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【完結】すべてのフラグを壊してきた俺は、転生先で未来を紡ぐ  作者: ドラドラ
最終章:大団円?いいえ、未来へのフラグです

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152/153

152:フラグの先へ

 ――静寂が、訪れた。


 崩れ落ちた終焉の城は、もう形を保ってはいなかった。

 黒炎の残滓が空へと溶け、赤く焦げた大地に風が吹く。

 それは、まるで長い悪夢の終わりを告げるようだった。


 ソーマは竜機剣(ドラグニル)の残骸を握り締めていた。

 指先は血で赤く染まり、呼吸も浅い。

 だが、胸の奥には確かに終わったという実感があった。

 長く続いた闘争、幾つもの喪失、幾つもの誓い。

 それらがようやく――報われたのだと。


「……終わった、のか」


 ケンが呟く。

 誰も答えない。ただ、静かに、全員が空を見上げていた。


 空は晴れ、雲の切れ間から覗く青。

 その青が、あまりにも澄みきっていて――残酷なほどに美しかった。


 だが、その青の下にあったのは、かつて敵と呼んだ者の亡骸。

 ヴェリグラトスは完全に崩壊し、中心には金と黒の粒子だけが、ゆっくりと空へ還っていった。


「……魔王ですら、ただ利用されただけか」


 ケンの低い声が風に溶けた。

 その瞳には、怒りよりも悲しみが宿っていた。


「彼にも、意志があった。……けれど、抗えなかった」

「救いの手を伸ばす暇もなかった……」


 アルマが唇を噛み、クリスが俯く。

 二人の聖女が光を宿した瞳で崩れた空を見上げる姿は、どこか祈りのようだった。


「救えたはずなのに……」

「……ううん、救えなかったのは私たちじゃない。あの人の存在を……誰も見ていなかっただけ」


 クリスの静かな言葉に、皆の胸が締めつけられた。

 風が吹き抜け、灰の舞う空に金の粒子が溶けていく。

 それは、まるで魔王がようやく自由になれたかのようだった。


 しかし――その穏やかさは長くは続かなかった。


 ――世界が、再び震えた。


「……な、なんだ……?」

「まさか、まだ……」


 地平の先で、空間が裂けた。

 赤黒い閃光が走り、灼けた大地をえぐる。

 空に亀裂が走り、その向こうからそれが降りてくる。


 三つの影――デスヴェル、ヴェリディス、ヴェリク。


 魔王を操り、そして歪めた者たち。

 その姿は、怒りと憎悪で歪んでいた。


「よくも……よくも、我らの計画を崩してくれたな」


 デスヴェルの声は、地鳴りのように低く響いた。

 周囲の空間が震え、灰の大地が逆巻くように浮かび上がる。


「あなたたちなんて、世界の余白に過ぎないのに……」

「……殺してやる」


 ヴェリディスとヴェリクの声が重なる。

 その憎悪が、空を黒く塗りつぶした。

 神の魔力――

 それは理をねじ曲げる破壊そのもの。


「くっ……! 防御を――!」


 アルマが叫ぶ。

 だが、指先は震えて、魔力はもはや霧のように散っていく。

 ヴェリグラトスとの戦いで、全員が限界を超えていた。


「動け……! 頼む、まだ……!」


 ソーマが拳を握りしめる。

 ケンが立ち上がろうとするが、足は言うことをきかない。


 誰も、戦えなかった。

 それでも、彼らは諦めなかった。


 デスヴェルの闇が迫る――

 その瞬間、世界が震えた。


「――何をしている」


 澄んだ声が、空から降りた。

 それはまるで、世界の根源が囁くような響きだった。


 光が降り、闇が退く。

 風が止み、時間が止まる。


 ソーマは息を呑んだ。


「……創造神、アストリア……?」


 白い衣が風に揺れる。

 金の髪が流れ、瞳は万象を映していた。

 その姿に、デスヴェルが本能的に一歩後ずさる。


「アストリア……! 何故ここに……!」

「何をしにきたの! 私達たちの邪魔をするつもり?」

「僕たちをこんな世界に閉じ込めておいて、まだ奪うつもりか!」


 創造神は静かに目を閉じ、ひとつ息を吐いた。


「――思い出せ。ここで何をしろと言ったか」


 その声が響いた瞬間、空間が共鳴する。

 三神の体が淡く光り、苦悶の表情を浮かべる。


「やめろ……我らはまだ……!」

「抵抗しても無駄だ」


 その声には一切の感情がなかった。

 それは理の声、創造そのものの命令。


 三神は怒りに任せ、合体魔法を放つ。

 闇、氷、雷――世界を滅ぼす三位の力が一つに集束し、災厄の光柱となって空を貫いた。


 ソーマたちは立ち尽くす。

 空が裂け、大地が崩壊する。

 世界そのものが悲鳴を上げていた。


 だが、アストリアは静かに両手を合わせる。


「――還れ」


 その一言。

 ただ、それだけだった。


 次の瞬間、世界から音が消えた。

 光が収束し、闇が霧のように消え、

 そして――三神の存在は、跡形もなく消滅した。


 まるで最初から、存在していなかったかのように。


 沈黙が、訪れた。

 風のない静寂の中、アストリアの衣がわずかに揺れる。


「……神々は、己の傲慢でこの世界を歪めた。それゆえ、我はこの瞬間をもって宣言する」


 その声は、天地を超えて響き渡る。


「二度と我も、他の神も――この世界に干渉せぬ」


 アストリアは静かに目を閉じた。


「その代償として、すべてのギフトを消去する。神々の加護も、奇跡も――もう存在しない」


 空から、淡い光が降り注ぐ。

 人々の体に宿っていた力、ひとつずつ消えていく。

 アルマとクリスの聖なる光も、ゆっくりと消えていった。


 アルマが驚愕の表情を浮かべる。


「そ、そんな……では、人々はどうやって生きていけば……」

「ただし、魔力は残す。努力し、願い、積み上げる者だけが――未来を掴むがいい」


 静寂が落ちた。

 その宣告は厳しくも、公平だった。


 ゼルガンが拳を握りしめる。


「……努力する者だけが未来を掴む、か。悪くない」


 ケンが頷き、微笑んだ。


「神の加護より、自分の手を信じる方が性に合ってる」


 アルマとクリスは互いに頷き合う。

 不安の中に、確かな決意が灯っていた。


「……わかりました、アストリア様」

「私たちは、この世界を――自分たちの手で守ります」


 アストリアは穏やかに微笑んだ。


「それでいい。お前たちは、己の物語を選び取った。ならば――もう神々は不要だ」


 その言葉とともに、アストリアの姿が光に包まれていく。

 ソーマが思わず叫んだ。


「アストリア!」

「……ソーマ。君のフラグは、すべて果たされた。だから、もう迷うな。君は――君自身の物語を進むのだ」


 そう言い残し、創造神アストリアは光の粒となって消えた。


 風が吹く。

 空が青く、広がっていく。


 誰もが、その静けさの中で立ち尽くした。

 神のいない世界――それは、恐ろしくも自由な世界。


 だが、誰も悲しんではいなかった。

 ジョッシュが空を見上げ、拳を突き上げる。


「よっしゃ……これからが本当の始まりだ!」


 クリスが笑い、エルーナが涙を拭う。

 ケンはソーマの肩を叩いた。


「お前がいなきゃ、世界は終わってた。胸を張れ」

「……ありがとう、父さん」


 ソーマは折れた竜機剣(ドラグニル)を見つめ、穏やかに微笑んだ。


「……ここからが、本当のゼロだな」


 風が頬を撫で、空の果てで光が瞬いた。


 こうして――神々の物語は終わり、人の物語が、静かに幕を開けた。

 人が神に勝てる訳ないだろ!

 神には神をぶつけんだよ!

 次回最終話です!


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