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【第五章完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
第二章:寄り道? いいえ、大事なフラグです

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17:野球というギフトに、覚悟のフラグが灯る

 朝の陽射しが高く昇り、街の通りが徐々に活気づいてくる頃――

 ソーマたちは、冒険者ギルドに隣接する訓練所へと足を運んでいた。


「うおっ、やっぱ訓練所ってテンション上がるなぁ……!」


 ジョッシュが目を輝かせて声を上げる。

 訓練場には、剣を振る者、魔法の練習に集中する者、素手で型を繰り返す者……多種多様な冒険者たちが汗を流していた。

 木製のダミーや標的が所狭しと並ぶ中、若者たちの気合いの声が飛び交う。

 その光景にジョッシュの胸が自然と熱を帯び、気が引き締まる。


「今日はジョッシュの特訓だよ。ギフト【野球】の実戦強化――いよいよ本格スタートってところかな」


 ソーマが少し得意げに言うと、ジョッシュは首をかきながら照れ笑いを浮かべた。


「でもさ……正直ちょっと不安なんだよな。野球って本当にこれからの実戦で通用するのかって?」

「それを()()()()()のが俺たちの役目だろ」


 ソーマは軽く笑いながら親指を立てる。

 その自信に満ちた態度が、ジョッシュの胸に少しずつ勇気を灯す。


「――よし、じゃあまずは()()()()()()を固定するところから始めようか」

「魔球の……大きさ?」

「今までジョッシュの魔球って、その時々でサイズがバラバラだったろ?無意識のまま、魔力を球にするだけで投げてたって感じ」

「確かに……でかくなったり、小さくなったり……よく考えたら、完全に行き当たりばったりだったな」

「だから今日からは、()()を作る。感覚じゃなくて、数値とイメージで固定していく」


 そう言うと、ソーマは革のポーチから、小さな球体を取り出した。


「おっ……これは……!」

「革の端材と詰め物で作ってみた。ほら、これが()()()()()のサイズ。直径約7.3センチだ」


 それは手のひらにすっぽり収まるサイズで、縫い目もそれらしく再現されている。

 ジョッシュは目を見開き、まじまじと見つめた。


「これが……オレの()()ってことか」

「そうだ。魔球の大きさも、このボールのサイズに固定してみよう。まずは形とサイズを意識して、魔力で再現してみて。その内安定してボールを作れるようになれば、戦いでも精密なコントロールが可能になる」

「……やってみる!」


 ジョッシュは気合いを入れて両手を前に突き出す。

 掌に魔力を集中し、手にした革球の感触を思い出すように意識を研ぎ澄ます。


 最初はぐらついた。

 魔力が球形を成さず、歪んで崩れてしまう。


「……くっ、ダメか……!」

「慌てるな。魔力を押し込むんじゃなくて、()()()()イメージ。指の形、ボールの重さ、手の中の感覚を思い出して」

「……包む……なるほど……」


 深く息を吸い、再び魔力を手のひらに集中させる。

 何度か試行錯誤を繰り返した後――


「……できた!」


 空中に浮かぶ、淡く光る美しい球体。

 それはまさに、野球ボールそのものだった。

 それはただの魔法とは異なる、確かな()()()()()が宿った球だった。


「すごい完璧です!」


 隣で見ていたクリスが目を輝かせて拍手を送る。


「ここまで正確に再現できるとはな……ジョッシュ、やるじゃん」

「へへっ……なんか、魔力が手に馴染んでくる感覚がある」

「よし、じゃあ次は()()()だ」

「へ、へんかきゅう?」

「戦闘で使うなら、ストレートだけじゃ限界があるからな。まずは()()()を教えるよ」


 ソーマは自分の手を使って、カーブの握り方をゆっくりと実演する。


「縫い目をこう握って、指を引っかけて……リリースの瞬間に手首を返す。重要なのは、回転と角度だ」

「お、おう……言ってることは分かるけど……感覚が追いつかねぇ!」

「最初は感覚を掴むための練習だよ。100球でも200球でも投げよう」


 ジョッシュは言われた通り、ボールを投げる。

 だが――


「すっぽ抜けた!」

「今のは手首が返りすぎ。もっと自然に、縦にひねる感じ」

「ちょっと斜めに投げてみるといいかも。革の縫い目に指をひっかける感じで……」


 クリスも横からアドバイスを入れる。


「もう一球!」


 ジョッシュは汗だくになりながらも、ひたすら投げ続けた。

 全く変化しなかったり、明後日の方向に飛んだり、時には地面に叩きつけてしまう。

 それでも、何十球、何百球と投げ込むたびに、確実に軌道が変化し始めた。


(これが、ギフト【野球】……ただの球じゃない。()()()()()()で、球が応えてくれる……!)


 ――ギフト【野球】。

 それは、ただ球を投げるだけの能力ではない。

 制御、感覚、意図を研ぎ澄ませ投球に想いを込める。

 それこそが、ジョッシュにしかできない戦い方。


 そして――ついに……


「……っしゃあああ!! カーブした!今の、絶対曲がったよな!?」

「見事に曲がった!しかも、結構キレてた!」

「やりましたね、兄さん!」


 ソーマとクリスが声を揃えて褒める。

 ジョッシュはゼェゼェと息を切らしながら、それでも満足げに笑っていた。


「まだまだ不安定だけど、方向性は見えたな。これを戦闘に応用すれば、敵の意表を突ける武器になる」


 ソーマの声にも自然と熱がこもる。


「すげぇ……オレ、こんなに必死に何か投げたの、初めてかもしれねぇ」


 ジョッシュは汗をぬぐいながら、それでも誇らしげに笑った。


「……オレ、こんなに真剣に何かに取り組んだの、初めてかもしれない」


 額の汗をぬぐいながら、ジョッシュはボソリとつぶやく。


「ギフトって、ただ与えられるものじゃなくて……一緒に育てていくもんなんだな。なんか、今はそれが少しだけ分かる気がする」


 ジョッシュの魔力の流れが、静かに落ち着いていた。

【野球】というギフトが、ジョッシュの中でようやく一つの技として形を成し始めた瞬間だった。


「とはいえ、球を投げるだけじゃ戦闘にはまだ心許ない。そろそろ()()も考えなきゃな」

「武器? 野球って武器も使うものなのか?」


 ソーマはニヤリと笑って言った。


「その通り。野球ってのはボールを投げるだけじゃないって事さ。早速武器屋に行って探してみようぜ」

「おお、それめっちゃワクワクするな!オレのための武器……!」

「私も楽しみです。兄さんに似合う武器、きっと見つかりますよ」


 三人の顔に笑みが浮かぶ。

 訓練所を後にしながら、まだ見ぬ武器に思いを馳せる彼ら。

 その背中は、確かな未来に向かっていた。


 ギフトは――ただの能力ではない。

 信じ、鍛え、共に歩むことで、それは武器となりやがてそれは、世界をも変える力となるだろう。


 ソーマは空を見上げながら、確信するように微笑んだ。

 作者は野球を見るのが好きなだけで授業以外でやった事はありません。

 変化球の投げ方もそれらしいのを探して書いてるだけです。


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