十分達成している」

「なによそれ。ここまで来て手ぶらで帰れっての?」


 シオニーが眉をひそめる。


「今度来たら構造が変わっている可能性もあります。それに、私たちの体力もまだ十分」


 エーデルが淡々と告げる。


「中には虫どもの反応があるが、まぁクイーンアント程度。俺たちなら三手で終わるな」


 アイムが欠伸をしながら言う。


「どうせいずれ戦う相手なら、今片付けたほうが早い」


 ジェラウドが盾を打ち鳴らし、士気を高めるように言う。


「だから言ったんだ、僕たちだけでいいって。ここまで来たら……もう、戻れないよ」


 ユーサーが剣を引き抜き、ゆっくりと構える。


「ソーマさん……()()、感じたんですね」


 クリスが、少しだけ震える声で問う。


「あぁ……はっきりと。死のフラグ。しかも、異常な形で……」


 ソーマが息を吐く。

 重く、深く。


「けど……俺たちだけ撤退ってわけにもいかないよな」


 ジョッシュが笑いながら、バットを構えなおす。


「……わかった。行こう」


 ソーマは静かに頷いた。

 一行は、巣穴の奥へと進む。

 それは、このダンジョンにとって最後の障壁を越える行為だった。


 そして――ダンジョンコアの間。

 そこは異様な光景だった。

 巨大な空間の天井には無数の巣が張り付き、壁は粘液に覆われ、床は生温い呼吸のようにうねっていた。


 そして中央に、異形の影。


 女王アリのような巨体。

 背に六対の蜘蛛脚、さらにハチの羽が震えている。

 腹部には毒針、糸腺、複数の器官が融合した奇怪な形状。

 口元は鋏角と細い毒針が重なり、不気味に歪んだ女の面影が揺れていた。


 それは、アリ、ハチ、クモ。

 三種の蟲の王たる存在。


「うわ……何これ……」


 シオニーが絶句する。


「……最悪の融合体、ですね」


 エーデルが短く言った。


「ややこしい造形だが……つまり、ボスってことだな」


 アイムがナイフを構え一歩前へ。

 その瞬間、異形の女王が音を発した。

 音ではない、意識に直接響くような、脳髄を撫で回す不快な鳴き声。

 壁や天井から、無数の虫たちが蠢き、群がり始める。


「それでも、進むしかないんだろう?」


 ジェラウドが盾を構えた。


「当然だ。僕達は……ここで、終わらせる」


 ユーサーの手に、青白い稲光が走る。

 そして、異形の女王が――その羽を広げた。

 まるで、戦いの始まりを告げる号令のように。

 あれ?どっちが主人公だっけ?

 盛大なフラグを建てながらボス戦突入!


※作者からのお願い


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