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【第五章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第三章:虫の知らせ? いいえ、抗うべきフラグです

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40:共闘と、折れるはずのないフラグ

 一夜が明け、実家での朝食を終えたソーマたちは、身支度を整え、出発の準備を済ませていた。


 昨日の衝突を経て、胸にはわずかに不安が残っていた。

 だがそれ以上に、確かに腹を括った実感がある。


 ――もう、迷わない。

 壊すべきものは壊す。

 たとえそれが、決められた未来であっても。


 ギルドに向かう前に、ケンがソーマの肩を軽く叩いた。

 その隣では、ランがいつものように軽やかな笑みを浮かべている。


「死を感じて、それでも何とかできる力を持っているからと言って――過信するなよ。何が起こるか分からない、それが冒険者ってもんだ」

「……わかってるよ」


 ソーマの答えに、ケンはひとつうなずいて、少し遠くを見つめるような目になる。


「ま、俺も昔は無茶ばかりしてたもんだ。村のことは任せろ。もし何かあったら……迷わず戻ってこい」


 その目に映るのは、かつて若かった自分か、あるいは今のソーマか。

 今度はジョシュの前に立ち、ケンは腕を組んでにやりと笑った。

 ケンはジョッシュの方に向かい合う。


「そっちの坊主にもひとつアドバイスをくれてやろう。――魔力じゃなくて、()()を込めてみろ。何かが変わるかもしれん」

「……思い、ですか? 魔球を作るときに威力は調整してますけど……」

「違う。威力じゃなく、()()を乗せるんだ。技に、心を刻め。今はわからなくても、いざって時に思い出せばいい」

「……ありがとうございます。試してみます」


 一方、ランはクリスティーナのもとへと歩み寄る。


「ねぇ、クリスティーナちゃん。ちょっとだけいい?」

「どうかしましたか?」


 じっとクリスの顔を見つめたランは、何かを確認するように目を細め、やがて静かに微笑んだ。

 ランはクリスの顔を覗き込んだ後、何か納得したようにうなずく。


「聖女の力にのまれないで。あなた自身が消えてしまうから。――生きることを、何よりも大事にして」

「……はい。私、聖女になりたいわけじゃありませんから。必ず、生き抜いてみせます」


 別れの言葉を交わし、ソーマたちはギルドの集合場所へと向かう。

 朝のギルドは、いつもよりほんの少しだけ静かだった。


「来たな」


 ギルドの併設されている宿屋の方から現れたのは、ユーサー率いる【栄光の架け橋】の面々。

 昨日までの冷えた空気はまだ残っているが、どこか――違っていた。

 互いに腹を括った者同士の、静かな覚悟がそこにはあった。


「今日は……よろしく頼む」


 ユーサーが言うと、ソーマは静かに頷いた。


「こちらこそ」


 握手こそ交わさないが、互いに一歩だけ歩み寄ったような、そんな空気があった。


「じゃあ、目的地に向かうか。問題のセクト樹海だな」


 ソーマが地図を手に、皆を見回す。


「昨日の話だと虫たちはセクト樹海の方からやってきているらしい。俺たちも出会ったが虫たちを合体させたような特別個体も増えてるみたいだ」

「虫そのものは対処できるが、問題は数だな」


 ユーサーが剣を腰に収め、門の外を睨むように一歩踏み出す。

 そして、ソーマたちは異常の源――セクト樹海へと足を踏み入れた。

 鬱蒼としたセクト樹海に足を踏み入れると、すぐに異常が感じられた。


「……うわ、空気が、ねっとりしてる……っ」


 シオニーが顔をしかめ、手で払うように前方を払う。

 木々の影から響く、羽音。

 地面を這う微かな震動。

 まるで、森全体が()()()侵食されているかのような感覚。


「ここ……()()()()()()してやがるな」


 アイムが地面に目を落とし、数歩後ずさる。

 腐葉土の隙間には卵。

 枝の影には細い糸と巣穴。

 これは、ただの魔物の出現ではない。


 ギチギチギチ……カサカサ……ブゥゥゥゥンッ!


「来たぞ、構えろ!」


 ユーサーの号令と同時に、無数の虫型魔物が森の奥から襲いかかってくる。

 甲殻が軋む音。

 翅が震え、空を裂く音。

 鋭く、執拗に、群れは獲物を包囲してくる。


「そちらまで面倒を見るつもりはないぞ」


 ジェラウドが前に出て盾を構え突進を受け止め、瞬間、剣を振るい、アリ型の頭部を叩き潰す。

 だが――


「上!  空中から来てるぞ!」


 アイムが叫ぶ。

 蜂型の魔物が飛翔し、鋭い毒針を構えて舞い降りてくる。


「逃しません! 【アイスアロー】!」


 エーデルの氷の矢が放たれ、蜂の翅を撃ち抜く。

 一体、また一体と墜落するも――その数は減らない。


「うわっ、毒だ! 近寄るな!」


 ジョシュアが魔球を放ち、接近を阻む。

 だが、アリが囮になり、蜂が奇襲し、クモが毒で足止めをする――。


「……こいつら、種類が違うのに、連携してる……?」


 ソーマの声に、ユーサーが剣を構え直す。


「まとめて、薙ぎ払うだけだ」

「! みんな下がれ!」

「――【ライトニングブレード】!」


 剣を薙いだ瞬間、雷が閃光を放ち、前方の虫たちを一掃する。

 焼け焦げた残骸が辺りに転がる。


「少しくらい待てなかったのか? 下手をすれば巻き込まれていた」

「だから言っただろ。テンポが合わない。嫌なら後ろにいろ」


 そうもめている間にも、第二波の群れが出現。

 今度は特異な個体――多脚、羽根、甲殻が融合した異形が混ざっていた。


「今度は私達の番よ! クリス、結界を!」

「はい! 【セイクリッドバリア】!」


 聖なる光が展開され、パーティ全体を守る結界が張られる。


「ひれ伏しなさい…… 【ホーリーブレス】!」


 シオニーが杖を掲げ、聖なる光が波のように放たれる。

 眩い輝きが虫たちを焼き尽くす。


「氷の嵐よ、吹き荒れろ! 【アイスストーム】!」


 エーデルの詠唱により、結界の外に氷の嵐が渦巻く。

 風が唸り、氷が閃き、虫の群れを凍てつかせ粉砕する。

 やがて、光と嵐が収まった頃には、辺りには静寂だけが残されていた。


「……虫の気配は完全に消えた。さて、周囲を調べるぞ。【エリアサーチ】」


 アイムが魔力を練り、森の魔力の流れを探る。


「……あっちの方角にダンジョンコアの魔力反応がある。壊せば異常は止まるはずだ」

「よし、ならコアを目指すぞ。君たちはついてくればいい」


 ユーサーたちは先頭に立ち、森の奥へと進む。


「これが【栄光の架け橋】の本気か……やっぱり実力は本物だ」

「同じ聖女の卵なのに……あの威力……やっぱりシオニーはすごいです……」


 圧倒された様子のジョシュとクリスに、ソーマは静かに頷く。


(ああ――わかってる。彼らと今の俺たちじゃ、まだ釣り合わない)


 それでも、彼らだけでセクト樹海に挑んでいたら、間違いなく――()()()()()が立っていた。


 この森には、それほどの()()がいる。

 そしてそれは、ソーマたち全員の未来を、確実に変えていく。

 性格はともかく実力はある奴らなんです。

 模擬戦でなくギフトありで戦ったらソーマはユーサーには絶対勝てませんし今後もおそらく勝てないでしょう。


※作者からのお願い


投稿のモチベーションとなりますので、この小説を読んで「続きが気になる」「面白い」と少しでも感じましたら、↓の☆☆☆☆☆から評価頂き作品への応援をよろしくお願い致します!


お手数だと思いますが、ブックマークや感想もいただけると本当に嬉しいです。


ご協力頂けたら本当にありがたい限りです。

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