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【第五章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第三章:虫の知らせ? いいえ、抗うべきフラグです

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32:虫の進軍、崩れゆく旅路のフラグ

 野営を終えた朝。

 陽が頭上へと差しかかる頃、ソーマたちの馬車は最初の中継地点――ビルト町の門前に辿り着いた。

 道中、何度かゴブリンに遭遇したものの、いずれも小規模なものだった。

 アストレイにとっては、もはや危険とも言えないレベルの敵。


「ふぁぁ……やっと着いたか。意外と舗装されてたな、この辺の道」


 ジョッシュがあくびを噛み殺しながら、のんびりと呟く。


「この辺は交易路ですからね。王都からの距離も近いし、整備もされています」


 クリスが地図を折りたたみながら応じる。

 表情は落ち着いているが、その眼差しは常に周囲を警戒していた。

 ソーマは馬車から身を乗り出し、町の門を見上げる。

 そこには石造りの塀と、それを見張る衛兵たちの姿。


(思ったより……しっかりしてるな)


 小規模な町とはいえ、その造りは堅牢だった。

 出入りも厳重に管理されており、旅人や商人の安全が重視されているのが分かる。


 ビルト町――旅人たちにとっての緩衝地。

 次の目的地へ向かうための、一時の安息の場所。

 入門手続きの後、馬車を預けて、ソーマたちは小さな宿にチェックインした。

 町で最低限の補給を終え、その日は早めに体を休めることにする。


 ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 そして翌朝。

 再び馬車に揺られながら、次の目的地ファルケ町へと旅を再開した一行。

 穏やかな空気が漂っていたが、それは嵐の前の静けさに過ぎなかった。


 昼を過ぎた頃。

 乾いた風が森を揺らし、周囲の空気がわずかにざわつく。


「……っ、来たな。魔物だ」


 ソーマが身を乗り出し、前方の茂みを見据える。

 その陰から飛び出してきたのは、小型の獣型魔物――牙を剥いた数体の個体。


「増援に警戒しつつ迎撃するぞ」


 素早く剣を引き抜くソーマ。

 その目は冷静に魔物たちの動きを捉えていた。


「問題ない……この程度なら」


 その言葉通り、戦いは一瞬で終わった。

 ソーマの剣が一閃。

 ジョッシュの放つ魔球が正確に魔物の急所を貫き、すべての敵が沈黙する


「ふぅ。いい運動になったな」


 ジョッシュが軽く汗を拭う。


「兄さん、魔力の無駄遣いには気をつけて。先はまだ長いんだから」


 クリスが眉をひそめて注意するも、どこかピリついた雰囲気は拭えなかった。

 その違和感の正体は、すぐに明らかになる。

 午後も半ばを過ぎた頃――突如、異変が起こった。


「……! 前方、誰かいます!」


 馬車の上から叫ぶクリス。

 視線の先、林道の奥からボロボロの姿で数人の男たちが駆けてくる。


「た、助けてくれぇええええ!!」


 声を上げる男たちは盗賊風の装いだったが、その顔は恐怖で引きつっていた。

 戦う意思など微塵も感じられない。


「なにあれ……後ろ、追われています!」


 クリスが震えた声で指差す。


 ――それは、黒い塊だった。

 カチカチと不気味な音を立てながら、巨大なアリのような魔物たちが地を這い迫ってくる。


「……ジャイアントアント、か」


 ジョッシュが顔をしかめる。

 ジャイアントアント――群れで現れることが多く、大きさは50センチ程度。

 鋭い顎と硬い外殻を持ち、まとまって襲ってくる厄介な魔物だ。


 しかし、今回の個体は――違う。


「デカくねぇか、あれ……?」


 通常の倍近い。

 遠目でもそれが分かる。


 しかも――()()()()()


「ジャイアントアントが……空、飛んでる……だと……!?」


 空中を滑るように飛ぶ二体の個体。

 そして後方では、別の個体が口から白い糸を吐き出していた。


「……今助ける!」


 ソーマが剣を抜き、ジョッシュが魔球を構えた瞬間――

 飛行型のアリが盗賊の背に飛びかかり、鋭く尖った針でその背を突き刺す。


「やめろッ!!」


 ジョッシュの魔球が飛ぶが、飛行型は軽やかにかわす。

 その隙に、糸を吐き出すアリが地面を這うように滑り出て、盗賊の足元を縛り上げた。

 逃げ場を奪われた最後の一人が倒され――喰われた。


 血の匂い、肉の裂ける音、鉄の味が、風に乗って広がる。


「くそっ……ソーマ、どうする!? これ、盗賊食って満足して帰る感じじゃねぇぞ!」

「……わかってる。これはただのジャイアントアントじゃない。何か、おかしい」


 ソーマの目が細められる。


 ――死の気配が、濃すぎる。


 これも虫型魔物の異常発生の影響なのか。


「準備するぞ。迎撃体制に入る」


 ソーマの号令に、仲間たちは即座に動いた。

 ジョッシュはバットを構え、クリスは杖を握り魔力を集中させる。

 アラダとゼオル夫妻は馬車で後方へ退避。


「正面から来るのは二体……飛行型が左。糸吐きが後方から回り込んでくる!」

「囲まれる前に、こちらから布陣して潰す!」

「アラダさんたちは下がってください。まずは、生き残ることを最優先に!」


 馬車の荷台がギシリと鳴る音。

 重く、乾いた風が吹く。


 ――地響き。


 アリ型魔物たちが、黒い奔流となって殺到してくる。


 次の瞬間――血と鋼の戦いが始まった。

 \アリだー!/


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